オーガニック子宮生活

オーガニック子宮生活

ここ数回、女性ホルモン・男性ホルモンについてのよくある誤解や、酵素を口から飲んで吸収されるかということについてバシバシ斬ったらえらく反響をいただき、まるで「トンデモ斬りコーナー」のようになっている「か…


ここ数回、女性ホルモン・男性ホルモンについてのよくある誤解や、酵素を口から飲んで吸収されるかということについてバシバシ斬ったらえらく反響をいただき、まるで「トンデモ斬りコーナー」のようになっている「からだ問題担当大臣」コラムですが、健康や体にまつわることは幅広く取り上げていきたいと思います。

現代の大量生産、機械化された社会、化学物質などへの漠然とした恐れやマイナスイメージを抱いている人たちの中には、自然に回帰したい、「ていねいに」生きたいと考えている人が多いようです。みなさんの中でも、口にするもの、肌に触れるものは、「オーガニック」「自然派」「植物性」って書いてあるとなんとなくそっちを選びたくなるという人は多いのではないでしょうか。製造者によれば100%オーガニックの材料だけでシャンプーや日焼け止めを作るのは無理らしく、ブランドによっては「100%オーガニック」を謳っていても化学物質が山盛り入っているものも数多く出回っています。「信じて使っていたのに騙された!」という人もいると思いますが、言われるまで気づかなかったのならいいじゃんねってことにしてください。

さて、産婦人科医の私が考える女性の「オーガニック」ライフの象徴と言えば、布ナプキンです。みなさんの中にも「使ってみようかな」と思ったことのある方がいらっしゃるのではないでしょうか。通常「オーガニック」コットンで出来たナプキンで、ゴミが減ってエコだったり市販のナプキンかぶれに悩んでいた人がかぶれなくなったり、利点もあります。しかし、布ナプキン「信者」の中にはありもしない効能を喧伝し、市販のナプキンを害悪のように言い立てる人がいます。

曰く、
・市販のナプキンは石油から作られた高分子ポリマーで出来ており、皮膚から吸収されて有害である
・その高分子ポリマーが子宮内膜症や子宮筋腫などの婦人科疾患の原因となる
・高分子ポリマーのナプキンが開発されてから婦人病が増えた
・布ナプキンは体に良く、つけていると子宮筋腫の発育が止まったり、生理痛が軽くなったりする
・という訳で布ナプキンは地球を救う
とのことです。

そもそも高分子ポリマーのようなその名の通り粒の大きなものは、皮膚から吸収されたりしません。(これも前回の酵素ジュース同様、体の基本を知らない人にしか通用しない嘘ですね)ですから当然子宮内膜症や子宮筋腫の原因にもなりません。生理用ナプキンが初めて発売されたのは昭和36年ですが、その頃から女性が生涯に産む子供の数が少なくなり、妊娠・授乳中に排卵が止まっている期間が少なくなって生理の回数が増えたことが婦人科疾患増加の一因なわけで、生理用ナプキンは関係ないのです。二つの事柄が同時に起こると、まるで因果関係があるかのように印象操作されることがありますが、騙されないようにしたいものです。

生理痛の原因は、子宮内膜(赤ちゃんが宿るのを待ち受けていたクッションのような組織)が剥がれ落ちる時にプロスタグランディンという痛みの物質が分泌されるからです。外側に当てるのがコットンだろうとポリマーだろうと関係ありません。軽くなったと言う人がいるのは「プラセボ効果」です。
ちなみに、コットンの製造法がオーガニックの条件を満たしていても、一度化学洗剤で洗えばそれは「オーガニックコットン」でなくなってしまうので、ほんと「オーガニック」なのはイメージだけと言っていいでしょう。血液を介して家族などに感染する病気もたくさんありますから、衛生面は非常に気になるところです。

エコなどの観点からは優れている部分もある布ナプキンですが、私の業界では「トンデモ」の代名詞のように言われていて、とても悲しい限りです。実際に薬事法に抵触するような宣伝をしている業者もあるので、健康に関わる嘘はちゃんと規制して欲しいものです。ほんま、医療資格者が言うと大変なことになるのに、素人は言いたい放題っておかしいですよ……(愚痴ですが)

1万円のワインと100万円のワインの違いが分かる人がどれだけいるのかというのと同じことで、オーガニックの真価が分かる人がどれだけいるのか分かりません。騙されている方が幸せと思う人もいるでしょう。しかし、真面目にオーガニック製品を作っている人のためにも「トンデモ」は取り締まって欲しいですね。

この記事のライター

産婦人科女医・性科学者。現役産婦人科医として、都内の病院で診療に従事すると同時に、セックスや女性の性、妊娠などに付いて女性の立場からの積極的な啓蒙活動を行っている。

関連するキーワード


健康 子宮 疑似科学

関連する投稿


新型出生前診断とは? メリットや問題点、他の診断との違いを知ろう

新型出生前診断とは? メリットや問題点、他の診断との違いを知ろう

新型出生前診断(NIPT)を通じてわかること、検査の方法、メリット、リスク、他の診断方法(羊水染色体検査や絨毛染色体検査など)との違いなどを山中智哉医師が解説します。


出生前診断と着床前診断の違いや問題点は?診断技術の進化から考える

出生前診断と着床前診断の違いや問題点は?診断技術の進化から考える

「出生前診断」と「着床前診断」の違いについて、ご存知の方は多いかもしれません。今回のコラムでは、着床前診断の以前から行われていた出生前診断の歴史を紐解いていきます。倫理的な問題が絡んでいるともいえる技術だからこそ、技術ができるまでの背景を十分に理解してほしいと思うのです。


恋愛をしても女性ホルモンは出ません。 宋美玄医師による「大人女子のための“カラダのキモチ”セミナー」

恋愛をしても女性ホルモンは出ません。 宋美玄医師による「大人女子のための“カラダのキモチ”セミナー」

好評連載中の宋美玄先生のメディア向けセミナーが、ドコモ・ヘルスケアの主催で開かれました。これまで連載でも取り上げた内容と重複する点もありますが、復習としてまとめてみました。


不眠の悩みを解決する新・救世主は「玄関」!?

不眠の悩みを解決する新・救世主は「玄関」!?

不眠の悩みを抱える人は少なくありません。そんな人のヒントになりそうな、玄関×睡眠をテーマにしたイベント「meet up event vol.8」(主催:HowScope)のレポートをご紹介します。


子宮頸がんワクチンの副作用って?【赤池智子連載 #6】

子宮頸がんワクチンの副作用って?【赤池智子連載 #6】

子宮頸がんワクチンを接種すると、痛みなどの症状が起きる、後遺症が残るなどの、恐怖を感じる報道がなされていました。でも、実際それらは子宮頸がんワクチン接種と関係しているの? 赤池智子医師が解説します。


最新の投稿


伊勢参りに行くなら、服装を「正装」にするのもおすすめ

伊勢参りに行くなら、服装を「正装」にするのもおすすめ

2016年に初めて伊勢参りをしてきました。服装は「正装」です。ジャケットに黒のワンピース、パンプスでお参りしたときの気持ちを振り返りつつ、鳥羽と合わせて巡った伊勢参りの旅レポ、そして、赤福の喫茶併設店舗で、夏季限定でいただける「赤福氷」の思い出もお届けします。


ボタニカルネイルの簡単なやり方【マニキュアでセルフネイル】

ボタニカルネイルの簡単なやり方【マニキュアでセルフネイル】

現在流行中の「ボタニカル柄」をネイルに落とし込んだボタニカルネイル。マニキュアを使って、トレンド感あふれるボタニカルネイルに仕上げるやり方やコツを、豊富な画像で詳しく紹介します。


「離婚後の姓」どうするか問題。弁護士に聞いてみた

「離婚後の姓」どうするか問題。弁護士に聞いてみた

離婚後に考えなくてはならないのは、姓をどうするかという問題。離婚後に元夫の姓を名乗り続けるか、子どもの姓はどうするか……。離婚後の姓を考えるにあたり、複雑に感じられる方も多いかもしれません。今回、離婚後の姓について、アディーレ法律事務所の弁護士に聞いてみました。


H&Mのノースリーブブラウスは超優秀インナー。4つのコーデで証明します

H&Mのノースリーブブラウスは超優秀インナー。4つのコーデで証明します

H&Mで1990円で買ったノースリーブブラウスは、何通りにも着回せる超優秀なインナーでした。新しいアイテムを招き入れるか悩んだときは、「3パターン以上のコーデが考えられるもの」を基準に選んでくださいね。


木村瞳さんがきれいのために夜していること

木村瞳さんがきれいのために夜していること

美容鍼灸サロンコスメティックミューズ代表/美容鍼灸師の木村瞳さん。きれいのために夜していることは何ですか?