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言わなくてもわかってほしい男に女は……【NEO花嫁の結婚式奮闘記#3】

言わなくてもわかってほしい男と言ってほしい女。思えばプロポーズ以前の告白のときもそうだった。この男女の考え方の違い、どう受け止めればいいものか。理想とする結婚式の叶え方を模索する連載「NEO花嫁の結婚式奮闘記」#3をお届けします。

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私には「ちゃんと言ってほしい」願望がある。この願望は多くの女性が持っていて、しばしば男女間の溝となって表面化するものだ。

■言ってほしい女

たとえば、プロポーズ。我が家では手紙に「結婚してください」と書いてあった―――のだが、私はすぐには頷かなかった。

言葉で直接プロポーズされるシーンを夢見ていたため、「ちゃんと言ってみて」と追加オーダーし、口頭で言われて初めて頷いた。断固として妥協しない。

思えば、同様のことが付き合う直前のデートでも起きていた。忘れもしない春の東京ドーム。

初回のデートで彼が野球好きと知り、野球にまったく興味はなかったが「私も一度野球観戦してみたい!」と伝えて実現した2回目のデートだった。

「チーズケーキが好き」と聞いていたので、前夜にせっせとチーズケーキを作って持っていった。大好きな野球に大好きなチーズケーキ、そこに私がいればうっかり私のことも「大好き」と錯覚するかもしれない、という淡い期待を抱きながら渡すと、彼は心底驚いた顔をした。

ぎこちなく「ありがとう」と言ってから一生懸命食べている姿を見て、不器用で誠実な人だなあ、と思った。

そんな不器用な彼は、告白するときも不器用だった。私は当日1日かけて告白のお膳立てをし、万全の環境を整えた。

手作りのお菓子を渡し、好きでもないお酒を飲んでほろ酔いになり、手をつなぎ、にこにこし、デートの最後には観覧車に乗り込んだ。王道すぎて逆にレアなシチュエーションである。

観覧車内でも私はお膳立てをし続けたが、彼はなかなか言わない。言いたそうにしているが、言わない。頂上も過ぎ、着々と地上のスタッフに近づいている。

(もしかして言えないまま終わるのでは……)

焦った私は急きょ沈黙を作り、不自然な沈黙からの「どうしたの?」というキラーパスを繰り出した。

ゴールポストはがら空き、もはやキーパーすら不在だ。

(シュート! シュートするんだ! がんばれ!)

心の中でエールを送る。

そして、彼は意を決したように口を開き、こう言った。

「俺が付き合ってって言ったら、どうする?」

私は3回瞬きをして、こう返した。

「……ちゃんと言ってみて」

■言わなくてもわかってほしい男

結果的に告白もプロポーズもきちんとしてもらったわけだが、人の欲とは恐ろしい。次は「なんで私にあの日あのときあの場所でプロポーズしたのか」知りたくなった。

世の男性のほとんどが面倒くさがるに違いないが、知りたいものは知りたい。一生懸命作った作品が金賞を取ったら、審査員のコメントを読みたくなるのと同じことだ。

しかし、彼は口下手なのでこうした質問をされると困るタイプである。

ある日家でくつろぎながら、目線を合わさずに「ねえ、なんで私にプロポーズしようと思ったの?」と聞いてみた。

応答がないのでおずおずと振り返ってみると、やはり困惑した顔でこちらを見つめている。質問の意図をはかりかねている様子だ。

「なんでって……周りも結婚し始めたし、寂しくなるし……」

斜め上の回答である。「同棲しているから」「結婚したそうだったから」などの理由は想定していたが、私と彼には一切関係がない理由だ。

驚きのあまり「そんな外因的な理由!?」と言ったら、「そんなこと言われても、なんて答えたらいいのかわからないよ」と落ち込んでしまった。「し、しまった……」と思うも時すでに遅し。

女は言葉で、男は行動で愛情表現すると聞いたことがある。とくに私は文字書きで、かつ恋愛脳なので「この人のどこがどうして好きなのか」を執拗に考え、日々言語化している。

しかし、彼はそれをいちいち考えていない。彼にとっては同じ空間で過ごしている事実そのものが愛情表現なのだ。言わなくてもわかってほしい、という思いもあるのだろう。

きっとプロポーズ自体がひとつの完成形であり、そこに理由づけをする意味がわからないのだろう。私は「自分が選ばれた特別感」を彼の言葉で味わいたいのだが、彼は「君にプロポーズしたんだから、特別に決まってるじゃないか」という気持ちなのだ。

そこで私は東京ドームでのデートを思い返し、女性がときめく100点満点の言葉を紡げない彼の愚直さを再認識した。そうだ、こういう不器用で誠実なところを好きになったんだった。「初心忘るべからず」である。

私は反省し謝りながら、次の議題に思いを巡らせていた。そろそろ式場を決めて、結婚式準備を始める時期だ。

人100倍結婚式に夢を抱く私は、おそらく平均以上の費用をかけるに違いない。

「これもうまいこと伝えないとなあ」と思うものの、どう歩み寄るべきか……悩む。

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萩原 かおり

三度の飯より執筆が好きなライター兼心理カウンセラー。大学にて心理学を専攻後、求人・化粧品・社史の制作を経てフリーランスに。美容・心理・恋愛を中心に幅広く執筆中。婚活パーティーで200人以上インタビューした経験を持つ。エステホ...

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