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【弁護士に聞く】モラハラ夫と離婚したい! 離婚準備の進め方と注意点

「夫のモラハラが限界」。離婚を決意したとき、どのような手順で離婚に向けた準備を進めればよいのでしょうか。また、モラハラ夫と離婚の話し合いを進めるときの注意点は? 数々の離婚裁判を手がけてきた宮崎大輔弁護士に聞きました。

【弁護士に聞く】モラハラ夫と離婚したい! 離婚準備の進め方と注意点

「食事が口に合わないと不機嫌になり、『作り直せない?』と要求してくる」
「毎朝『そんな服着ていくの?』と服装や化粧にダメ出し」
「『仕事で疲れてるのにお前のせいでもっとストレスが溜まる』と毎日八つ当たりされる」

家庭内でそのような精神的暴力を繰り返す“モラハラ夫”。DV(ドメスティック・バイオレンス)とは異なり身体的な暴力はないものの、相手の心身にダメージを与えるという点では同じです。

モラハラ夫の仕打ちにもう耐えられない、離婚したい。そう思ったとき、どのように準備を進めればいいのでしょうか。これまでモラハラによる離婚訴訟を多く手がけてきた宮崎大輔弁護士のアドバイスを交えて紹介します。

▶️「モラハラ夫」の恐怖体験。モラハラにありがちな10の言動も紹介

※モラハラは男女問わず加害者になり得ますが、本記事では夫→妻へのモラハラを想定しています。

話を聞いた人

宮崎大輔弁護士
白石綜合法律事務所所属、東京弁護士会所属
http://顧問弁護士.com

■「離婚してもいいのかな?」と迷ったら

モラハラ夫との生活がつらいと感じたときは、第三者に悩みを吐き出すことで気持ちが少し楽になったり、相手の行いのひどさに改めて気づくことができます。とはいえ、家族や友人には相談しづらいこともあるでしょう。そんなときは女性のための相談窓口に頼るのもひとつの方法です。

悩みを聞いてほしい、アドバイスがほしい場合の相談窓口はいろいろあります。メジャーなものは各県にある「女性センター」、それから24時間全国どこからでも相談ができる「よりそいホットライン」です。DVやモラハラをはじめ、女性が抱える問題の相談に乗ってくれます。(宮崎大輔弁護士)

▶︎女性センター(外部サイト)
▶︎よりそいホットライン(外部サイト)

ただ、相談機関では話を聞いてもらうことはできるものの、離婚に関する具体的なサポートを受けることはできません。

「離婚したい」という強い意志がある場合は、ご自身で具体的な対処方法を理解して実践することが必要になります。追い詰められた精神状態の中で冷静な判断をするのは大変なので、可能なら家族や友人の協力を仰ぎ、心身の安全を確保した上で準備を進めていくのがいいと思います。(宮崎大輔弁護士)

■「モラハラ夫と離婚したい」と思ったらまずすべきこと

離婚の意思を固めたら、調停や裁判(詳細は後述)になる可能性を考慮し、まずはモラハラの証拠を記録することが大切です。

何より「モラハラの証拠を集める」こと。具体的には、まず日記をしっかりつけておくと良いでしょう。「こういうことを言われた」の羅列ではなく、日時・場所・時間、言われた内容も具体的に記録しておきましょう。(宮崎大輔弁護士)


モラハラ夫と長く時間を共にすると、次第に洗脳状態に陥り「私が悪いのかも」「私のせいで夫を怒らせてしまった」と思ってしまう女性は少なくありません。モラハラを明確に定義するのは難しいですが、夫の言動に「つらい」「悲しい」と感じることが多かったり、常に夫の顔色をうかがってびくびくしているのなら、それは健全な状態ではないといえます。

ご自身が苦痛に感じていることはすべて「モラハラ」と判断して差し支えありません。家族関係や家庭状況によって言葉の重みも変わるため、「これはモラハラ」「モラハラじゃない」と一概には言えないのです。自分の感じたまま判断してOKです。(宮崎大輔弁護士)


日記以外にも、暴言の録音データやLINEのスクリーンショット、医師の診断書などがあるとより強力な証拠になります。

モラハラを根拠づける録音や録画(録画は難しいと思いますが……)があるとなお良いでしょう。録音はスマホで構いません。メールやLINE画面のスクショ、SNSに書かれた悪口も証拠になります。モラハラで精神的なダメージを受けたという医師の診断書や通院記録があれば、それもすべて保管しておきましょう。(宮崎大輔弁護士)

■離婚までのステップ 〜調停編〜

話し合いを経て夫婦それぞれが離婚に合意し、離婚届に記入して提出する方法は「協議離婚」と呼ばれています。これが一番簡単な方法ですが、モラハラ夫の場合、そうはいかないケースが多いと宮崎弁護士は言います。

モラハラ夫は離婚に応じないことが多いんです。モラハラ的な言動は本人の主義主張や人生観に基づいていて、本人は言葉通り「モラル」だと思っている。「離婚したい」と思ってやっている人はほとんどいないと思います。「不出来を教育して、正しい道に導いてあげよう」「理想の奥さん像・母親像に近づけてあげよう」という考えに基づいたケースが多いですね。なので本人はなかなかモラハラを自覚せず、涙ながらに「直すから」と訴えることもあります。(宮崎大輔弁護士)


夫が離婚届にサインすることを拒む場合、裁判官や調停委員が介入する「離婚調停」に進むことになります。最寄りの家庭裁判所へ申し立てをして、決められた日時に裁判所へ出向き、夫婦と裁判官、調停委員(通常は男女1名ずつ)を交えて話し合いを行います。

「裁判所」と聞くと大げさに感じたりお金をたくさん取られそうと不安に感じたりする方も多いですが、調停の手続きはとても簡単です。所定の書式で裁判所に提出するだけでいいですし、お金もほとんどかかりません。(宮崎大輔弁護士)


裁判所のウェブサイトから書式をダウンロードし、相手方の最寄りの家庭裁判所または当事者が合意した家庭裁判所に提出します。必要な費用は、収入印紙1200円分のみ。

モラハラ夫と調停に向けた話し合いをするのはきつい、精神的に耐えられないという人は、代理人(弁護士)を間に立てて調停するという方法もあります。自分で調停に行かなくていいとか、相手と議論をしなくていいというメリットがあります。

費用を工面するのが難しい場合は、日本司法支援センター(法テラス)という支援サービスの窓口に相談するのがおすすめです。そもそも費用が安いですし、費用が用意できない場合は立て替えて分割にしてもらうこともできます。(宮崎大輔弁護士)

▶︎法テラス(外部サイト)

調停を経て夫が離婚に合意すれば、離婚が成立。そこでも拒否された場合は裁判に進むことになります。

■離婚までのステップ 〜離婚訴訟編〜

調停を拒否された場合、離婚訴訟を起こし自分の集めた証拠をもとに法廷で争うことになります。

注意したいのは、日本の法律の仕組み上、調停をしないと裁判に進めないこと。ただ、調停を申し出て夫が拒否した場合でも「一度調停を経た」ことになる、つまり訴訟を起こすことができるので、訴訟のために形式的に調停申し立てをする人も多いですよ。(宮崎大輔弁護士)


訴訟を起こすには、裁判所のウェブサイトから指定の書式をダウンロードして記入。自分の住所を管轄する家庭裁判所に提出します。

▶︎離婚訴訟事件の訴状(外部サイト)

訴状を送ってから最初の審理までは1カ月〜1カ月半程度。そこから月に一度くらいのペースで審理を進めていくことになります。途中で和解(妥協)を提案された場合、裁判の途中で離婚が成立することもあります。

夫のモラハラを立証するためには、前述した「モラハラの証拠」が何より大切になります。自分が望む条件で離婚を成立させるためにも、小さなことでも記録を残すようにしましょう。

■離婚にまつわるQ&A

モラハラ夫に慰謝料を請求することは可能?

モラハラ行為によって心身にダメージを受けた場合、もちろん相手に慰謝料を請求することができます。

心疾患の診断書がない場合や暴力がない場合も、慰謝料の請求は可能です。相場は30万〜300万と幅広いので、担当弁護士と相談しながら決めていくのが良いと思います。

ただ、日本では慰謝料相場が非常に低く抑えられており、診断書や証拠が少ない場合は望む金額に落ち着かないことも。低い場合は二桁万円、場合によってはゼロになることもあります。請求したい金額を高めに設定して、低めに落ち着くパターンが多いですね。

とはいえ、弁護士は請求金額から計算したパーセンテージで着手金をいただくため、あまりに高い金額に設定するのはおすすめしません。裁判にかける金額を考慮した上で設定するようにしましょう。(宮崎大輔弁護士)

弁護士に仲介を依頼する場合、費用はどれくらいかかる?

弁護士に相談する場合、気になるのは費用のこと。具体的な金額は弁護士によって異なりますが、調停から離婚訴訟まで入れると「着手金で60万円程度。成功報酬として同程度の額が追加され、総額100万円〜200万円程度になることが多い」そう。

弁護士にも報酬規定があり、相手(この場合は夫)への請求金額が300万円以下の場合は総額の8%……といったように金額が定められています。費用面のハードルを感じる方は、前述の通り、法テラスで費用を抑える選択をするのも手だと思います。ちなみに訴訟の実費はほとんどかからず、調停と訴訟を合わせても10万円以下には抑えられると思います。(宮崎大輔弁護士)

離婚する場合の親権や財産分与はどう決める?

訴訟を起こすとき、財産分与や養育費、親権について、訴状に自身の希望を記入します。どうするか決められない場合は弁護士と相談しながら進めることもできます。夫のモラハラが認定されると、親権は基本的に妻側がもらえます。面会交流の方法や頻度をどうするかなども調停や離婚裁判の中で決めていくことになります。

養育費は不払いが社会問題になっていますが、子どもが20歳になるまで請求できるので、しっかり給料の差し押さえ(※)をしたほうが良いでしょう。(宮崎大輔弁護士)


※毎月、相手方(債務者)に給料を支払っている会社等(この会社等を「第三債務者」という)から、不払いの養育費が債権者(この場合は妻)に支払われるようになる

モラハラ夫と離婚するにあたって注意すべきことは?

モラハラ夫との離婚を進めるのは大変なことです。穏便な話し合いができなかったり、自分の言い分を相手がまったく理解しようとしなかったり、泥沼化するケースも多いと宮崎弁護士は言います。

私の経験上、モラハラをする人は自分の否を認めないケースがとても多いです。自分の否を認めない代わりに、配偶者(妻)の落ち度を挙げて自分の行いを正当化する。妻側が証拠を集めて提出しても、夫側もそれに反論する証拠を出してきたり、「妻が先に暴言を吐いた」と嘘をついたりすることもあると思います。

また、第三者を巻き込み「妻がほかの男と楽しそうに遊んでた」など事実無根の話を出してくることもあります。モラハラ夫が手当たり次第に反論してきて、泥沼化するパターンは多いと思います。(宮崎大輔弁護士)


ただでさえぎりぎりの精神状態に置かれているのに、相手の反撃に対処していたら心身がすり減ってしまいます。自分ひとりで戦おうと思わず、家族や友人など周りの人に頼ることも大切です。また、話し合いを進めるにあたって、代理人(弁護士)の存在は心強いものです。法テラスや弁護士事務所に相談し、信頼できる弁護士を探してみましょう。

■モラハラ夫との離婚は、相談機関に頼りながら進める

モラハラ夫はわかりやすい暴言を吐くというよりも、自分でも気にしている欠点をねちねちと指摘したり、「他の人はできるのに」などと劣等感を刺激したりと、巧妙な手口で自尊心を奪ってきます。

そのため無意識のうちに心をコントロールされ、「本当に別れてもいいのかな」「私が悪いところを直せばやり直せるのかも」と悩むこともあるでしょう。そんなやさしさにつけ込むのがモラハラ夫の手口です。

つらいと感じたらひとりで抱え込まず、しかるべき相談機関に頼ることが必要です。モラハラ夫に悩む方が勇気を出して一歩を踏み出し、自分の大切な人生を取り戻せることを祈っています。

■モラハラ夫に悩む方への相談窓口

女性センター
都道府県や市区町村などの自治体に設置されています。最寄りの自治体に問い合わせてみましょう。

よりそいホットライン
24時間、全国どこからでも相談できる電話窓口です。DV、モラハラ、性暴力など女性の悩みのほか、さまざまな相談ができます。

DV相談ナビ(全国共通ダイヤル)#8008
配偶者やパートナーから受けているさまざまな暴力について、専門の相談員が相談に乗ってくれる窓口です。メールやチャットでの相談も可能です。

法テラス
国によって設立された法的トラブル解決のための総合案内所。法律の専門家に相談したい場合はこちらへ。

※ こちらは2021年7月28日に公開した記事内のリンク切れなどを修正した上で再掲載したものです。

DRESS編集部

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