巫女が教える「御守り」の役割! 取り扱い方法・持ち歩き方のお話
日本の伝統文化を通して、深い心の学びを促してくれる神社の世界。知れば知るほど面白い、神社や神様についての基礎知識。今回は、いつでもどこでも神様という「目に見えないもの」を感じることのできる、「御守り」のお話です。神社が好きすぎて巫女としてご奉仕を始めた、巫女ライター・紺野うみが神社のたしなみを伝えます。
あなたは、ご自分の「御守り」をお持ちでしょうか?
初詣などの折、地元の神社で毎年必ず受けているもの。
大切な人から、「あなたのために」といただいたもの。
旅先で出会い、お詣りした神社で一目惚れしたもの。
それらはさまざまな形で、私たちの手元にやってきます。そして、いつもそばで守ってくださり、心強い味方にもなってくださる存在でもあります。
今回はそんな「御守り」について、扱い方やよくある疑問、大切にしていただきたいことなどをお話ししていきましょう。御守りを通じた、神様とのより良い向き合い方を、皆様に知っていただければうれしいです。
■お家に眠ったままの御守り、ありませんか?
この質問に、ドキッとされた方。きっと、いらっしゃるのではないかと思うのです。
何を隠そう私自身も、以前は「御守りってどうすればいいんだろう?」と思いながら、せっかくの御守りをずっと家で眠らせ続けてしまっていた経験があるからです。
ありがちなのは、いただいた御守りを「どのようにしておけばよいのかわからず」、家に置いたままにしているうちに、いつしか持っていたのを忘れてしまう……というパターン。
お家のどこかに、皆様に忘れ去られてしまっている「悲しい御守り」がないかどうか、よく思い返してみてくださいね。そして、そんな御守りをどうすればよいのかについては、このあと順にご説明してまいります。
とにかく御守りは、大切に身につけてこそ、神様に近くで「お守り」いただけるもの。せっかく御神気(ごしんき=神様のお力)を分けていただいているのに、雑な扱いをしてしまっては、神様もがっかりしてしまいますからね。
ぜひ、あなたなりに大切にしていただけたらと思います。
■神社・神様にいつでも繋がれるスーパーアイテム!
そもそも「御守り」とは、どのようなものであり、どんな役割があるのでしょうか。
まず、その一つひとつには、神様のお力が込められています。いつも神様におそばで守っていただけるようにと、小さな形で手軽に持ち歩けるようになっているのが「御守り」。
ちなみに、自宅や会社などでお祀りする「御札」にも同じ意味が込められていますが、こちらは個人が持ち歩くためのものではありません。神棚にお祀りし手を合わせ、日々感謝を伝えながら、神様と共に暮らすという役割があるものなのだと覚えておきましょう。
そして御守りについては、中に「内符(ないふ)」と呼ばれる御神体があり、通常それは見えない状態になっています。皆様もきっと、御守りの中身を開けてみるようなことは、されていないはず。
なぜ「開けてみてはいけない」のかと言いますと、その中には簡単に触れたり覗いたりすることで穢してはならない、神様の「御霊(みたま)」という尊いものが入ってるからです。
御守りが汚れたり傷んだりすると、そこに宿っている神様のお力も、弱くなってきてしまいます。ですから、御守りは丁重に扱うことが大切なのですね。
■神様の心を大切にする、御守りとのおつきあい
それでは、具体的に「神様との絆」である御守りを、どのように取り扱うべきか。御守りとの、おつきあいのポイントをご説明しましょう!
1.直感と愛着を大切に選ぶ
神社で御守り選びに悩まれて、「どれがいいでしょうか……?」と仰るご参拝の方は、よくいらっしゃいます。たしかに、素敵な御守りがたくさん並んでいると、どれを選べばいいのやらと迷ってしまいますよね。
そんなとき、私はお一人おひとりのお願い事によって、御守りに込められた御神徳(商売繁盛や病気平癒など)を説明しますが、最終的には「ご自身の直感を大切にしてください」とお伝えするようにしています。
いつも「肌身離さず」に持っているとよい御守りですから、長く愛着を感じ持ち続けていられそうなものを選ぶのが、最良の選択だと思います。
御守りとの出会いも、なにかピンとくるものがあれば、ぜひそのご縁を大事にしてみてください。御守りからの「あなたのもとに行きましょう!」というサインを、キャッチしたのかもしれませんよ!
2.大切な人に心を込めて贈る
かけがえのない人の「踏ん張り時」に、力いっぱい応援したいとき。応援の仕方にも、いろいろなかたちがありますが、その根源には必ず「祈り」があります。
言葉をかけたり、何かをしてあげるばかりでなく、そっと静かに見守ってあげることも愛情のひとつですよね。「いつでもあなたの幸せを祈り、気にかけていますよ」というやさしい祈りを込めて、人に御守りを贈るのはとても素敵なことです。
相手のことを考えながら選び、気持ちを込めて「神様とのご縁」をプレゼントしてみてはいかがでしょうか?
もし、どなたかに御守りを贈る際は、お詣りの際に「〇〇さんの幸せを導いてください」などと、神様にもお伝えしておくとよいですね。そうすれば、御守りが渡った先の方にも、きっと、あたたかなお心配りをいただけることでしょう!
3.「お役目」を意識して、きちんとお戻しする
すべての物事と同じように、御守りにも「お役目」の終わりというものがあります。どんなものでも、古くなったり汚れてしまったりしたら、その本来の力は次第に失われてしまうものですよね。
同じように、私たちを守り導いてくださる御守りも、その神様のお力が災厄を祓ってくださったり、力を分け与えてくださったりと、日々お役目を担ってくださっています。
御守りは、たいてい1年後くらいを目途に、そのお役目から解放して差し上げてください。もしくは、なにかひとつの願い事(必勝祈願や安産祈願など)を込めている場合は、それが叶うまで大切にして、願いが叶ったら御礼を込めて神社にお戻ししましょう。
感謝を込めて受け、感謝を込めてお戻しする。一つひとつの御守りに対して、その気持ちを大切にしてみてください。きっと神様も、その想いに応えてくださるはずですよ!
■おすすめしたい御守りの持ち歩き方・役立て方
近年は、多くの神社でさまざまな形状の御守りが生まれ、「身につけておきやすいもの」も増えています。お財布やパスケースなどにも忍ばせやすい「肌守り」と呼ばれる薄くてかさばらないもの。携帯やバッグにつけておきやすいストラップやキーホルダータイプなど。
しかし、巾着の中に内符が入っていて、紐で閉じられている「一般的な御守りの形」とも言えるものも、根強く人気がありますね。皆様が、御守りのことで案外悩まれているのは、その「持ち歩き方」について。
「肌身離さず」というのは、もちろんいつでもお傍で見守っていただくためにも基本なのですが……。問題は、それを「どのように」肌身離さず持てばいいか、ということですよね。
そこで私がおすすめしたいのは、御守りを入れる「専用のポーチ」を用意してしまうこと。これは、お手持ちの御守りのサイズや数に応じて、お気に入りの入れ物を用意すると良いでしょう。
その「御守りポーチ」をいつでもカバンに入れておけば、「これさえあれば、大丈夫!」と、心強い気持ちになれます。神社仏閣で受けてきた御守りが、たとえ複数あったとしても、見当たらなくなってしまうような心配もありません!
そして、大切な「御守り」の役立て方。それは他ならぬあなた自身が、その存在を「意識」して、心から「信頼」を寄せることです。
たとえば私の場合、辛くて苦しいときや心配なことがあるときなど、御守りをポケットに入れるなどしてそばに置き、物事に立ち向かうタイミングがあります。すると必ず、その存在が自分の心に勇気を与えてくれることを実感できます。不思議なことに、御守りから「あたたかさ」を感じたこともありました。
何かを精一杯がんばるとき、揺るがずに耐え忍ぶ必要があるとき。
「いつでも、神様と一緒にいる」「必ず見守ってくださっている」――そんな風に私たちに感じさせてくれる御守りは、きっとあなたの「パワーアイテム」になることでしょう!
■御守りについて、よくある疑問
Q.御守りをたくさん持っていると、神様がケンカするって本当?
A.御守りに宿っている神様同士が、何かを争ってケンカをするようなことはありません。なぜなら、神様はいつでも一人ひとりの幸せや成長を願っているからです。神様もそれぞれの得意分野を活かしながら、私たちのことを助けてくださいます。
そのような理由で、複数の御守りを持っていても問題はありません。しかし、あまりにも御守りをたくさん持ちすぎて、それぞれの取り扱いが雑になったり、「これだけあれば、もう大丈夫!」という気持ちで自分は努力をしなくなったり……というのはよくありません。
Q.御守りを受けてきて1年経ってしまったけれど、まだ持っていたい御守りがあります。神社にお返ししないとダメですか?
A.御守りの「お役目」には、さまざまなものがあります。もちろん、1年ごとに新しいものを受けるのが理想です。しかし、なかなか足を運べない場所のものや、ある願掛けをしてそれが叶うまでは持っていたい、といったケースもあるでしょう。
そのような場合は、「〇〇までは、どうぞ御守りください」と御守りに願いを込めて、できる限り汚れたりしないよう丁寧に扱うように心掛けましょう。
■御守りに「祈り」と「感謝」の気持ちを込めて
御守りの捉え方については、こんな風にたとえて考えてみていただけると、わかりやすいのではないでしょうか。あなたの手元に、あの大好きな神社と神様への「窓口」がひとつ、開いたのだと……。
つまり、「いつでも」「どこでも」その御守りを通じて、私たちの心は神様と繋がることができるのです。もちろん手元に御守りがなかったとしても、私たちの心が神様の方を向いていれば、その想いは必ず届いています。
けれども、私たちはつい「目に見えないもの」のことを忘れて、勝手気ままに行動してしまうことがありますよね。
そんな忘れやすい生き物である私たちのために、神様の分身のような存在である「御守り」を受けてきて、それを目にしながら「神様」の存在を意識して過ごしましょう……というのが、その大事な役割なのです。
ですから、「御守りがあるから」といって、自分がなにひとつ努力をしないのでは意味がありません。
御守りはいわば、神様におそばで「見守っていただく」ためのものであり、挫けそうなときや勇気が欲しいときに、神様に「そっと背中を押していただく」ためのもの。
「人事を尽くして天命を待つ」という言葉がありますが、御守りを通じて「自分なりの努力」を、神様に見ていていただくような気持ちが大切です。御守りを持ちながら、神様に対して恥ずかしくない生き方を、私たちは目指していかなくてはなりません。
神様と、あなたの心を繋ぐ「御守り」。皆様にも、素敵な神社・神様、そして「御守り」との出会いがありますように。そしてその人生を、もっと明るく元気に歩んでいっていただければと、そう願っています。
【神社のたしなみシリーズ】
◆◇◆神社と心◆◇◆
初詣だけじゃない! 人生の中で私たちが神社に行くべき理由とは?
◆◇◆神社と御朱印◆◇◆
神社で神様とのご縁を結ぶ! 「御朱印」の意味と真のご利益
御朱印を集めて各地の神社を巡る「御朱印ガール」とは
御朱印帳の使い方! 素朴な疑問と知っておきたい基礎知識
御朱印の転売、恫喝騒ぎが悲しい……御朱印帳を持つ方に伝えたい5つのこと
◆◇◆神社の授与品◆◇◆
「おみくじ」は吉凶よりも「言葉」を読もう! 基本の引き方・捉え方
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◆◇◆神社と行事◆◇◆
神社でデトックス! 心と体をきれいにする「夏越の大祓」とは
「令和」時代を迎える前に知っておきたい「元号」のお話
【巫女ライターの神社と御朱印めぐり】
◆◇◆東京◆◇◆
#1 東京の白蛇さま「蛇窪神社(上神明天祖神社)」
#2 五龍神のすまう田無の杜「田無神社」
#3 子育てと厄除けの八幡さま「大宮八幡宮」
#4 長い歴史とロマンが宿る「根津神社」
#5 太陽と月と海原の三貴子が鎮まる「阿佐ヶ谷神明宮」
#6 武蔵国を総べる社「大國魂神社」