妊活しているのに……ストレスが妊娠に影響している?

妊活しているのに……ストレスが妊娠に影響している?

「妊娠したい女性にとってストレスはよくない」ということは、一般的にもよく知られていますし、感覚的にも「そうなんだろうな」ということはわかるかと思います。ストレスそのものや、ストレスを感じる仕組みなどを理解して、過剰なストレスを感じないよう、自分なりの工夫をしたいものです。


私たちは日々、周りの環境や人との関係の中で、様々な影響を受けています。
 
それらは良い影響を私たちにもたらしてくれることもあれば、時に「ストレス」と呼ばれる形で、心や体に何かしらマイナスの影響を与えることもあります。

では、ストレスとはいったい何なのでしょうか。

目に見えない「ストレス」がどういうものなのか、そして妊娠にどのような影響を与える可能性があるのかを考えてみたいと思います。

私たちは「ストレスを受けている」と心の中で感じたり、それを口にしたりすることがあります。しかし、同じ状況下にあっても、それをストレスと感じる人もいれば、そう感じない人もいます。

つまり、周りの環境や人そのものが、ストレスというものではなく、それらによって影響を受けたときの反応――それは医学用語で「ストレス反応」といいますが、そのストレス反応をわたしたちはストレスと言っているのです。

■ストレス反応とは、自分の心身を守るための仕組み

「ストレス」というと体によくないイメージがありますが、本来のストレス反応の役割は、一言でいうと、「私たちの心や体を外的な影響から守るための仕組み」といえます。ストレス反応が起きているときの不快な感じや違和感を、私たちはストレスと表現し、ストレスを受けていると感じているのです。

その反応は日々の何気ない場面でも生じています。

たとえば夫婦やカップルでけんかになったとき、「あなたの○○が悪い」「しばらく帰らないから」など、時に険悪になることもありますよね。これは、けんかという状況から「自分の心を守るため」に、相手に対しけんかの原因を探したり、その場を離れてみようとしたり、といった行動に出ているわけです。口にした言葉は意識的なものですが、その元をたどれば無意識の「ストレス反応」によって導かれた行動ともいえます。

では、そのストレス反応が起こっているとき、私たちの体の中ではどのような変化が生じているのでしょうか。
 
私たちの体の中には、副腎という腎臓のすぐ傍に付いている一対の臓器があります。副腎は3〜4cm程度の大きさですが、この小さな臓器が、ストレス反応に大きな役割を担っています。

■副腎とストレスの密接な関係

副腎からは体の状態を調節するための様々なホルモンが分泌されます。その副腎の外周部にある副腎皮質で産生される「コルチゾール」というホルモンが、ストレス反応に大きな役割を果たしていることが知られています。そのため、コルチゾールは時に「ストレスホルモン」という呼ばれ方をします。

このコルチゾールの分泌は、脳の下垂体から放出される副腎皮質を刺激するホルモン「副腎皮質刺激ホルモン」によって調節されます。そして、この「副腎皮質刺激ホルモン」は、さらに下垂体の上位にある視床下部から放出される「副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン」によって調節されています。

つまり、私たちは何かストレスを感じるような刺激を受けると、脳の視床下部から下垂体にホルモン分泌の命令が起き、さらに下垂体から副腎にホルモンの刺激が伝わり、副腎からコルチゾール(ストレスホルモン)が産生されるというメカニズムが働いていることがわかります。

■ストレスは女性機能にどんな影響を及ぼすのか

この「視床下部→下垂体→副腎皮質」というホルモン伝達の流れを知ることは、ストレスが女性機能にどのような影響を与えるのかを理解する上で、とても重要な意味を持ちます。

なぜなら、女性の卵巣が女性ホルモンを産生し、排卵が起きるためには、「視床下部→下垂体→卵巣」という同様のホルモン伝達の作用が生じているためです。また、これら以外の多くのホルモンが、「視床下部→下垂体→○○○」というホルモンの流れの中で調整されています。

このホルモンの流れは、通常、一定のバランスでコントロールされていますが、過剰にストレスがかかった場合など、より多量のコルチゾールの産生が必要となった場合には、「視床下部→下垂体→副腎皮質」という伝達以外の働きが鈍くなってしまうと考えられています。

こんな話を聞いたことはないでしょうか。ある女性が、海外留学中だけ月経が止まってしまったが、帰国したらこれまで通り、月経がきちんと始まった――。つまりこれは、海外留学というストレスを感じる生活の中で、「視床下部→下垂体→卵巣」という働きが落ちて排卵が止まり、無月経になってしまったといえます。

■ストレスが妊娠に与える影響は大きい

このように考えると、過剰なストレスは、間接的に卵巣機能を低下させ、ひいては不妊症にもつながっていくことが、ご理解いただけるのではないでしょうか。

昨今、「妊活」という言葉をよく耳にするようになりましたが、妊娠を目指している期間は、仕事をお休みするなどして、できるだけストレスを軽減することも、妊活の目的の1つとなっています。あるいは、体外受精を繰り返し行なっても妊娠しなかったご夫婦が、治療をやめたあとに自然妊娠した話など、ストレスが妊娠の妨げになっていたかもしれない、というエピソードも少なくありません。

また、ストレスが卵巣機能を低下させるということ以外に、ストレスを感じると甘いものが食べたくなり、太ってしまうという話もあります。ストレスによって放出されるコルチゾールには、「血糖値を上昇させる」働きがあります。

血糖値が上昇すると、体は血糖値を下げるために膵臓からインスリンが分泌されます。インスリンによって血糖値が下がると、その血糖値をあげるために甘いものが食べたくなる。血糖値が上がったり下がったり、正に負の循環で、そして肥満もまた不妊症の原因の1つとなります。

ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールは、体の中で、血糖値や血圧に関係する重要な役割を担っています。そして本来は、ストレスから体を守ってくれる働きをしています。しかし、それも過剰になれば体に何らかの弊害を生じさせてしまうのです。

■ストレスはなくせない。だからこそ、過剰なストレスを感じない工夫を

アメリカのニュース記事で、ある不妊治療クリニックの話を読んだことがあります。

そのクリニックは、カリブ海に浮かぶ島にあり、そこでは不妊治療施設だけでなく、常に美味しくて栄養のある食事が用意され、スパやエステ、スポーツジムなど、あらゆるリラクゼーション設備が整えられている、まさにそこはストレスフリーの楽園のような場所です。

そこでの不妊治療の結果は、一般的なクリニックの結果と比較してはるかによいという話でした。

このカリブ海の島まで行くことはなかなか叶わないことではあります。また、仮にそこに行くことができたとしても、慣れてしまえば「何もストレスがないことがストレス」と感じるかもしれません。

普段の生活の中から、ストレスをなくすことは難しいことです。そして、何にストレスをどの程度感じるのかも、人によって異なります。しかし、少なくとも過剰なストレスは、私たちが心だけでなく、体の機能にもよくない影響を与えているのです。

自分の心と体を見つめ直し、心からリラックスできる環境を整えたり、ストレスを感じにくい心のコントロール法を学んだりすることも、私たちにとって大切なことなのです。


この記事のライター

医学博士、日本産科婦人科学会専門医、日本抗加齢医学会専門医 現在、東京都内のクリニックにて、体外受精を中心とした不妊治療を専門に診療を行なっています。 不妊治療は「ご夫婦の妊娠をサポートする」ことがその課題となりますが、...

関連するキーワード


妊娠 ストレス

関連する投稿


フィリピンで妊娠が発覚――予想外のアドバイスに仰天

フィリピンで妊娠が発覚――予想外のアドバイスに仰天

これまで、海外別居婚しながらの妊活やキャリアと子作りの間で揺れた女心について書いてきましたが、最前線で働くことを諦めて新しい働き方を試行錯誤するうちに、妊娠が発覚……! 今回は、フィリピンで妊娠がわかったときの経験談と、妊娠中の注意事項にまつわる予想外のアドバイスについてご紹介します。


38歳、キャリアと子作りの間で揺れた女心

38歳、キャリアと子作りの間で揺れた女心

そろそろ子どもを……と思った矢先に夫がマレーシアの会社に転職。海外別居婚の間にひとりでできることはやっておこうと進めた妊活も一段落し、次はどうしたものかと考えているうちに、38歳の誕生日を迎えてしまいました。さあ、私、どうする?


ストレスでなぜ「胃腸」が痛くなる?

ストレスでなぜ「胃腸」が痛くなる?

過度にストレスを感じると、胃腸に悪い症状が出ることがあります。これは「今は体が弱っていて、ストレスに耐えられかどうかわからないから、一旦休んでください」という体からの警告です。ストレスと胃腸との関係を解説するとともに、ストレスに強い体を作るためにすべきことを、今野裕之医師が紹介します。


海外別居婚の私が取り組んだ「妊活」

海外別居婚の私が取り組んだ「妊活」

海外別居婚の状態で、どう妊活すれば――。新婚旅行が終わったしそろそろ子どもを……と考えていた矢先に、夫がマレーシアの会社に転職することになりました。彼のキャリアアップは応援したい。でも自分は仕事を辞めたくない。子どもはいつかほしい。フィリピンからマレーシアは飛行機で片道4時間。そして私は37歳。さぁどうしよう!?


着床前診断からわかることと問題点

着床前診断からわかることと問題点

意義のある検査ながら問題点も議論される着床前診断。PGD(着床前遺伝子診断)と現在は禁止されているPGS(着床前遺伝子スクリーニング)の2種類があります。それぞれの診断内容や問題点、課題について、山中智哉医師が解説します。


最新の投稿


浅田真央さんのこれまでを写真で見る『moment on ice vol.2』が発売に。「THE ICE 2017」撮りおろしも

浅田真央さんのこれまでを写真で見る『moment on ice vol.2』が発売に。「THE ICE 2017」撮りおろしも

アスリートが輝く“瞬間"をキャッチするグラフ・マガジン『moment on ice vol.2』が発売に。プロスケーター浅田真央さんの、プロスケーターとしての1st Stepを記録した1冊に仕上がっています。「THE ICE 2017」完全撮りおろしのほか、真央さんの13年の軌跡を振り返る豪華な内容です。


下地に塗って、はがすだけ。ジェルネイルを簡単にオフできるベースコート

下地に塗って、はがすだけ。ジェルネイルを簡単にオフできるベースコート

面倒なジェルネイルのオフから、あなたを解放する「グランジェ ピールオフベースコート」が新登場。シールをめくるように、はがしたいときにはがすだけ。ジェルネイル用のピールオフベースコートです。


同棲中の「家事問題」で彼とうまくいきません【大人のお悩み相談室 #8】by サツキメイ

同棲中の「家事問題」で彼とうまくいきません【大人のお悩み相談室 #8】by サツキメイ

DRESS公式占い「愛を引き寄せる星占い」でもおなじみ、占い師・サツキメイさんによる連載「大人のお悩み相談室」。生き方や働き方、恋愛、結婚etc.迷える女性たちの相談にのっていただきます。お悩みを丁寧に受け止め、寄り添いながら回答してくれる、DRESS世代の占い師・サツキメイさんへのご相談、お待ちしています。


【プレゼント】静岡市美術館でデンマークのデザイン展が開催

【プレゼント】静岡市美術館でデンマークのデザイン展が開催

北欧諸国であるデンマークは、世界に誇るデザイン大国です。日本とデンマークの外交関係樹立150周年を記念した展覧会が、9月9日(土)より、静岡市美術館で開催します。こちらの招待券を5組10名様にプレゼント。


自分の“やりたいこと”を事業にする3つのポイント【大人のキャリア】

自分の“やりたいこと”を事業にする3つのポイント【大人のキャリア】

東証マザーズ上場会社の女性最年少取締役のキャリアを経て、2008年に衣食住に携わるコンサルティング会社を設立。 2014年には体験型イベント「日本女子博覧会」を発足し延べ4万人を動員。現在は日本の食文化やアニメ、アイドル市場に着眼した事業展開をするインタラクションメディアグループ取締役の東貴代さんにお話を伺いました。


DRESS部活