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終われば天国? 更年期の先に訪れる未来

ご自身の更年期障害について、noteなどで発信してきた如月サラさん。情報が不足するなか、叫びだしたくなるような恐怖を覚え、仕事も生活も成り立たなくなるほど追い詰められたと言います。苦しみや不安をひとりで抱え込まず、共有することの大切さを強調する如月さんが思い描く、更年期の後にくるものとは?

終われば天国? 更年期の先に訪れる未来

50歳のときに「これは更年期である」と自覚してから3年半が経ちました。更年期になった当時に書いたnote「生理よ、さようなら、永遠に。更年期になって、つらいやら苦しいやら。」(※)は読まれ続け、「スキ」(いいね! みたいなもの)されたという知らせが頻繁に届きます。

なぜでしょう? それは、多くの女性が経験することなのに、更年期に関する情報は少ないままだからです。そして、いまだに更年期の体験は大きな声では口にできない話題とされています。

今も孤独な戦いに立ち向かっている大勢の女性たちのために、そしてこれから訪れる更年期について不安に思っている人のために、少し先に体験した者として「更年期の後にくるもの」について考えてみたいと思います。

「生理よ、さようなら、永遠に。更年期になって、つらいやら苦しいやら。」

■ホットフラッシュから始まった更年期症状

まず私が体験した更年期症状についてお話ししましょう。

50歳になり、月経が止まっていることに気がついて2~3カ月後。繰り返しびっしょりとかく汗とその後に来る寒さを、更年期によるホットフラッシュなのではないかと気がつくまでさらに数か月かかりました。ところ構わず大量の汗をかくので、ビジネスバッグにもハンドタオルを2〜3枚入れておくことが習慣になってきた頃、今度は強烈な気分の乱高下がやってきました。

人様や世間に激しく暴力的な態度をとりたくなったかと思えば、次にはすさまじいまでの自己嫌悪がやってくる。ジェットコースターのように急変化する気分にぶんぶんと振り回され、本気で自分の精神が狂ってしまったんじゃないかと苦しみました。

このまま私はおかしくなっていってしまうんじゃないか。そういう不安で身も心もすくみ、自分を責めてますます落ち込んでいたある日。カンファレンスの仕事で出かけたラスベガスのストリップで信号待ちをしているとき、急に背中から汗とほてりと悪寒が同時にやってきて、恐怖で叫び出したくなりました。

このままでは仕事も生活も成り立たなくなると追い詰められ、初めて病院に行くことを思いつきます。検査してもらったら「女性ホルモンの分泌がほぼなくなっています、更年期ですね」との結果。なるほど、私がおかしくなってしまったのではなく、これは更年期障害なのだ、ホルモンのせいなのだ、とわかったことで、ようやく納得できました。

よく、月経が止まると「女じゃなくなる」といった偏った言説にショックを受けるという世間の話を聞いていましたが、不思議にそうは思いませんでした。子どもを産む機会もなく迎えた50歳。ようやく、抱え続けた重い荷物をそっと降ろしてもいいよと言われたような、もう十分だよ、と言われたような。そういう安堵さえ私は覚えたのです。

■その苦しさはあなただけのものじゃない

医師に診断を受けたことで気持ちが落ち着いた私は、知ることは力になると感じ、更年期に関する情報を探し始めました。しかし、検索してもヒットするのは一般的な症状の説明と標準的な対処法ばかり。いくつか見て、「同じことが書いてあるだけだな」と検索をやめました。

そこで始めたのが、自分の体験をオープンにすること。まずは同世代の女友達に話してみたところ「実は私の場合は……」とぽつり、ぽつりと体験や症状を話してくれる人が現れました。わかったことは、更年期の症状や感じ方、治療法は一人ひとりまったく違う、ということでした。

そして、苦しんでいる人が私以外にもたくさんいる、という事実。

だから、私はまずみなさんに言いたいのです。「あなたのその苦しさは、あなただけのものじゃない」と。孤独な戦いを続けている人は、他にも同じように戦っている人がいると知ることで、もう孤独ではなくなるのです。

「私、生理終わっちゃったし、更年期だし」と話すと「そんなこと、人に話すものじゃない」と言う方も少なからずいらっしゃいます。もちろん話したくない人の意思は尊重されるべきです。無理にオープンにする必要もありません。ただ、私が更年期にまつわる体験をオープンにすることで不安やつらさを話すことができる人もきっと出てくる、お互いの対処法について話し合うこともできる。それで楽になれる人がひとりでもいるならと思い、この活動をこれからも私は地道に続けていくつもりです。

ちなみに私はホルモン補充療法ではなく、漢方と抗うつ剤による対処法を選びました。サプリメントを飲んでいる人も多くいます。どれが正解ということはありませんので、医師のアドバイスなどに従って、ご自身で納得いくものを選ぶといいと思います。

■更年期の後に来るもの

一般的には45〜55歳が更年期と言われる期間です。ではその期間が終わったらどうなるのだろう。これについては更年期以上に情報がありません。

身近な先輩である母親に聞いてみたのですが、なんと彼女は更年期の症状がほとんどなかったというのです。このように、母と娘でもその体験の仕方が違うということも更年期のやっかいなところ。家族内での知恵の継承ができないのですから。

私より上の年代の女性達は更年期の話をタブーとされてきたからか、口が重い傾向にあります。それでもさりげなく話題を向けてみると「必ず抜けるときが来る」と言います。つらい時期はいつの間にか終わっているそうです。「終わった後は天国」と表現した人もいました。

私たちは、“女性”であるということで不利を強いられることが多い世界を生きてきました。初潮が始まってからかわれたり。愛や性のなんたるかも知らないうちに性交をして望まぬ妊娠をしたり。性を商品にされたり。「産む機械」と揶揄されたり。つらい不妊治療をしたり。石女と言われたり。私はそんなあれこれから解放されるような感覚が訪れることを期待しています。当然、どう感じるかも一人ひとり違ってくるでしょう。

私はその時が来たら、自分が新しい人類に生まれ変わっているのではないかと思うのです。これまで背負ってきた重い荷物をようやく下ろし、つらい通過儀礼を経てたどり着く、まだ見ぬ世界。そこが軽やかで楽しい場所でないはずがないと信じているのです。今から楽しみで仕方ありません。

更年期は生理以上に個人差が大きいと聞いたことがあります。ですから、個々の事例を集めることでしか更年期を理解し、乗り切ることはできないような気がしています。今、孤独に苦しんでいる人の助けになれば、そしてこれから更年期を迎える後輩世代たちの道筋を照らすことができれば、と、私は今日も「私、生理終わっちゃったし、更年期だし」と話し続けています。

Text:如月 サラ(@kisaragisara

9・10月特集「更年期は私の敵じゃない」

如月サラ

女性、53歳、独身。フリーランスワーカー、文筆家。勤続22年ののち退社。好きな詩人は萩原朔太郎。

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