はあちゅうさん×木村直人さん対談・後編「“運命の美容師”と出会いたいなら冒険心を持ち続けて」
美容室でヘアスタイルを変えると気分が上がりますが、想像していた仕上がりとは違うものになると、ひどく落ち込むことも……。それゆえ、美容師さん選びには慎重になりますよね。
はあちゅうさん×木村直人さん対談・後編 「“運命の美容師”と出会いたいなら冒険心を持ち続けて」
著書に『半径5メートルの野望』などがある作家・ブロガーのはあちゅうさんと、著名人のヘアスタイルを数多く担当している美容師の木村直人さん(air&LOVEST SN Div.manager)に「ヘアスタイルで女の人生はどう変わるか」をテーマにした対談の後編をお届けします。
自信のないプロフェッショナルはダメ
木村直人さん(以下、き):はあちゅうさんの髪を切って、彼女が一番変わったことは「別に大丈夫じゃん」ってことだと思います。前髪が長いときにあった「私は絶対前髪が長くないと似合わないと思う」という意固地な部分が解消されて、やわらかくなったというか。評判もとても良いですしね。
はあちゅうさん(以下、は):守りの美容をしていました。もっと何かができて上に行けるかもしれないのに、ほどほどのところで止まっちゃうのが当時の私で。「これでもうブスと言われなさそうなんで、ここから動かさないでください!」みたいな。
でも、木村さんはそこから私を引っ張り出してくれた気がします。それは髪型だけでなく、もっと大きい世界に行っていいんだよとか、会社を辞めてもいいんだよとか。マインド面での入り口を開いてくれたように思います。
き:僕は美容師として、なんでそこまで前髪にこだわるのかなと思ったんですよね。
は:でも、変わることって怖いんですよ。
き:そう。でも、お客さまに「怖い」という気持ちを解き放ってもらうことが大事で。それを成し遂げるには、髪を切る側のオーラや実績、知名度も必要で、そういった部分は逆に勉強させられた部分です。だから、お互いに学んでいるのだと思います。
は:木村さんから自信のないプロフェッショナルはダメなんだと学びました。美容師さんって、お客さんに嫌われたくないから、相手がOKと思っている範囲内で髪型を変えようとするんですよね。でも、木村さんは自信があるからそれが私にも伝わり、この人だったら、私もついていって大丈夫って安心できるんですよ。
き:自分の中で革命が起きたんです。簡単に言うと、割り切っちゃったわけですね。僕と相性が合わなかったら来店する必要ないじゃん、他にも上手い美容師さんはたくさんいるし、と。
は:最終的にその方がお互い幸せですもんね。
は:髪型って結局のところは自己満足。だって、アフロヘアって一般的に見るとすごく外れている髪型じゃないですか。でも、本人がそれで幸せと思っているなら幸せなわけで。私は髪型で大事なことは「どれだけ自分が満足しているか」だと思っていて、その満足度が木村さんだとすごく高いんです。
き:今の時代だと、自己判断と外部評価がマッチしない人は髪型で損をしますよね。はあちゅうさんは2〜3年前と比べて、明らかにナチュラルになりました。世間的にナチュラルになっているわけではなく、自分自身がそのことに気づき、今のスタイリングを生み出したというのが正しいですね。
僕は意図的にカットベースを重くしているので、今のヘアスタイルで縦巻きにしようと思っても形になりません。それを「巻けなくて嫌だな」と考える人は、やはり自意識過剰な部分があったり、自己顕示欲が強かったりする傾向にあると思います。パワーをセーブしてあげるのも我々美容師の仕事です。
は:木村さんは引き算の美容を示してくださる方ですよね。私も木村さんの美容観に年々近づいている感覚があります。たとえば、キツい巻き髪はしなくなったり、落ち着いたカラーでキープしたり。無理をしない、心地良い美容だなと思います。
き:はあちゅうさんは髪質が素晴らしいんですよ。髪質の良い人には無理なヘアスタイルを提案したくなくて。コンプレックスを解消するためにカットするというのはわりとナンセンスだと思っています。
は:「運命の美容師」と出会うのは本当に大事なことですよね。私は運命の美容師さんと出会う方法は、大きく2つあると考えています。
1つは妥協しないで「この人だ!」と思う人に出会うまで、美容師さんを変えてみるくらいの冒険心を持つこと。私もかなりの冒険をしました。名古屋に住んでいたときさえ東京に通ってまで3年以上同じ美容師さんに切ってもらっていたのを、乗り換えて木村さんにいくというのは、人情として、いろいろ思うことはあったんです。それでもこの人がいい、何だかしっくりきたというのは、自分の中で大きく踏み出したことでした。
もう1つは、自分できちんと情報を取りにいくことですね。今はSNSで発信している美容師さんも多いです。美容師さんも人間だから相性があると思うんです。「こういう発信をしている美容師さんのところへ行くと間違いはない」みたいな自分の軸を持つと良いですよね。
ホットペッパービューティーを見るだけではダメで、自分の好きな髪型をしている友達に聞いてみたり、そのサロンのブログを読んでみたり。まずは一歩踏み出すこと、情報をきちんと取捨選択することで、良い出会いを見つけられると思います。
き:美容師の立場から、運命の美容師に出会う方法として、ものすごい爆弾発言をすると、その美容師が手がけた髪型だけを見て選ばないことですね。はあちゅうさんもおっしゃいましたが、今は美容師も情報発信する機会が増えています。思想や文章の言葉尻で好き嫌いが出てくると思うんですよ。そこでもう、下調べができている。
ネット上で「イェーイ!」とテンションが高い美容師さんもいますが、自分はそういうテンションの人に合うのか、自分に合うヘアスタイルを提案してくれるのかもジャッジできます。最終的に得られる髪型の満足度は、相手の好き嫌いによるところが大きいです。素直に「行きたいな」と思う美容師さんのところに行けばいい。
もう1つ、これも爆弾発言かもしれませんですが、「自分を好き過ぎないこと」ですね。自分のことがわりと好きな人は、立場が弱めな美容師さんを選ぶ傾向にあります。その姿はすごくワガママを言って憂さを晴らしているように見えますが、それでは美容師さんのパフォーマンスが最大限には出ません。自分を開放したい気持ちもわかりますが、ある程度構えてしまうような美容師を選び、一度ぐっと抑えてみたときに、新しいあなたが開けるかもしれません。
はあちゅうさん
ブロガー・作家。慶應義塾大学法学部政治学科卒。在学中にブログを使って、「クリスマスまでに彼氏をつくる」「世界一周をタダでする」などのプロジェクトを行い、女子大生カリスマブロガーと呼ばれる傍ら、レストラン、手帳、イベントをプロデュースするなど、幅広く活動。2009年電通入社後、中部支社勤務を経て、クリエーティブ局コピーライターに。2011年12月に転職し、トレンダーズで美容サービス、動画サービスに関わる。2014年9月からフリーで活動中。2015年4月から日テレ「スッキリ!!」火曜レギュラーコメンテーターに。
月額課金制個人マガジン「月刊はあちゅう」、オンラインサロン「ちゅうもえサロン」「ちゅうつねサロン」などを運営。著者に『自分の強みをつくる』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)『恋愛炎上主義。』(ポプラ社)『半径5メートルの野望』(講談社)など。雑誌、オンラインメディアなどでの連載多数。催眠術師資格を保有する。
ブログ:http://lineblog.me/ha_chu/
Twitter:@ha_chu
木村直人さん
air/ LOVEST SN.Div.Manager。ヘアカラーのスペシャリストとして数々の芸能有名人を顧客に持ち、かたやアレンジのアドバイザーとしても高い評価を得る。 雑誌やタレントのヘアメイクにも深く取り組んで幅広い仕事をこなす。 著書『air/LOVEST 木村直人のハラドキ☆ヘアスタイルBOOK』(三栄書房)はAmazonヘアケア部門ランキング第一位獲得。
ブログ:http://naotokimura.tokyo
Twitter:@air_kimura
Text=姫野ケイ
Photo=安井信介
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