男性に「妊娠出産の現実」を知ってほしい理由
いつか父になるかもしれない男性、すでに父になっている男性……すべての男性に向けた連載「男性も知るべき妊娠出産の現実」がスタートします。自身の体には起きない妊娠・出産を知っておくことは、パートナーや周りの女性たちへ配慮したり、彼女たちへの想像力を持てたりと、おおいに役に立つはずです。
■男性も一緒に考えよう
最近は不妊症についての情報も増えて、「不妊症夫婦・カップルのうち40~50%には、男性も原因になっている」という話を耳にすることもあるかもしれません。
それでも、男性同士が妊娠や出産の話をすることはほとんどないように、男性にとって妊娠を自分ゴトとして考えるのは、なかなか難しいことかもしれません。
けれど、妊娠・出産は女性にとっての大切なライフイベントであることは間違いありませんが、当然のことながら男性も無関係ではありません。
女性も男性も、同じ人間である以上、基本的な体の構造や機能は同じです。その中で、唯一違う臓器が生殖器となります。
卵巣からは女性ホルモンが、精巣からは男性ホルモンが出ています。それらのホルモンが女性らしさ、男性らしさを形成しており、その作用は骨格などの形態的なことだけでなく、思考や感情にも影響を与えています。
したがって、男性が妊娠のことを考えるのは、そもそも男性であるということから難しいことかもしれません。
ただ、「不妊」という男女の問題を考える際には、より意識的に女性の妊娠や出産に対して知識や理解を深める意思を持つことが大切だと思います。
なぜなら、妊娠や出産には、赤ちゃんが無事に生まれてくるまでの長い期間、楽しみだけではなく、いろいろな不安が伴うもので、女性にとって夫やパートナーのサポートが、心身共に欠かせないものだからです。
■不妊治療は男性にもわかりやすくあるべき
一方、女性にとっても、妊娠は意外にわかりにくい現象かもしれません。
毎月の生理による出血によって、子宮や卵巣が機能していることはわかりますが、どちらも体内の臓器なので、どのように働いているかは見ることができません。
特に卵巣は「silent organ(沈黙の臓器)」ともいわれ、体の深いところにあるため、例えば腫瘍ができても、相当大きくなるまで気がつきにくい臓器のひとつです。
基礎体温によって排卵日を意識していても、実際に卵子を見ているわけではないので、本当に排卵しているのかどうか、不安をお持ちの方もいらっしゃいます。
現代の医療では超音波によって、子宮や卵巣を可視化することができ、また排卵についても、いつ排卵するのかまで判断することができます。
そういった医療的なサポートは、画像として見える化される点で、女性にとって有用であるだけでなく、夫やパートナーがより深く理解するのを助けるでしょう。
不妊治療は、主に女性が病院やクリニックを受診しながら進められていきます。
男性がそれを心から理解するのは大切なことですが、そのためにも、不妊治療が男性にとってもわかりやすいものであることも、医療側としては心しておくべきことだと考えます。
これから約10回に分けて、男性不妊のことにも触れながら、妊娠・出産・不妊治療全般について、男性にもできるだけわかりやすい目線で連載をお届けします。
■連載予定テーマ
・不妊治療の今
・人工授精、体外受精の違い
・男性不妊を知っていますか
・妊婦さんの体〜妊娠初期とはどんな状態
・妊婦さんの体〜妊娠中期とはどんな状態
・妊婦さんの体〜妊娠後期とはどんな状態
・妊娠中の夫婦生活、パートナーシップ
・知っておきたい流産のこと
・出産のすべて
・産後の女性の体と心
※内容は変わることがあります。
画像/Shutterstock
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