子宮頸がんワクチンの副作用って?【赤池智子連載 #6】

子宮頸がんワクチンの副作用って?【赤池智子連載 #6】

子宮頸がんワクチンを接種すると、痛みなどの症状が起きる、後遺症が残るなどの、恐怖を感じる報道がなされていました。でも、実際それらは子宮頸がんワクチン接種と関係しているの? 赤池智子医師が解説します。


今回は、ニュースで取り上げられ、多くの方が気にされる一番問題の「子宮頸がんワクチンの安全性」についてお話しします。

■子宮頸がんワクチンの副作用ではないか、と怖くなる報道がなされた時期

この問題は、ワクチンを受けた後に「子宮頸がんワクチンを接種したことで慢性的な痛みが出るようになった」「階段の上り下りができなくなった」「けいれんが起きるようになった」など、怖くなってしまうような報告が実際にワクチンとの関係がはっきりしない状態のまま、ニュースで繰り返し報道されたことが発端となりました。

まず、知っておいていただきたい「有害事象」「副反応」「副作用」という言葉についてですが、違いがわかりますか?

ワクチンを接種した後に生じた好ましくない症状をすべて「有害事象」といい、ワクチン接種によって本当に起きたものかどうかという因果関係なく、すべての症状を含みます。たとえばワクチンを打った後に、たまたま転んで骨折してしまったような場合の「骨折」も含まれます。

一方、「副反応」はワクチン接種によって起きる、本来の目的以外の好ましくない症状を指します。たとえば、ワクチンを打った部位が赤く腫れるなどの場合で、これはワクチン接種と関係がある症状です。

有害事象の中には、ワクチンとの関連がある副反応の他にも、ワクチンとは無関係な好ましくない症状も含まれています。

最後に、さらっと簡単に「副作用」についてお話しすると、ワクチンではなく、治療薬によって生じる好ましくない症状のことをいいます。

本来は、ワクチンに伴う良くない症状を指す場合は、副反応というのですが、多くの方が「子宮頸がんワクチン」「副作用」というキーワードで調べられているので今回あえてタイトルで使いました。

さて、子宮頸がんワクチンは世界100ヶ国以上で承認されていて、多くの先進国では定期接種するワクチンとなっています。

日本でも、2013年4月に12〜16歳までの女子を対象に定期接種となりましたが、前述のような症状が報道されたことから、6月には厚生労働省が「積極的な接種推奨の差し控え」を発表しました。

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/qa_hpv.html

そのため現在、日本の子宮頸がんワクチン接種率は限りなく低いレベルまで落ちていて、2013年のワクチン接種率は12歳女子で約1.1%まで、13歳女子では約3.9%まで落ちています。
(Ueda Y, Enomoto T, Sekine M, Egawa-Takata T, Morimoto A, Kimura T. Japan’s failure to vaccinate girls against human papillomavirus.
Am J Obstet Gynecol 2015; 212: 405–06. )

しかし、先ほどお話ししたような様々な症状が、子宮頸がんワクチンを打った後に起きたというような報道がされている状態では、本当に大丈夫なのか、不安になる方も多くワクチン接種率が上昇するはずがありません。

■子宮頸がんワクチンと「あの症状」との因果関係を示す報告はない

子宮頸がんワクチン自体は上でお話したように世界中で承認、接種されているワクチンです。

最も多く報告されている症状は、接種部位の痛みや腫れで、これらの症状は一時的なことが多く時間とともによくなります。

その他には頭痛や嘔気、嘔吐、全身倦怠感、失神、アナフィラキシーなどがありますが、他のワクチンに比べて特別に重篤な症状が多いという報告はなく、
日本で報道されたような症状とワクチンの確実な因果関係を示す報告は、世界中の他の報告でもありません。

実際、日本でも先日厚生労働省が
(1)ワクチン接種歴のない人にも、子宮頚がんワクチン接種後に報告されている症状と同様の「多様な症状」を呈する人が一定数存在した
(2)本調査では子宮頸がんワクチン接種と接種後に生じた症状との因果関係はわからない
という調査結果を発表しました。

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000147016.pdf

これはつまり「以前から日本で報道されていた子宮頸がんワクチン接種後に生じたという障害、症状が発生した人は、ワクチンを接種していない人たちにも同じような確率でいた」ということ。今回の発表では、これまで報道されていた症状は、子宮頸がんワクチン接種との関係があるとはいえない、ということを言っているのです。

子宮頸がんワクチンを接種する世代の方に、ワクチン接種とは無関係に起こる可能性のあった症状が、ちょうどワクチンを接種した後に認められたために、「ワクチン接種によって起きたのだ」と捉えられた可能性もあります。

つまり、「有害事象」と「副反応」が同様に報道されてしまった点が発端となっています。今後大切なことは、ワクチン接種と切り離してこういった症状に悩み、苦しんでいる方をケアするとともに、子宮頸がんワクチンについては、正しい情報をしっかりと伝え、ワクチン接種が必要な世代が不安なくワクチンを接種できるようにしていくことです。

現在の状態が続くと、日本では今後ワクチンを接種した世代としていなかった世代との間で、HPV感染、また子宮頸がん発症の世代間格差が生まれると予想されています。そのためにはできる限り早期に「積極的な接種推奨の差し控え」という状態から、ワクチン接種推奨を再開し、勧奨中止期間に12〜16歳であった女性を接種対象に含めることで、その影響を最小限にできる可能性があるという報告を大阪大学大学院医学系研究科器官制御外科学講座内の研究グループがLancet oncologyに発表しています。

(Outcomes for girls without HPV vaccination in Japan
Yusuke Tanaka, Yutaka Ueda, Tomomi Egawa-Takata, Asami Yagi, Kiyoshi Yoshino and Tadashi Kimura:Lancet Oncol. 2016;17:868-869)

また厚生労働省による第6回副反応検討部会のデータでも、HPVワクチンの国内販売開始以降、接種により回避できた子宮頸がん患者数は13,000人〜20,000人、死者数は3,600〜5,600人と推計されています。

■子宮頸がんワクチン接種による利益は、リスクを上回る

現在、子宮頸がんワクチンについては
World Health Organization (WHO) 世界保険機構
Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP):ワクチン接種に関する諮問委員会(米国)
The American Academy of Pediatrics (AAP) 米国小児科学会,
The American Academy of Family Practice (AAFP), 米国家庭医学学会、The American College of Obstetricians and Gynecologists (ACOG) 米国産婦人科学会
American Cancer Society:米国がん協会
European Medicines Agency’s (EMA) Pharmacovigilance Risk Assessment Committee’s (PRAC): 欧州医薬品庁, ファーマコビジランス・リスク評価委員会

日本では
日本小児科学会
日本小児保健協会
日本産婦人科学会
日本小児科医会
日本保育保健協議会
日本感染症学会
日本呼吸器学会
日本渡航医学会
日本耳鼻咽喉科学会
日本プライマリケア学会
日本環境感染学会
日本ワクチン学会
日本ウイルス学会
日本細菌学会
日本臨床ウイルス学会
日本産婦人科医会
日本婦人科腫瘍学会

これら国内外数々の団体が「子宮頸がんワクチン接種による利益が、リスクを上回り、推奨されるべきものである」との見解を示しています。
ワクチンで子宮頸癌を予防できたという効果は、対象者が疾患に罹患しないため実感できません。しかし、ワクチン接種後によって何か体調に変化があった場合はワクチンのせいであるという実感が強く出てしまいがちであり、これが過剰に報道されているという実態があると思います。

ワクチンに限らず、どんな薬でも一定の割合で副作用は存在するものであり、そのなかにはごく稀だけども重篤なものも含まれます。これは風邪薬やサプリメントなどでもいえることです。
大切なのは、利益とリスクを適切に比較し、理解した上で判断をするということです。

以上が子宮頸がんワクチンについての解説となります。

みなさんに正しい情報が伝わり、将来防ぎ得た子宮頸がんになって辛い思いをする患者さんが一人でも減るようにこれからも発信していきたいと思います。

Text/赤池智子
医師、内科/皮膚科医。内科認定医。2006年準ミス日本。
患者の視点に立った医療を行うことを何よりも大切にし、日常診療を第一に論文執筆、学会発表、セミナーなど、精力的に行っている。
2006年準ミス日本の経歴も生かし、女性ならではの視点から正しい医療知識に基づいた女性の病気、健康、美容に関する情報も発信し定評がある。
https://www.facebook.com/tomoko.gunji


この記事のライター

医師、内科/皮膚科医。内科認定医。2006年準ミス日本。 患者の視点に立った医療を行うことを何よりも大切にし、論文執筆、学会発表と共に日常診療を第一に行っている。 2006年準ミス日本の経歴も生かし、女性ならではの視点か...

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