現在の民法は、夫と妻の姓(氏)が異なる形での婚姻を認めていません。そして、結婚に際し、男性の姓を選んで変更する女性は全体の96%となっています。
「離婚後の姓」どうするか問題。弁護士に聞いてみた
離婚後に考えなくてはならないのは、姓をどうするかという問題。離婚後に元夫の姓を名乗り続けるか、子どもの姓はどうするか……。離婚後の姓を考えるにあたり、複雑に感じられる方も多いかもしれません。今回、離婚後の姓について、アディーレ法律事務所の弁護士に聞いてみました。
■離婚しても、夫の姓を名乗ることはできる?
離婚した場合、夫の姓を名乗っていた妻は、旧戸籍に戻ることになります。これによって、何も手続きをしなければ、原則として、「旧姓」に戻ることになります。
しかしながら、「ずっと夫の姓で暮らしてきたのでこのままの姓でいたい」という女性も少なくありません。その場合は、離婚後3カ月以内に役所に届出をすれば、そのままの姓でいることができます。
具体的には、戸籍法上の「離婚のときに称していた氏を称する旨の届」を役所に提出することになります。これを「婚氏続称制度」といいます。婚氏続称の届は、離婚の日から3カ月以内とされ、この期間は厳密に守らねばならないとされています。
ただ、3カ月を過ぎた場合でも方法がないわけではなく、別の手続きとなりますが、「氏の変更許可の申立て」(戸籍法107条1項)を家庭裁判所に対して行う方法があります。ただ、この「氏の変更」が認められるためには、「やむを得ない事由」が必要とされています。
「元夫の姓を名乗りたい」ということであれば、比較的認められやすいとされていますが100%確実ともいえません。
やはり、離婚するまでに「離婚後の姓」をどうするかは決めておき、離婚届と同時に「婚氏続称」の手続きをしておくのが無難でしょう。
■離婚後、子どもの姓はどうなる? 母親が引き取る場合、子供も姓を変更しなければならないの?
母親が子供を引き取った場合、母親の姓をどうするかという問題と、子供の姓をどうするかという問題はワンセットではありません。これは別々に考えることになります。
父母が離婚した場合、母親の姓は上記の通りですが、子どもの姓も当然変更、ということにはなりません。母親が親権者となり旧姓に戻った場合でも、そのままにしておけば子どもの姓は元夫の姓のままとなります。
このように、何も手続きをしなければ、母親が親権者として旧姓に戻った場合でも、親権者である母親と子どもの姓は異なることになります。
仮に、母親が婚氏続称の届け出をし、夫の姓を引き継いだ場合であっても、「婚姻中の氏」と「続称の手続をとった氏」は法律上、別の氏とされますので、呼び方は同じであってもその親と子の氏は異なることになります。
したがって、「読み方も氏も母親と同じ」にするには、新戸籍を作って、その戸籍に子どもを入れる手続きをすることになります。
■離婚後に一旦、夫の姓にした後、旧姓に戻すこともできる?
「子どもが学校を卒業するまでは夫の姓のままでいて卒業後に旧姓に戻る」など、一定期間経過後に旧姓に戻りたいという方もいらっしゃいます。この場合は、先ほどの、「氏の変更許可の申立て」を家庭裁判所に対して行うことになります。
この申立ては、「気まぐれに姓を変えたい」という理由では通りませんが、一般的には「婚氏続称をしたが、やはり旧姓に戻りたい」という場合には、認められやすいとされています。
家庭裁判所での手続きが時間も労力もかかることや、必ずしも認められるとは限らないこと、カードや銀行などの名義変更も大変であること等を踏まえると、できることなら、離婚後の姓は離婚時に決めてしまって、その姓を名乗り続けることが便利とはいえるでしょう。
■【まとめ】離婚後の姓
離婚後の姓については、子どもが学校でつらい思いをするのではないか、という心配や、各種の名義変更手続きが大変、といった思いから、そのままの姓を名乗ることを選ぶ方も少なくありません。姓をどうするか、については、可能な限り離婚前に決めておき、手続きを失念しないように注意してくださいね。
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