「激しいセックスこそ最強」説を盲信する男たちへ。男優歴20年の僕が真実を伝えます
激しいセックス、潮吹きや激しいピストンは女性にとって気持ちいいもの……そんな風に思い込んでいる男性は少なくありません。でも、女性の多くが求めているのは、激しすぎるセックスではなく“ちょうどいいセックス”です。AV男優歴20年の僕が、AVから悪影響を受けてしまった男性に読んでほしいコラムをお届けします。
Twitterなどを見ていると、多くの女性が「AVをお手本にしないで」という声をあげています。過去にまぐわってきた男性から、潮吹きを狙った無鉄砲な指マンや、子宮口をまっすぐ貫いてくる激しいピストンを受け、セックス時に痛みをおぼえたトラウマがあるからでしょう。
セックスはシューティングゲームとは違います。クリトリスを16連射したところでゲームクリアはできませんし、高速指マンや高速ピストンを繰り出せば女性を必ず絶頂に導けるってわけでもありません。
「潮吹き=イク」という間違った方程式を信じてる男性もいますが、それもAVから悪影響を受けてしまった結果でしょう。
■激しいセックスではない? 女性が求める「ちょうどいいセックス」
結論から先に言いましょう。「ちょうどいい湯加減のセックスが一番気持ちいい」のです。ぬるま湯が好きな人もいれば、熱湯風呂に入るのが好きな人もいます。でも、大多数の人は40℃くらいの適温の湯船を好みます。
スローセックスが好きな女性もいれば、超絶激しいセックスを好む女性もいますが、だいたいの女性は「ちょうどいいセックス」を求めているんです。
なぜ、AV作品には「激しく見せるセックス」が多いのか。それは、視覚的に派手な方がユーザーに伝わりやすいからです。モザイクの向こう側をユーザーに見せることはできません。なので、モザイクの外側まで体液を掻き出して見せるという工夫がなされました。いわゆる「潮吹き」というやつ。
それと、画面を通したときに大きな動きの方が見ている人に伝わりやすい。だから、「激ピストン」という手法を使って、わかりやすい形でユーザーに伝えます。いわば、これらは画面の向こうに伝えるためのアクセントなのです(※)。
※いちおう説明しておくと、AVの中で繰り出されている前戯やピストンは、むやみやたらに激しく行なっているわけではありません。きちんとした技術論に基づいてやっています。確実に潮が出る箇所だけをピンポイントで刺激して、膣の下のフチ部分になるべく負担をかけないようにしていますし、子宮口に直撃して痛みを与えることがないよう、体位によって挿入角を工夫しています。
■まずは「女性が痛みを感じるリスク」回避から
女性は痛みをおぼえた瞬間、気持ちが急激に冷めてしまい、セックスに快感を見出せなくなります。痛みをなるべく回避することが一番の正解なのです。僕らAV男優はカラミの撮影が始まる前に必ず、女優さんにこういった質問をしています。
「苦手なプレイはある?」
「バックで奥が痛くなることある?」
「指でされたときに痛くなる箇所はある?」
「くすぐったく感じて、エッチに集中できなくなる箇所はある?」
セックスにおけるトラブルはだいたいパターンが決まっています。腟の会陰側のフチが切れて痛くなる。腟の奥への刺激が苦手。耳や首筋がくすぐったく感じてイライラが生じる……などなど。それらを回避するための質問です。女性は人それぞれ特性が異なるので、これらの質問を投げて相手の苦手部分を探ったうえでカラミに臨んでいます。
■イクとき、女性は「強すぎる刺激」を求めてない
話を戻しましょう。ちょうどいい湯加減のセックスとはどういうことか。オーガズムに達した経験のある女性に聞くと、女性はイクにあたって特別強い刺激を求めているわけではありませんでした。
セックス中、ちょうどいいポイントに良い加減の刺激が加わってくると、女性がオーガズムに達する前兆として自身の体の中に「イケそうになる波」みたいなものが現れます。その波がきたら現状維持の強さで、刺激するポイントをそのまま外さずに、一定のリズムで刺激を加えていけばオーガズムに達することができるようです。
このとき、変に勘違いをして刺激を強めたり、わざとピストンを加速したりすると、せっかくの気持ちよかった刺激に変化が生じてしまい、逆にイケそうな波を逃してしまうことになります。よかれと思ってやったことが仇となってしまうのです。釣りにたとえてみましょう。釣り針に大物がかかったとき、焦ってリールを急に巻いてしまうと釣糸は千切れ、せっかくの大物を逃がしてしまいます。釣りと同じく、オーガズムもじっくりと焦らず手繰り寄せましょう。
もう一度言いますが、的確な場所を見つけたら、ポイントをそこから外さず、一定のリズムで刺激を与え続けることが大事です。強めたり速めたりする必要はありません。
■「適切な刺激の強さ」を知る方法
刺激の強さについても書いてみましょう。男性は自分に置き換えてみるとわかりやすいはずです。
パンツを脱いだ瞬間、女の人からいきなりポコチンをむんずとつかまれ、マッハのスピードでシェイクされて発射に到れる自信はありますか? そんな雑な手コキをされながら、「イッてもいいよ」なんて言われた日には気持ちも激的に萎えると思います。
でも、これと同じことを男性は女性にしがちなんですよね。いきなりガシマン食らわせて、「イッてもいいんだよ」としたり顔で言う男性、世の中にはたくさんいます。相手の気持ちをおもんばかろうとしないから、こういった間違いをするわけです。
「女性に気持ちよくなってほしい」と願うのならば、自分の中に凝り固まった「こうやったらイクはず」という思い込みを、まずは全部捨ててください。
気持ちいいポイントや刺激の適切な強さをパートナーに逐一尋ねながら確認をとっていき、「女体を知ること」から始めましょう。「痛くない?」と相手に訊ける勇気を持ってください。
AV男優を20年続けている僕でも、未だ勉強の日々です。人の体は本当に奥が深い……。
画像/Shutterstock
※この記事は2019年3月25日に公開されたものです。
AV男優。1975年生まれ。大学を卒業後、つても何もなかったAV業界になんとか潜り込み、20年間一線で生き残り続ける。1999年にデビュー。男優業の他に監督業や執筆業なども。マッチョ系の見た目に反し、中身は文系人間。Webコ...