「私服の制服化」は少ない服でおしゃれに生きる究極のスタイル
「私服の制服化」とは、最小限の服で生きる、究極の形ではないか。ミニマリストたちが実践している私服の制服化は、毎日あえて同じ服を着る、冠婚葬祭を除く日常でいつも同じ服を着る、というもの。だって制服なのだから。それははたして女にどんな感情をもたらし、人生をどう変えてしまうのだろうか。
■「制服の私服化」は向き不向きがある
一年ほど前に、「私服の制服化」という言葉を知った。
私服の制服化とは、毎日同じ服を着る。最小限の服しか所持せず、毎日決まった色、決まった同じ形の服を着る。だって「制服」なのだから。そんな考え方を指す。
あれこれ組み合わせを考えたりする必要もないし、服のメンテナンスと管理も楽。何より収納に悩まなくてもいい。衣服代も最小限で済む。
合理的でシンプルな考え方に感動し、一時期、自分も実行できないかと真剣に考えたことがあった。
が、それはあっさりと諦めた。どう想像してみても、絶対に3日で飽きる……と思ったからだ。3日でもう違う服を着たくなるに決まっている、と気づいたから。
何着ようかな? とワクワクする気持ちがなくなったら、私の場合は絶対に元気がなくなってしまう。
(1)何着ようかな? という面倒くさい悩みから解放される、という考え方。
(2)何着ようかな? というワクワクする楽しみがなくなる、という考え方。
これほどまで、人の感じ方は違うのだ。私は明らかに後者。それをはっきり自覚できただけでも、有意義な思考期間であった。
「私服の制服化」を行うのに向いている人と向いてない人。
ライフスタイルや仕事の内容、収納スペース、経済状況――いろいろな条件でそれは異なってくるが、私服の制服化を行うことにより、自分の気持ちが上記のどちらに傾くか、が最も重要な判断ポイントなのではないかと思う。
■2年間「白シャツ+黒タイトスカート」コーデしかしなかった女性
さて、この私服の制服化という言葉を初めて知ったとき、私はある女性のことを思い出した。
大学卒業後、新卒で就職した会社にいた、派遣社員の女性。ひとまわり近く年上で、ミセスだった彼女は、控えめで真面目な仕事ぶり。
彼女は週5日、必ず白いシャツ+膝丈の黒いタイトスカート+黒いハイヒールパンプスという姿だった。
職場は比較的服装が自由で、華やかなカラフルなスーツを着ている人もいれば、カジュアルなファッションの人も。かくゆう私も、毎日いろいろな服で通勤し、ファッションを楽しんでいた。
でも、彼女は少なくとも一緒に働いていた2年間、ずっと白いシャツに黒のタイトスカートだった。最初は、それしか持っていないのかなと思っていたが、よくよく観察すると白いシャツは毎日素材とディテールが少しずつ変わっていて、スカートも丈は同じだが、微妙に数枚を着回ししていたようだった。
毎日同じ服を着続ける彼女を、はじめは「地味な人だな」と思っていた私。しかし次第に、「いつもブレない、きちんとしたスタイルを持っている人」という印象に変わっていった。
そう、毎日同じような服ではあるが、シャツはいつも真っ白で、きちんとアイロンが当てられ、彼女の体型にあった綺麗なラインのタイトスカートと、透けるナチュラルストッキングに飾りのない黒のハイヒール、という姿は清々しかった。
そして、そのスタイルは強烈に色っぽくさえあり、そのうち社内の男性陣の間でひそかに(ミセスだったので)、彼女のファンクラブまでできてしまったほどだ。
毎日毎日、頭をひねって違う服を着て、アクセサリーじゃらじゃらつけている私よりも、実は彼女の方がおしゃれで、何より女性として華があるのでは……と気づいたときはショックだった。
当時22歳の未熟者だった私は、服をたくさん持っていて毎日違うものを着る方が、絶対におしゃれだと信じて疑わなかったから。