新たな一歩を踏み出すなら今。「きっかけ」は自分が作る
先延ばしにして、気になっていることはありませんか。明日やろう、来週やろう、来月やろう……。もうすぐ2018年。新しい年は、そんな自分を変えてみませんか?
どうして、わざわざこんな寒い季節に大掃除をしなきゃならないのだろう――。師走になるといつも思います。でも、本当はその理由を知っています。
期限でも決めないと、いつまでもやらないから。それは掃除に限ったことではありません。今年もいろんなことを先延ばしにしてきました。でも、やはりこのままじゃいかん。
一念発起して、何年も手つかずだった本棚の整理に取りかかりました。でも、本棚というのが失敗だった……。この慌ただしいときに、面白い本を見つけてしまいました。
『夢をかなえるゾウ』を読み直して
初版は2007年。すぐに話題となり、書籍でありながら『日経MJ』が2008年上半期に発表したヒット商品番付にもランクインするほどの大ベストセラーとなっています。ちょうどその頃です、わたしがこの本を買ったのは。
読むには読んで、ほうほうと感心はしたものの、そのときはなぜか内容がすとんと心に入ってこなかったのを覚えています。それから5年。
掃除の手を止めてもう一度ページを開いてみると、こ、これは面白い……。掃除もそっちのけで、一気に読んでしまいました。
主人公は、どこにでもいそうな独身のサラリーマン男。ある日、二日酔いで目が覚めるとゾウの顔に人間の体をした奇妙な生き物が目の前に。
インド旅行の記念に買ったガネーシャと呼ばれるインドの神様の置物が、「自分を変えたい」という主人公の願いをかなえるために生き神様となって、目の前に現れたという事情説明までが前置き。そこからガネーシャ直伝の自己改革プログラムが始まります。
ああだのこうだの行動しない言い訳をする主人公のヘタレ根性を、歯に衣着せぬ物言いで一刀両断に切り捨てるガネーシャの口癖が、「ほんまにアホやな、自分……」。
注:この神様はなぜか関西弁です。
■凡人は面倒くさがり
実は、この主人公は、そこまでアホでもなくて、そこそこの大学を出てそこそこの会社に入って、そこそこ仕事も真面目にやっている平凡な若者。
そんな平凡な自分に嫌気がさして、何か事を成し遂げたいと思ってはみるものの、すぐ挫折してしまうところが、これまた極めて平凡。
「自分を変える」と息巻いて有休をとってインドまで行ったのに、インドに行く前とまったく変わらない生活を送っているというのも、嫌になるほどよくある話。……この主人公、本当に親近感がわきます。
いつか変わらなければ取り返しがつかないことになる、という不安につきまとわれて、何かやろうとするけれど、いつも三日坊主で、そんなことを繰り返しているうちに、いつしか「変わりたい」という思いが「どうせ変われない」という思いとワンセットでやってくるようになってきて……。どうしても一歩が踏み出せない主人公。
「意味がない」と心のバリアを張らんと、なんでもやってみんねん
主人公の困惑などおかまいなしで、ガネーシャは毎日新しい課題を出します。
たとえば、
*靴を磨く
*トイレを掃除する
*明日の準備をする
*身近にいる一番大事な人を喜ばせる
*求人情報誌を見る
*コンビニでお釣りを募金する
などなど。
ガネーシャが出題する課題は、「自分を変える」という壮大な計画を成功させる秘訣というにはあまりにも普通。それでも、主人公はしぶしぶ課題に取り組みます。
課題をこなしていけば自分はきっと変われる。そんな淡い期待を抱き始めた主人公に、「期待するのは逃げや」と、ガネーシャが冷や水のような言葉を浴びせます。
「自分の将来を期待して、これをやれば成功できると興奮しているときは、実際に行動に移すときの辛い作業を忘れているからな」
たしかに。毎日これをやれば、3カ月後には……と期待して、実際やり遂げられなかったことがどれだけあることか。
人が変われるのは「立って、何かをしたときだけ」や
ガネーシャの課題はさらに続きます。
*1日何かをやめる
「1日24時間は誰にでも与えられた平等な器や。そのぱんぱんに入った自分の器から何かを外に出すんや。そしたら空いた場所に新しい何かが入ってくる」
*運が良いと口に出して言う
「自分にとって嬉しくないことが起きても、まず嘘でもええから、『運が良い』と思うんや。そしたら、脳みそが勝手に自分に起きた出来事から何かを学ぼうと考え出すからな」
*自分の苦手なことを人に聞く
「短所も長所も自分の持っている同じ性質の表と裏になっとるもんや。だからな、自分の長所を知りたかったら逆に短所も聞くんや。普段見落としがちな裏側に注目すんねん」
*会った人を笑わせる
「笑わせる、いうんは、『空気をつくる』っちゅうことなんや。ええか、『気分は伝染する』んや」
成功しないための一番重要な要素は「人の言うことを聞かない」や
ガネーシャの言葉はいちいち腑に落ちます。
じゃあ、なぜこの本を最初に読んだときは、ここまでガネーシャの言葉が心に響かなかったのか? そのときのわたしには、「人の言うことを素直に聞く」だけの心の余裕がなかったからかもしれません。
ガネーシャの課題を実践していくうちに、主人公はある結論に至ります。
「『きっかけ』さえあれば」いつもそう思っている。でも、このままでは『きっかけ』なんて来ない。それが『きっかけ』であることを決めるのは今この瞬間の僕なんだ」
新しい年を迎えるにあたり、もし生活を変えるきっかけを待っているなら、この本を読んでみてください。まだ読んでいない人はぜひ! そして、もうすでに読んだことがある人は改めて。
まあ、それを『きっかけ』にできるかどうかは自分次第やけどな・・・・・・・。
わたしも今から新しい一歩を踏み出します! でも、まずは片付けを中断している本棚をどうにかせねば。