フリーランスで働いていたら、保育園へ子供を不正に預けていると投書があった

フリーランスで働いていたら、保育園へ子供を不正に預けていると投書があった

息子を運良く認可保育園に入所させることができたフリーランスの大泉りかさん。しかし、それから3カ月後、「大泉りかという人が、不正に保育園に子供を預けている」という内容の投書が区に届く。なぜこのようなことが起きてしまうのか――彼女自身が感じたこと、改めて大切にしたいことを綴っていただきました。


今年の4月、保育園に入所した時点で、早生まれの息子は生後わずか2カ月半だった。

「もっとも入りやすい」と言われている0歳4月のタイミングに合わせて入所を考えると、どうしても早い時期に手放さざるを得ない。これは、早生まれの宿命だ。

仕方がないことだと頭で理解はしていても、気持ちの上には葛藤があった。生まれてきてまだ3カ月も経っていない、幼くかわいい我が子を手放すことは、想像するだけで自分の身を切られるようだった。

その上、おそらく一生にたった一度しかできないであろう「子育て」という経験をみすみす捨てるのも、もったいないことのように思えて仕方がなかった。

■”仕事への復帰”や”待機児童問題”……悩み抜いた末の覚悟

だけど一方で、一刻も早く仕事に復帰したい思いもあった。

わたしの仕事はフリーランスの物書きで、1本いくらの原稿料で糊口をしのいでいる。書く原稿の数が減れば、その分収入は低くなる。

子供を産んだことでこれから先、さらにお金がかかることを考えると、少しでも稼ぎたいと思った。それにわたしにとって仕事は、ただお金を稼ぐためだけのものではない。生きがいでもある。

仕事を手放すことは、生きる目的をひとつなくすのと同じことだ。育児という新しい生きがいが手に入ったからって、そう簡単に捨てられるものではなかった。

もうひとつには、保育園の待機児童問題もあった。わたしが住んでいる区は、0歳児入所でも結構な激戦だが、1歳ともなるとさらにその熾烈さは加速する。「保育園に入れたければ、0歳からのほうが圧倒的に入れやすい」と先輩ママの誰に聞いてもそう言っていた。

すべての事案を総合して、悩んで、悩んで、悩んで出した結論としては、「ダメ元で認可保育園の入所を希望して、もしも受かったら腹をくくる。落ちたら、非認可の保育園に週に3~4日くらい預ける感じで、ゆるく仕事に復帰する」ことだった。

■保育園のありがたさを実感する日々

運良く、奇跡的に認可保育園に入所できることになり、ホッとしたのもつかの間、息子を家族だけの閉じられた世界から、外の社会に出すことを思うと毎日が憂鬱だった。

それと同時に、寝ても暮れても逃れることのできない育児から解放される嬉しさもあって、心中は複雑だった。

揺れる思いを抱えながらも、やがて4月が訪れて、保育園通いが始まった。

息子はあっさりと保育園に馴染み、そしてわたしも日中、息子がいない生活に慣れていった。そして次第に、今度は保育園のありがたみを痛感するようにもなった。

毎日、決まった時間に保育園に送り迎えすることで生活のペースができ、保育士の先生たちが見ていてくれることで育児の不安も減った。

■保育園に子供を預けて、母親は1日遊んでいるという報告が

「保育園に入れてよかった」とすっかり気持ちを落ち着かせることのできた、7月頭のことだった。

息子を保育園に送っていった際に、保育士の先生に「ちょっとお話があるんですけれど」と呼び止められた。そのまま別室に連れていかれて告げられたのは、「保育園に子供を預けて日中、遊んでいるって、区にメールで投書が来ているそうなんです」ということだった。

びっくりして詳細を尋ねてみると、わたしの個人ブログのURLとともに、「ブログに書いてあるように、働いていないのに、保育園に入所させている」というような内容の投書があったという。それが一度だけではなく、複数回あったということで、一応わたしのほうに知らせておこうとなったらしい。

慌てて先生には、「わたしの仕事はフリーランスの物書きで、自宅作業がメインなのが誤解されやすいのかもしれません」と説明をした。そこのところは、区の審査をきちんと通って入所しているからとくに問題はないという返事をもらって安心したものの、次に気になったのは、いったい誰が何のために、ということだ。

■自分よりも恵まれた環境に、ネガティブな感情を持ってしまう

ひとまず家に戻り、そして自分のブログを確認したが、そもそも産後はあまり更新をしていない。息子の写真は出さないことに決めているので、家族レジャーのときに撮った写真を、ひとりで平日に遊んでいるときに撮ったものと、勘違いしているのだろうか……などとあれこれ思案してみるものの、やはり釈然としない部分があり、区の子育ての担当者に電話をかけてみた。

投書の主の名前やメールアドレスを教えてくれないかと期待したのだが、やはりそれは無理だと断られてしまったが、新しい事実が発覚した。なんと投書は保育園に入所した4月よりも前からあるという。

2月の頭、保育園への入所が承認されたとき、ブログに保活に成功したこと、そして、どのような保活を行ったかというエントリーを投稿していた。それは、保活中「親がフリーランスだと、保育園入所が不利」という話を耳にしたので、フリーランスであっても成功した例を伝えることで、翌年度以降、同じ立場の保活ママに、少しでも役立てたらという気持ちからだった。しかし、今回は、その老婆心が仇になった形だ。

※公開当初は何区の事例かを明記していたのですが、現在は伏せてあります。

もちろん、リアルな知人の仕業という可能性もある。未だに投書をした人は誰なのかはわからないし、たぶんこれからも特定することは、できないと思う。

けれど、できれば後者、単なるわたしへの私怨であってほしいと思っている。なぜならば、たまたま見つけたブログの書き手を、投書するくらいに追い詰められてしまっている母親が存在するなんて悲しすぎる。

体験してみて初めて知ったけれども、育児は本当に孤独な闘いだ。だからこそ、同じ立場の人と共感しあうことが一番の癒しとなる。そして産後、なかなか外に出ることのできない状況においては、ネットがそういった立場の人たちとつながる手助けになる。

自分と同じく育児中の女性たちの、悩みや苦労や不満を目にすることで、「つらいと感じているのは、私だけじゃないんだ」と安心できるし、「みんながんばってるんだから、わたしもがんばろう」とポジティブな力をもらえる。

けれども一方で、焦りを生むこともある。悩みなどないようなそぶりで器用に育児をこなしているケースを目にすると、「上手くできないわたしは、おかしいのかもしれない」と思い詰めたり、また、自分よりも恵まれた環境にいるように見える相手に関しては、「苦労しなくてすんで、ずるい」とやっかんでしまったりだ。

■「人が得をしている」に腹を立ててばかりでは、なにも改善しない

「このブログの主が保育園に受かったことは、不当」だと感じてしまった人に、わたしが何を言っても、きっと腹が立つだけだろう。

それでも思うのだ。妊娠・出産という自分でコントロールできない出来事を通じて、わたしたちが学んだのは、「人を羨まない・人と自分を無意味に比べない」ということではなかったか。

つわりがあった人、まるきりなかった人、切迫早産になりかけた人、なかなか生まれてこなくて帝王切開になった人、陣痛が長かった人、あっという間に生まれた人、お産が重かった人、産後実家の助けが得られる人、ひとりでがんばるしかない人……出産におけるどれもこれもが、自分ではコントロールできないことばかりで、だからこそ「人と羨まない・人と自分を無意味に比べない」ということを身に着けることができたのではないか。

もちろん、自然であるお産と、行政に責任のある待機児童問題とはまったく違う。保育園への入所を希望しているのに、入れなかったことに関しては怒ってしかるべきだ。けれども、矛先が違うとも思う。

これから先、子供を育てていく上で、「自分だけが損をしている」「人が得をしているのが腹が立つ」という観点で物事を見てしまう癖がついてしまうと、きっとつらいことばかりだ。

わたしだって未だに、息子を保育園に入れている日中、乳児連れのママを見かける度に、「1日中、子供と一緒にいられて羨ましい」と思うこともある。けれど、わたしはその環境にはいない。できることは、いま置かれている状況で、我が子を思いっきり愛することだけ――。

同じママ同士に軋轢を生む待機児童問題が、一刻も早く解決することを心から願う。

日本は子育てしにくい国なのか?

「子供を連れていて、すみません」を言わせる国から飛び出した話

https://p-dress.jp/articles/4111

幼い子供を旅へ連れていく――これを親のエゴと吐き捨てる人もいるかもしれない。けれども、大泉さんは日本での子育てに悩んでいる人こそ、台湾へ行ってほしい、と語る。電車でのベビーカー、飲食店における乳児連れへの対応など、厳しい圧力や視線が向けられる日本を飛び出して、台湾へと足を運んだ大泉さんが気づいたこととは――。

この記事のライター

ライトノベルや官能を執筆するほか、セックスと女の生き方や、男性向けの「モテ」をレクチャーするコラムを多く手掛ける。新刊は『女子会で教わる人生を変える恋愛講座』(大和書房)。著書多数。趣味は映画、アルコール、海外旅行。愛犬と暮...

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