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子宮頸がんワクチン、大人女性への子宮頸がん予防効果は?【赤池智子連載 #5】

子宮頸がんワクチンの安全性に関する報道が近年目立ちます。しかし、そもそも子宮頸がんワクチンとは何なのか、誰が接種すると子宮頸がん予防効果が期待できるのか。きちんと知っておきたい子宮頸がんワクチンの基礎知識を、赤池智子医師が解説します。

子宮頸がんワクチン、大人女性への子宮頸がん予防効果は?【赤池智子連載 #5】

これまで「子宮ってどんなもの?」では子宮の構造・働きについて、その上で「子宮頸がんのこと、誤解していませんか?」では、子宮頸がんがヒトパピローマウイルス(HPV)感染が関わって起きるがんだということを説明してきました。

■子宮頸がんワクチンは、子宮頸がんを予防するためのもの

今回は「子宮頸がんワクチンの種類」について説明します。日本では、現在2価ワクチン、及び4価ワクチンという2種類のワクチンがあります。

子宮頸がんワクチンとは、子宮頸がんを予防するためのワクチンです。前回お話したHPVの中でもがんを起こしやすいと言われているハイリスク型のHPVに対して免疫をつけ、その型のHPVに感染を起こさなくさせる役割があります。
今現在日本では、サーバリックス®とガーダシル®という2種類の製品名でワクチンがあります。

サーバリックス®はHPVの中でも前回お話しした子宮頸がんの高リスク型と言われるHPV16型および18型に対するワクチンであり(2種類のウイルスの型に対するワクチンであり2価ワクチンという言い方をします)、ガーダシル®はHPV16型、18型に加え、尖圭コンジローマなどその他病気の発症に関わると言われるHPV6型、及び11型も含めたワクチン(4価ワクチン)であることがサーバリックス®とガーダシル®の違いです。

※そのほかの違いとしてはサーバリックス®は10歳以上が対象であり、ガーダシル®は9歳以上が対象となるなど、対象年齢が異なります。また、どちらも計3回筋肉内に接種するのですが、投与間隔に差があります。

どちらを選ぶこともできますが、計3回接種する途中でもう一方のワクチンへ切り替えることはできないので、最初にどちらかを決める必要があります。

■子宮頸がんワクチン、2種類で違いはある?

では「子宮頸がんの予防」という点での効果は2つのワクチンで違いがあるのでしょうか?
結果としてこれまで世界中で行われた試験では、2価ワクチンと、4価ワクチンの間での「子宮頸がん予防について、差は認めなかった」という結果が得られています。

ただし、尖圭コンジローマなどに対しては4価ワクチンであるガーダシル®が有効です。後ほど、引用の論文も一緒にご紹介いたします。

■子宮頸がんワクチンを接種するのに適した年齢はある?

では、次に「このワクチンを接種するといいのはどんな方か?」を説明します。

基本的に、このワクチンは性交渉をおこなう前の女性が接種することにより、HPV高リスク型の持続感染による子宮頸がん発症を予防します。

私たちDRESS世代の女性に最も多いのが子宮頸がんとありますが、では、私たち世代の女性が接種できないのか? と思われる方もいらっしゃると思います。

そのことについて、先ほどの2種類のワクチン間で子宮頸がん予防の差があるかどうかとともに、記載した論文があるのでここで一緒に紹介します。

以下は医学界雑誌の中でも権威のある、『Lancet』という雑誌に掲載された論文を抜粋したものです。

よく、何かのデータを示すときにネットなどで「アメリカでは〜、ヨーロッパでは〜という報告がある」という書かれ方を見ますが、大事なことの一つは、「その情報の出典元」はしっかりとしているのか、ということです。

そもそも信用性が低い情報を、『「海外では〜」なのに日本では未だに流通しているだとか、問題である』という紹介のされ方がいかに多いことか。

しっかりと出典元も示す、さらには、そもそもの出典元も信用に値する雑誌なのかどうかということも踏まえて、紹介していきたいと思います。

Bivalent HPV vaccine
— One large randomized clinical trial in more than 18,000 young females
aged 15 to 25 years demonstrated the efficacy of bivalent HPV vaccine.
•Among HPV-naïve patients, the efficacy of the bivalent vaccine for
preventing CIN2 or more severe disease due to HPV types included in the vaccine was 93 percent, comparable with the efficacy of the HPV quadrivalent vaccine.

•In the overall population of study participants (with and without prior HPV
infection), vaccine efficacy for preventing CIN2 or more severe disease
due to HPV types included in the vaccine was significantly lower at 53
percent after a mean follow-up period of approximately three years. These
data are consistent with those seen with HPV quadrivalent vaccine and
emphasize the need to vaccinate individuals before the onset of sexual
activity to gain the greatest benefit and maximize cost effectiveness.
(参考文献: Paavonen J et al. Efficacy of human papillomavirus (HPV)-16/18 AS04-adjuvanted vaccine against cervical infection and precancer caused by oncogenic HPV types (PATRICIA): final analysis of a double-blind, randomised study in young women. Lancet 2009; 374:301.)

■子宮頸がんワクチンの予防効果は?

これを日本語に簡単に訳してみます。

・15〜25歳までの思春期〜若年女性18000人を対象に、2価HPVワクチンの効果を検証した試験(大規模無作為化、二重盲検、プラセボ対照試験)では、HPVへの未感染者のうちで、子宮頸部病変異形成(CIN)2以上の病変の予防効果は93%と報告されており、4価ワクチンとほぼ同等の効果があると思われる。
(※2価ワクチンも4価ワクチンも同様に子宮頸がん予防の効果があるということです)

・HPV既感染者を含む全体の予防効果は53%までに下がってしまう。
接種時点すでにある一定期間感染していることによることにより頸がんにリスクが上がってしまうためであると思われる。
つまり性交渉前に接種を受ける必要があると考えられる。

ですので、DRESS世代の女性が接種したとしても、予防効果は下がってしまいます。
やはり性交渉前の10代の女性が接種することによる効果が最も高いと考えられます。

ただ、近年日本では子宮頸がんワクチンの安全性について大きく騒がれているため、そこに不安を感じている方も多いとおもいます。

次回では、「子宮頸がんワクチン騒動とはなんだったのか」「ワクチンの安全性」についてお話していこうと思います。

その他参考文献
・Garland SM, Hernandez-Avila M, Wheeler CM, et al. Quadrivalent vaccine against human papillomavirus to prevent anogenital diseases. N Engl J Med 2007; 356:1928.

Text/赤池智子
医師、内科/皮膚科医。内科認定医。2006年準ミス日本。
患者の視点に立った医療を行うことを何よりも大切にし、日常診療を第一に論文執筆、学会発表、セミナーも行っている。
2006年準ミス日本の経歴も生かし、女性ならではの視点から正しい医療知識に基づいた女性の病気、健康、美容に関する情報も発信し定評がある。


子宮ってどんなもの?【赤池智子 連載 #3】

https://p-dress.jp/articles/2411

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子宮頸がんのこと、誤解していませんか?【赤池智子連載 #4】

https://p-dress.jp/articles/2533

子宮頸部にできるがん「子宮頸がん」はDRESS世代で多く見られるがん。だからこそ、正しい知識や情報を手に入れておきましょう。

子宮頸がんワクチンの副作用って?【赤池智子連載 #6】

https://p-dress.jp/articles/2990

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赤池 智子

医師、内科/皮膚科医。アメリカ University of Washington皮膚科勤務。 患者の視点に立った医療を行うことを何よりも大切にし、論文執筆、学会発表と共に日常診療を第一に行っている。 2006年準ミス...

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