「令和」時代を迎える前に知っておきたい「元号」のお話
日本の伝統文化を通して、深い心の学びを促してくれる神社の世界。それは、知れば知るほど奥深いものでした。ついに迎える、新元号「令和」時代。新天皇が御即位となるこの節目は「御代替わり」と言って、神道の世界でも大変に重要な意味があるのです。神社を愛してやまない、巫女ライター・紺野うみが神社のたしなみを伝えます。
2019年4月まで、31年間続いてきた「平成」の代。
いよいよその一時代が幕を閉じ、「令和」の新しい時代が始まろうとしています。
希望に胸を膨らませながら、その時を待っている人は、多いのではないでしょうか?
私たちの国、日本ならではの「元号」という時代の区切り。
それは、日本国の「象徴」であらせられる天皇陛下の「御代替わり」という節目でもあります。
そのため、実は神社の世界でも、とても重要な意味を持っていることなのです。
今回は、新しい時代を迎えるにあたって、日本人ならぜひ知っておいていただきたい「元号」にまつわるお話をしたいと思います。
■そもそも「元号」ってどんなもの?
「元号」とは、日本だけが独自に行っている、年の数え方のことを言います。
世界各地にはそれぞれの宗教や文化によって生まれた、年の数え方がたくさん存在しているのですが、世界では多くの国に広まったキリスト教によって、キリストが生まれたとされている年を始まりとする、西洋生まれの暦「西暦」が広く使われていますね。
もちろん、日本もこの西暦を併用しているので、現在私たちの国では、二種類の年の数え方をうまく使い分けているということになります。
そして、この国の歴史を考えるのであれば、これまで長きに渡り今日につながってきた「元号」というものは、私たちがとても大切にすべき文化なのです。
元号は、ある一定の時代に名前をつけているもの。
はじまりは飛鳥時代にさかのぼり、約1400年前に中国(当時の唐)から取り入れられた制度でした。
明治時代に入ってからは、現代と同じように、天皇陛下お一人の時代にひとつの元号がつけられるようになりました。それまでは良いことも悪いことも、さまざまなきっかけで頻繁に改元(=元号を新しくすること)が行われてきたという歴史があります。
最初の元号となったのは、「大化の改新」でお馴染みの「大化」ですね。
そして、247番目の元号である「平成」に次いで、「令和」は248番目の元号にあたります。
■天皇陛下の御退位による「御代替わり」
今回、平成の御代を治められた天皇陛下が、新しく令和の天皇陛下となる皇太子殿下に、その御位を譲られることになりました。
これは「譲位(じょうい)」と呼ばれるもので、江戸時代以来、約200年ぶりのこと。
2019年4月30日に「退位礼正殿の儀(たいいれいせいでんのぎ)」が行われ、平成の天皇陛下が最後に挨拶をされて、平成の時代は幕を閉じることとなります。
その後も、さまざまな儀式を経て、新しい「令和」の世の中が日本に浸透していくのですね。
私たちの国の成り立ちは、『古事記』や『日本書紀』に起源を読み取ることができるのですが、伊勢神宮にお祀りされている日本の氏神様、太陽の神様「天照大御神(あまてらすおおみかみ)」は、天皇陛下の御祖先にあたります。
それ以来、代々「天照大御神」の子孫が天皇として御位を継承し、今日に至るまで日本の国を治められてきたのです。そして、日本は「天照大御神」から授けられた稲によって、稲作を行うことで繁栄してきました。
天皇陛下の治める世の中と、神道の世界は、これほど密接なつながりがあるのです。
御譲位にあたっての儀式も、伊勢神宮をはじめとする神社において、神様の御前で行われるものがたくさんあるのも、そういった理由から。
日本は、八百万(やおよろず)の神々あっての世の中です。
新時代を迎えるにあたっては、私たち国民こそが、平和な日本で生きてゆけることに感謝をしなくてはなりませんね。
■「平成」と「令和」はどのように決められたの?
元号がどのようにして決まるのかというのは、元号の制度が取り入れられた約1400年前から、ずっと変わらない方式が取られています。
それは、その時代を生きる人々の想いや願いを受け、国の知識人たちが話し合いを行って、天皇陛下に確認して決められているのです。
今回幕を閉じる「平成」と、幕を開ける「令和」には、それぞれどのような意味が込められているのでしょうか?
【平成】の由来とは?
「平成」の二文字は、中国に伝わる歴史書『史記』と『書経』から引用されたもの。
内平外成(ないへいがいせい)=内平らかに外成る
地平天成(ちへいてんせい)=地平らかに天成る
この言葉から拾われています。
意味は「日本が平和で、周囲の国々とも仲良くあり続けられるように」「世の中が平穏に治まり、万物が栄えるように」という、平和な世の中への願いが込められているのです。
【令和】の由来とは?
「令和」の二文字は、日本に伝わる最古の和歌集である『万葉集』より、梅花の歌を出典としています。
初春の令月にして
気淑く風和らぎ
梅は鏡前の粉を披き
蘭は珮後の香を薫らす
この歌より取られた二文字には、それぞれ次のような意味が込められています。
「令」の字には、古くは「神様のお告げ」という意味があったのだそう。「令月」というのは冬から春にかけて、新しい1年が始まる、気持ちのよいおめでたい月という意味も。
「和」の字には、争わないで和を保っていこうという、人類すべてが持っていたい気持ちが込められています。
■私たちが「善い世の中」を目指す、新時代へ
日本に生きる私たちが、元号の価値や意味を知るとき、そこには日本人として持つべき心の在り方すらも見えてくるような気がします。
今、この時代を幸せに生きることができるということ。どんなささやかな幸せも、「当たり前」ではないのです。
それは日本を守ってくださる神仏があり、多くの先人たちが守り受け継いできてくれた世の中があるから。
身近な人とはもちろん、同じ世界を生きる人と人とが「和」を重んじて、ともに栄え生きてゆくこと。
日本に伝わる「弥栄(いやさか)」の心なのです。
新天皇の御即位とともに、「令和」という新しい世の中を迎える今。
私たちはどのように暮らし、この時代を次の世代へとつないでゆくべきでしょうか。
物事を人任せにしたり、誰かのせいにしたりするばかりでなく、私たち一人ひとりが「善い時代にしていこう」と心がけ、日々を生きてゆきませんか。
その心が、新しい時代を明るく清らかにしていくのだと思います!
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