少ない服でおしゃれに暮らすには、合わせやすいプレーンなシルエットの服は便利だし、トレンドに左右されないという強みもあります。でも、誰にでも似合う万能アイテムなんて残念ながら存在しません。
料理とファッションは似ている。少ないアイテムを自分らしく“調理”したい
食べ物同様、洋服にも「旬」があります。そう考えると、料理とファッションの類似性に気づきます。少ない素材や調味料だけでも美味しい料理を作れるように、少ない洋服でもおしゃれを楽しむことは可能です。少ない服でも自分らしいおしゃれに向き合う方法を探ります。
手持ちの洋服を減らし始めた同じ時期に、キッチン周りの環境も再構築しました。
サイズが合わない、スタイルが悪く見える、トレンド感が強すぎるなど、何らかの理由があり奥へ追いやられたままの洋服や靴、鞄が沈黙するクローゼット。
同じような状況は、キッチンでも起こっていたのです。
それは例えば、ひとり暮らしのキッチンにはおよそ必要ない大きなボウルやザル、気に入っていないために全然使っていない食器類、使いこなせないまま眠っている調味料など。
クローゼットやキッチンを占有する、使えないのになぜか保管し続けていたアイテムの数々。しばらく時間をかけて環境の整理をし直した今、ファッションと料理は似たところがあると感じています。
■料理とファッションは似ている
少量を作るのは非効率、コスパが悪い、外食の方がおトク、など度々議論されるひとり暮らしの自炊問題ですが、私は基本的に自炊賛成派です。
確かに、毎食少量しか消費できないひとり暮らしは、おトクな大量買いが不可能なため、大家族の食費に比べると一食あたりのコストが高くついたり、食材が余ってしまったりというデメリットがあります。
しかし、そのデメリットを補って余りあるのが、好きな食材を使ったバランスのいい食生活が可能になるという点。外食やテイクアウトだけで毎日バランスよく食べようとするのは、コストも時間もかかりすぎるので、あまり現実的ではありません。
手間がかかる、面倒、でもコツさえつかめば楽しいし、体にもいい影響がある。そういった面で自炊とファッションは似ていると感じます。
ファッションの場合は体の栄養ではなく、心の養分といったほうが近いですが、ただ生きるために食べる食事と楽しみながら食べるそれに大きな違いがあるように、体を覆う道具としてはもちろん、装うこと自体を楽めるのもファッションの醍醐味でしょう。
■料理をシンプルに楽しむコツ
手間がかかり面倒なイメージの強いひとり人暮らしの料理も、調理手順や使う食材、調味料をシンプルにするだけでぐっと簡単になります。
現在私が使っているのは塩胡椒や醤油、味噌、酒や油類といった基本的な調味料のみ。一見便利に感じる合わせ調味料やかけるだけ、つけるだけのたれやソース類は、意外と応用範囲が狭く、余りがちになるため、使うのはやめました。
また、今日のメニューを決めてから買い物をするのではなく、店で旬の安い食材を確認してから、または冷蔵庫の中身を使い切ることを優先したメニューを考えて足りない物を買い足す、というクセをつければ食材のロスも防げ経済的。
何より、また食材をダメにしてしまった……というあの罪悪感からも解放されます。
■食べ物同様、洋服にも旬がある
新商品のCMを見て新しい調味料を買ってみたけれど、1回使っただけでそのまま賞味期限切れを迎えてしまう。おしゃれなハーブを用意しても使い道がなく結局ダメにしてしまう。
冷蔵庫にはたくさんの素材がストックされているのに、それらをうまく調理する方法を考えることなくまたスーパーへ出かけて新しい食材をたくさん買う。
でも、一度に食べられる量は限られているから、残った料理や素材は冷凍庫で保存。そして、そのまま消費することなくまた新しいものを買い、いずれ冷凍庫のストックは廃棄することに……。
少々耳の痛い話ですが、似た経験がある方も多いのでは。健康的な食生活を楽しみたくてがんばっているのに、これでは逆にストレスが溜まってしまいます。
そして舞台をキッチンからクローゼットに移してみれば、やっていることはほぼ同じだったりして。
「食べる物と違って、洋服は腐ったりしないから」
なんて思いがちだけれど、意味は違えど洋服だって「腐る」ことは、経験上知っているはず。
一生モノと信じて買ったブランドバッグが実は極端なトレンドアイテムで一生使えなかった、なんてことは珍しくもないし、生地もそれなりに傷むし、悲しいことに体型だってずっと同じではありません。
冷凍庫に置き去りにされた食材も、クローゼットの奥に眠るだけの洋服も、やがて「食べ頃」は過ぎるのです。
■ファッションも料理同様、「シンプル調理」でいこう
洋服にも旬がある。ならばやっぱりたくさんのアイテムが必要、というわけでは必ずしもなく。
シンプルな調味料や少ない食材でも美味しい料理を作ることができるように、少ないアイテムでもおしゃれを楽しむことは可能です。
逆に言えば、たくさんの洋服を持っていさえすればおしゃれになれるわけでもないのです。
あちこちのショップで目移りしながら買い物するのは確かに楽しい時間。そして、トレンドや新しいブランドの情報に敏感であるという感性自体は決して悪いことではなく、むしろ誇ってもいい個性のひとつでしょう。
でも、せっかく選んだアイテムを存分に活用できなかった罪悪感、そして迫り来るクレジットカードの請求にため息をついた経験があるのなら、料理同様「今あるもので、どんなスタイルが作れるか」を考えて過ごすのは、自分らしいおしゃれを改めて考える極めていい方法。
少ない「素材」で一定期間やりくりしてみれば、自分の目指すスタイルや好きなジャンル、ファッションに対するスタンスが見えてくるかもしれません。