女を磨く離婚道 #8 離婚後の未来を切り拓くのは「懲りない女」
事実婚を含め、二度の離婚を経験した作家の島田佳奈さん。「幸せな人生を歩むために離婚を選んだのだし、離婚したからこそ再婚だってできる」。その前向きさが次にもっと、幸せな未来を引き寄せているのかもしれません。
日本の法律でいうところの結婚とは、戸籍を同一のものとする夫婦生活のことを指す。その定義に乗っ取れば、私の結婚歴は1回である。しかし離婚は2回経験している。それは、戸籍が動かなかった「事実婚」という形態の暮らしを長らくしたことがあるからだ。
別れはいつだって悲しい。特に(事実婚も含め)結婚という「公に祝福されて夫婦として暮らした」相手との決別は、その後の生活が一変するほどの影響力があるせいか、長年におよび引きずってしまう。
「何がいけなかったのか」「どこで歯車がずれてしまったのか」わかったところで、終わってしまった関係を修復することは不可能だ。
ただの恋人同士ならば、復縁する未来を描くこともできるかもしれない。だけど結婚ほど深く関わった相手とは、さすがに難しいと私は思う。
■28歳で離婚、36歳で事実婚へ
最初の結婚(24~28歳)のとき、幼稚すぎた私は、妻の自覚なく奔放過ぎる振る舞い(浮気)をして、当時の夫をひどく傷つけた。
今思えば、元夫ほど私を愛してくれた男はいない。私が何をしても絶対に許してくれた彼を、その当時の私は罵倒した。彼の愛情表現さえも「気持ち悪い」と拒絶した。自分は間違っていない、おかしいのは彼だと決めつけ、打ちのめすほど傷つけてしまった。
大人として成熟した今の私ならば、元夫と結婚生活を続けていけただろう。だが、今さらその深い愛情に感謝しても、彼の個性を愛することができても「彼を傷つけた」という過去は変わらない。こぼれたミルクは元には戻らないのだ。
その後長いこと、私は「結婚に向かない自分」というレッテルを自身に貼りつけた。結婚したら簡単に離婚できない(してはならない)という経験も、再婚に対する抵抗を生み出した。幸い相手も離婚歴があり理解してくれたので、次の結婚は事実婚というスタイルを選んだ。最初の離婚から8年が経っていた。
■二度目の離婚、湧き上がってきたのは安堵感
それから7年後、私は二度目の離婚をした。
私は前回の離婚から学んだことに執着し、今度は「夫婦関係がうまくいかなくなっても別れない」選択をした。気持ちが離れてしまっても、家族として穏便にやっていけるのであれば、一緒に暮らしていけると信じていた。そうやって乗り越えた先にある「まだ見たことのない景色」に到達したい気持ちもあった。
たった3年半、しかも途中で別居している最初の結婚生活と比べたら、事実婚とはいえ7年半の年輪で新たに見えたことはたくさんあった。両家の両親や仕事関係者にも公認であれば、入籍婚とさほど違いを感じることはなかった。だが「離婚」だけは違っていた。
相手から離婚を切り出されたとき、私は憑き物が落ちたような気分になった。すでにお互い離れていた気持ちから目を背けていたことに気づき、悲しみより「これで終われる」という安堵感に、自分自身が驚いた。
■それでも、愛する男と暮らす幸せは格別のもの
荷物をまとめ部屋を出る──それだけで次の離婚は終わった。双方とも相手の親から話し合いや挨拶すら求められもしなかった。
籍を入れない関係の希薄さは、こんなところに露呈した。簡単すぎる手続きが、逆に虚しく感じた。
(入籍婚のときは、両家に出向いて話し合ったり離婚時に挨拶に行ったり大変だった)
最初の結婚における反省と学習は、次の結婚に少なからず生かされたとは思う。
だけど相手が違えば展開も異なる。ふたりの目指す未来が異なってしまったら、離婚するほうがお互い幸せだ。
離婚後の喪失感は、何度やっても慣れない。だけどやっぱり、愛する男と暮らす幸せはかけがえのないものだ。
幸せな人生を歩むために離婚を選んだのだし、離婚したからこそ再婚もできる。
二度離婚しても「次こそは」と前向きになれる自分は、懲りない女なのかもしれない。
Text=島田佳奈