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独立するまで 独立してから #1 佐藤千夏(45歳)

宮城県出身、今年で45歳の私。 28歳で結婚してから、嫁ぎ先の環境関連会社役員を務めていた。 離婚の話し合いをするために実家に戻っていたのは、結婚12年目のときだ。 離婚の原因は不妊。 女性であることを全て否定されたように気持ちになり、実家にこもりがちになっていた。

独立するまで 独立してから #1 佐藤千夏(45歳)

そんな中、まさかの東日本大震災で被災。
生きるために家族と必死に過ごした数ヶ月。
電気が点いた日のあの眩しさは一生忘れられないだろう。

そんなある日、やっと近くの大型スーパーが開店した。
母と食料品を買いにいく。

そこでは運命を受け入れた子どもたちが、文房具を眺めていた。

「お母さんが死んだ、僕は弟が……」
その言葉にハッとする。

この会話をきっかけに、こんなに小さな子どもたちが私より過酷な経験をしているのに、私は何をしていたのだろうと強く感じた。

私も運命を受け入れようと決心。
争うことなく結婚を卒業する。

それと同時に、生き方について考えるようになった。

私には生かされた命がある。
人に元気を与える仕事をしたい、そして年を重ねても女性にいつまでも輝いていてほしい、同世代の背中を押したいという思いから、エンディングノートを書き、フリーランスとなって上京、42歳からの再出発が始まる。

フリーランスの大変さは覚悟していたものの、現実は想像以上に過酷だった。

まずはマンションを借りなければ。
そう思っても、フリーランスでは貸してもらえない厳しい現実があった。

何度も不動産屋を回っては断られる。
でも諦めなかった。

宮城と東京を何度も往復し、ようやく東京での生活をスタートさせた。

人や社会の役に立つことを理念としている人は成功している。そして、社会貢献の次にお金が来る。

先義後利。

この考えをベースにビジネスをしたいと考え、企業の潜在的なWantsを発見するコンサルティング業を始めるも、なかなか上手くいかない。

理念だけは明確だったが、ビジネスとしては成り立たないつらさ。

ロジカルな部分がまだまだ足りない自分の甘さに愕然とした。

人との繋がりを求めて行動し続けていた。
そんななか、メディアを通して被災地に元気の素を贈ることができないか?と考え始めていたとき、お世話になっていた方からの紹介で、モデルの仕事をスタートさせることになった。
企業広告、CM、バラエティー番組にと仕事の幅を広げていった。

被災地にいる友人から「元気をもらった」というメッセージがたくさん届いた。

涙が出るほど嬉しかった。

そして、マーケティング・プランニング支援事業「ビジネス・ソリューション・パートナー」を設立。

ある日、何気なく見ていた『ワールドビジネスサテライト』。
コールセンターで、お客さまの代わりにオペレーターが試着するサービスを提供する通販アパレル会社が映っていた。
その他にも1センチ単位でのお洋服のお直しサービスや、永遠に返品・返金OKなど、顧客満足をとことん実現させ、急成長しているすごい会社があるのを知り衝撃を受けた。

2005年のThe Wall Street Journal Asia(ウォールストリートジャーナル・アジア版)の「アジアで最も注目すべき10人の女性」に選出された林恵子社長が設立した「DoCLASSE」だった。

いつか、この会社と何か仕事をしたいと強く願っていた。
それから数年後の昨年、ありがたいご縁に恵まれ、ブランドのアンバサダーを務めることになる。

企業コンサルのほか、昨年は故・今井雅之さん原作・脚本の舞台『THE WIND OF GOD』のPRを担当した。
辛い別れを乗り越え、命について深く考え始める機会になった。
上京して3年目を迎え、東日本大震災からもう5年が経とうとしている。

そんなタイミングで、今井さんの師匠でもある奈良橋陽子さんが監督を務める彼の原作脚本映画『手をつないで帰ろうよ〜シャングリラの向こうで〜』(今井さんの命日である5月28日に公開予定)のPRを担当することにもなった。

今井さんからは「生きる」ことの意味をたくさん教わった。

東日本大震災、今井さんの死……

生きているのではなく「生かされている」。
この命を大切に、感謝の気持ちを忘れずに、人の痛みに寄り添い、元気や勇気を与えられる存在でありたい。

一歩一歩、前進しながら。

佐藤千夏
宮城県出身、45才。企業企画支援事業「ビジネス・ソリューション・パートナー」を設立。40〜50代の女性を実年齢で輝かせるファッションブランドDoCLASSEアンバサダー 9人委員会第2期生としても活動中。
http://nine.doclasse.com/member/06.php

DRESS編集部

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