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結婚しても「ひとり」であることからは、絶対に逃れられない【生き方は多様化してきたけど、やっぱりひとりは寂しい?】

文筆家の小野美由紀さん、ラブジャーナリストの中村綾花さんが「女性がひとりで生きていく」をテーマに対談をスタート。中村さんは結婚してから、さらに「孤独」について考える機会が増えたようで――。

結婚しても「ひとり」であることからは、絶対に逃れられない【生き方は多様化してきたけど、やっぱりひとりは寂しい?】

■結婚前の「ひとり」と、結婚してからの「ひとり」

小野美由紀さん(以下、小野):中村さんは、結婚前は「ひとりで生きること」についてどうお考えでしたか?

中村綾花さん(以下、中村):ひとり=怖い。絶望! 深くて暗い洞窟! だと思って焦りながら婚活してましたね。ただ結婚してからは「ひとりの時間が欲しい」と言っている既婚者の意見が理解できるようになりました。

小野:そうなんですね(笑)。

中村:でも、旦那が朝に出かけて夕方帰ってくる時とかにふと、「彼が事故でもあって帰ってこなかったら……」とかいまだに想像して、ゾッとしているところありますね。あと、ベッドで一緒に寝ているときも「いつか彼の息が止まる日が来る」とか考えてしまいます。

結局、ひとりであることからは、結婚しても絶対的には逃れられないことだと思い知りました。

小野:そうなんだ。うーん、結婚したからこそ言える深み。

中村:小野さんは、結婚する・しないで「ひとり」の感覚が変わるイメージありますか?

小野:私は、結婚したからって孤独が消えるなんて全然思えないですね。むしろ、結婚して共依存的な関係になってしまう方が怖い。

「愛する人がいなくてかわいそう」と言われたことがあるのですが「愛する人がいるフリをしているよりマシ」、もっと言うと「愛することが義務になってしまった人よりずっとマシ」だと思ってる。

そもそも、結婚制度と恋愛とセックスの相性が悪すぎるし。一生ひとりの相手とセックスし続けられる気なんてまったくしないので、結婚も契約社員と同じで3年間ごとの契約関係にしたらいいのにって思っちゃいます……。3年ごとに合意を確認して夫婦継続、みたいな。

中村:事実婚だと、毎秒そんな緊張感がある気がします。そんな小野さんには、事実婚という選択が向いているような。どちらかがイヤになったら書類提出して、解散できるんですよ。その緊張感と言ったら……。

小野:フランスのパックス制度(※1)はいいですよね。日本にも導入してほしい。繰り返しになりますが、結婚を否定する気はまったくないんですよ。ただ、従来の「幸せ」とされている結婚観だと、どうやら私には合ってなさそう……。というのが最近わかってきた。

※1:性別に関係なく、成年に達したふたりの個人の間で、安定した持続的共同生活を営むために交わされる契約のこと(「PACS(連帯市民協約)に関して(在フランス日本国大使館)」より)

■生産している人だけが社会にとって大事なわけではない

中村:小野さんはコラムなどでも「子どもは欲しくない」と書かれていますよね。それはどうしてなんですか?

小野:前に『DRESS』でも書きましたけど、有機物を育成することに1ミリも興味がないからです。

国レベルで女をちやほやしてよ、日本が本気で少子化対策したいなら【小野美由紀】

https://p-dress.jp/articles/3447

日本が少子化対策を本気でやりたいなら、国レベルで女をちやほやしてよ、とは作家の小野美由紀さんの見解。その理由をたっぷり綴っていただきました。小野さんの連載【オンナの抜け道】#1では子供を産む・産まないをテーマに書いていただきました。

小野:友達に子どもができても、焦るどころか「こんなに可愛い子を産んでくれる人が周りにいるんだから、私は産まなくっていいや」って思っちゃう。私の場合は、自分の創作物が我が子なんで。「子どもを産まない=社会に貢献してない」と結びつける人もいるかもしれませんが、私は「有機物を作成していない=社会に貢献していない」では全然ないでしょ、と思います。そんなこと言ったら第一次産業の人しか評価されなくなっちゃう。

中村:「興味がない」というシンプルな理由なんですね。「子ども」も結局、家族の呪縛ですかね。興味ある人はつくればいいし。ない人は、つくらなくてもいい、と。

小野:だいたい、人口って、国家がコントロールするべきことじゃないですか。子どもが減ってきたことを国民の責任にする方が間違ってるよ。産んでないからって、責められる言われはないぜ。

中村:いさぎよくて気持ちがよろしい! そこ吹っ切れない女性はけっこう多いと思うなぁ。

小野:吹っ切れる人ばかりではないと思う。でも、「何かを生産している人だけが、社会にとって大事、というわけではない」というのは本気で思います。

1年前に祖母ががんで亡くなったのですが2カ月くらい少し仕事を減らして、母とふたりでつきっきりで終末介護をしていたんです。で、毎日長時間病院に滞在していると、まるで自分が社会から外されたような気持ちになるんですね。これまでできていた仕事が、思うようにできない。なんにも生産できなくて……。「私、マジでなんの社会貢献もしていないな」と強く思ってしまったんです。

で、病院がちょっと都心から離れたところにあるんで、介護の合間に近くのスーパーとかに行くと、おじいちゃんおばあちゃん、主婦、子ども、なんか知らないけど若者、とかがわらわらいて、みんなベンチとかパン屋さんのイートインコーナーでだらだらしてる。

その光景を見て「あれ、案外、働いてない人って多いな」と思って。「でもこの人たち、全員、社会にとって要らない人じゃないよな」と。

たしかに今の私は社会的になんの貢献もしていない。けど「介護」という自分にとって重要なことはしているわけですよ。「生産ばっかりが社会にとって重要じゃないな」と強く思ったきっかけでした。

子どもの話に戻すと、女にとってクリエイティブであるということは、出産・育児だけではない。仕事で人の役に立つとか、落ち込んでいる人を元気付けるとか、綺麗な世界を生み出すとか、もっというと自分のために美味しいご飯を作って食べるとか、ただそれだけのことだってクリエイティブだし、それをやっていて本人が幸せであれば、それでいいのでは? と思います。

中村:なるほど。こうして話を伺っていると、「小野さんに付き添われて、ひとりじゃないまま旅立てたおばあちゃん、よかったな」と思ってしまった……。最後の最後って、ひとりぼっちなだなと、結婚してからも思うわけですよ。

小野:うーん、祖母は自分自身の人生を送ってきたから幸せだっただけで、私と母が死に立ち会ったから幸せに亡くなったのだとはまったく思いませんけど……。中村さんにとって「ひとりで死ぬ」ということは、よほど大きなことなのですね。

■どうせ死ぬときはみんな孤独だ

中村:どうしても「ひとり」が恐怖につながる感覚というものが私にはあるんですよね。

私はフランスに長く住んでる日本人の老人会に入っているんです。もう日本にも帰れない、帰らない、って決めた人たちが、集まってお茶会やったり、花見やったりするんですけどね。みんなけっこう元気なおじいちゃん、おばあちゃんばっかりで。「どーせ死ぬときゃ孤独よ、みんな」って、ものすごい説得力で言うの。

私の旦那は不摂生が常習だし、フランス人だし、きっと私より先に旅立つだろうと今から思っているけれど、私は死ぬのも、死なれるのも怖いわけ。「死」そのものの恐怖もあるけど、「彼が死んだ後に私ひとりになっちゃう、どうなるんだろう⁉」って。

それなのにこの老人会では、私が常にびびってることをドーンと真っ正面からぶつけられる。体験談として「年とって長生きすると、死ぬのも案外怖くなくなるよー」とか言われるから「怖い」を通り越して、認めるしかない。

だから私の場合は「先人たちを見る」ということが「ひとりで生きていく」ことの、ただただ、むやみに怖がるだけでなく、覚悟のための経験になっているんです。

小野:ご結婚されているにも関わらず中村さんの「ひとりで生きる」っていう覚悟? があるのはすごいと思う。

中村:むしろ結婚したから、思い知らされたという感じですよ。

小野:そうかー。それはフランスだからなのかな?

中村:フランスに来てから「孤独」という言葉が日本の「孤独」とはまた違うものだということがわかってきましたね。

フランス人は「むやみに怖がるのでない。人は誰しも孤独であるのは当然」ということを知っている、という感じ。みんな孤独であることが当たり前。

小野:それはとても興味深いですね。日本とフランスの「孤独」は違うか……。


Text・構成/中村綾花


第1回:家族という檻に苦しむ日本

第2回:結婚しても「ひとり」であることからは、絶対に逃れられない

第3回:「プチ依存先」を増やせば孤独を受け入れられる

DRESS編集部

いろいろな顔を持つ女性たちへ。人の多面性を大切にするウェブメディア「DRESS」公式アカウントです。インタビューや対談を配信。

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