美しいランジェリーで人生が変わった
美しいランジェリーを初めて身に着けた瞬間、「これが私? 綺麗……」と驚いた。それはランジェリーアドバイザーの石川智恵さんが、専業主婦だった30代後半のときに離婚して、自信がないまま再び社会に出たときのことでした。フランス産の美しいランジェリーと出会い、元気をもらったのを機に、人生はいくらでもやり直せると気づいた話。
25歳で結婚。20代後半から専業主婦となり、35歳で夫と別居した。夫とはいろいろあって、ずっと別れたいと思っていたものの、気づけば35歳に――。
当時は年齢のことを考えて、とにかく焦っていた。このまま生活に不満を抱えて毎日を過ごし、このままどんどん歳をとっていくのか、と。今思えば30代なんて、まだまだやれることがたくさんあるんだから! そう当時の自分に言ってあげたいくらいだ。
夫とは離婚したものの、自分のすべてに自信をもてずにいた。気づけば7年間も専業主婦だったこと。社会人としてブランクがありすぎること。30代後半になっていたこと。正社員の職を探そうとしても「特技」がないこと……。
そんなとき、昔、大手町の商社で働いていたつながりから、友人の紹介で運よくアパレル関係の輸入商社に就職できたのだった。「これから自立するには仕事が必要だろう」。当時の社長は私にそう言ってくれた。
状況を知った上で採用してくださり、私を救ってくれた会社、社長……本当に感謝しかない。輸入ランジェリーの事業部に配属された(業界では最大手の会社である)。
■美しいランジェリーを身に着けて。7年ぶりに出会った綺麗な私
別居、就職、生活環境が大きく変わった。自分で部屋も借りた。実は初めてのひとり暮らしだった。あらゆることが一気に変わっていったため、当時の記憶があまりない。
私を採用してくれた社長や会社に何とか役に立ちたい、貢献したいとがむしゃらに働いた。また、そうすることで新しい自分に生まれ変わりたかったのだ。
当時私が扱っていたランジェリーは百貨店でも高級とされるジャンルになり、とても美しいランジェリーだった。そのぶん、ブラジャーは2万円近く、ショーツも1万円近くで高級品。
贅沢ができない当時の私は、一体誰が買うのだろう? と思っていた。確かに美しいランジェリーに興味はあったけれど、国産の安い黒やベージュの下着ばかり着用していた。
そんなある日、その会社のプロのフィッター(先輩)からフランスのランジェリーのフィッティング研修を受ける。「あなたにはこのサイズでこの形がきっと合うよ!」
正しいつけ方も教えてもらった。そのときの衝撃と感動は今でもはっきり覚えている。これが私の胸? 綺麗に寄っていて美しいバストライン、美しいレース、鏡に映った自分……。
■ブランクがあっても人生は軌道修正できる
専業主婦だった頃、夫と別れることばかり考えていた。視野が非常に狭くなっていた数年間だ。いざ別れてみると、私は特技のない35歳の女だった。そんな現実を突き付けられてつらかった。当時は食欲がなく、周囲から心配されるくらい痩せていた。母親からも老けちゃうからちゃんと食べなさいと、いつも心配されていたほど。胸は小さくしぼんでいたし、顔色も悪くやつれていた自分。
そんな私が鏡の前で美しく見えた。魔法にかけられたみたいに心が弾んだ。ずっと忘れていた綺麗になりたいと思う女ゴコロが再燃したようだった。まだ何も始まっていない。自分に自信がない。そう決めていたのは自分の心だ。すべては自分の考え方次第ではないか? 気持ちが軽やかになり、前を向けるようになった。ずっと忘れていたトキメキのようなものを感じていた。
私はこの仕事を通じて、女性を美しくするお手伝いができるかもしれない! 人生をいろいろな理由で諦めていたり、年齢と闘ったりしている女性たちに希望を与えたい。自信を持てない人生を送ってきた私が、これから輝く女性になっていけたら、その目標は実現できるはず。
人生は何度でもやり直せるし、未来は必ず自分次第で変えられる。悩めるこの世の女性たちに、そう伝えられるだろうと思った。私は絶対に幸せになるし、仕事でも絶対成功する。当時から今でもずっと変わらない想いだ。
そのとき初めて着用した運命のランジェリーはフランスで140年以上の歴史を持つ「Aubade」(オーバドゥ)というブランドのもの。今でも完璧に覚えている。サファリエロティックというコレクション。ストラップがサテンのリボンで飾られていて、大人の美しさの中にかわいらしさがミックスされたブラジャーだった。
(中編につづく)
※ この記事は2016年4月19日に公開されたものです。