「私はもっとできる」なんて思わなくていい。がんばらない母になるススメ【chihiRo×小田桐あさぎ】
連載「お母さんはもっと自由でいい」では、ジルデコのchihiRoさんが、仕事と育児の両立を実現している女性と対談し、働くお母さんをもっと自由にするヒントを届ける企画。3回目では初の著書『嫌なこと全部やめたらすごかった』が人気の小田桐あさぎさんにお越しいただきました。
仕事はがんばりたい。でも、家族との時間も大切にしたい。子どもがいる女性なら一度は悩んだ経験があるのではないでしょうか。
ジャズバンド「JiLL-Decoy association」(通称、ジルデコ)のボーカルを務めるchihiRoさんもそんな女性のひとり。
第一線で活躍するアーティストであると同時に、家では1歳11カ月の娘さんのお母さんでもあります。
「音楽活動にもっと勤しみたいけど、家族との時間もしっかり持ちたい」。そんな葛藤を抱えています。
そんなchihiRoさんがホスト役となり、仕事と育児の両立を実現している女性にお話を伺う連載「お母さんはもっと自由でいい」。
3回目のゲストは、DRESSでもおなじみの小田桐あさぎさん。「したいときだけする育児」の記事が話題となり、2018年4月には初の著書『嫌なこと全部やめたらすごかった』(WAVE出版)を出版しました。幅広く活躍する小田桐さん流の仕事と子育ての両立のスタイルを伺います。
■小田桐あさぎさん
株式会社アドラブル代表取締役社長。魅力ラボ主宰
1983年札幌生まれ。出会って2週間の男性と2012年に結婚。第一子の妊娠中、「仕事も結婚も育児も無理ゲーじゃなく両立したい」という思いからブログを開設。独自の恋愛・家庭・仕事論が好評を博し、月間40万PVの人気ブログへ。コンサル依頼が殺到し、育児休暇中に起業、10カ月後に株式会社を設立。
誰もが持っている唯一無二の魅力を見つける長期講座は3年間で180名、セミナーは2000名以上が受講。
主宰するオンラインサロン「魅力ラボ」には300名の女性が在籍中。
2018年初の著書「嫌なこと全部やめたらすごかった」を出版、5週間で4刷と話題を呼んでいる。
■人に任せることで、自分がやることを手放していく
chihiRoさん(以下、chihiRo):あさぎさんの本を読んで、家事はしないとか、育児はしたいときにするなどの考え方や行動には、驚きながらも、もはや清々しさを感じました。本の帯にすべてが集約されていて、「結婚・育児・仕事の両立は無理ゲー」というワードは心に刺さりました!
小田桐あさぎさん(以下、小田桐):読んでくださって、ありがとうございます! 昔からワーママに対して暗いイメージしかなかったんです。朝から晩までバタバタして、自分のことはいつも後回し。どう考えても仕事と育児の両立なんて無理だと思ってました。
だから、妊娠がわかったときは恐怖しかなかったです。でも、産後に無理しないで過ごすことを徹底したところ、予想よりも「育児って楽だな」と思えるようになりました。
chihiRo:私は子どもにイライラするとかはないですが、バタバタはしてるなぁ。娘ともっと一緒にいたいのに、家事や歌づくり、経営する会社のことなどやることがたくさんあって……。あさぎさんはどのように時間を確保しているんですか?
小田桐:私も会社の経営をしていますが、スタッフに仕事をどんどん任せていますね。もし娘と一緒にいたい日があったら、「今日はよろしくね!」と伝えて休みます。chihiRoさんも誰かに任せて自分がやることを手放すと、お子さんと過ごす時間ができるはずですよ。
■「もっと自分はできる」と思うと、しんどくなる
chihiRo:うーん、私はどうも人にうまく任せられず、自分がやってしまうんですよね……。最近は私じゃなくてもいい仕事は頼むようにしてだいぶ助かっていますが、指示を出すのとか、最終的な判断は社長の私になります。だから、結局連絡が絶えず来る状態からは抜け出せないですね。
小田桐:chihiRoさんの中に「自分ならもっとうまくやれる」という気持ちがあるのかもしれませんね。でも、今すでにやることが多いとか両立が難しいなど無理を感じているなら、それがその人の限界なんです。
だったら人に振り分けるしかない。「今の自分の力ではここまでしかできないんだ」と認めることで、人に任せていけるようになるのではないでしょうか。
chihiRo:あー、それはあるなあ。仕事も家事も育児も、妻としても、みんなちゃんとしなきゃと思ってる。いろいろなことを完璧にやろうとして、余裕をなくしてしまっています。
小田桐:全部をひとりで引き受けて、すべてを完璧にこなすのは無理ですよ。私は夫はもちろん、家事代行やベビーシッターさんなど外注も活用しています。
■伝え方ではなく、相手の考えを聞くのが大事
chihiRo:あさぎさんは、泊まりがけの出張や友人との旅行などをされることが多いかと思います。ご主人にはどんなふうにお子さんのお世話をお願いしているのでしょうか?
小田桐:「私はこうしたいのだけど、あなたはどう思う?」というふうに、夫の考えを聞きます。よく「あさぎさんはご主人にどのような伝え方をしているの?」と質問されるのですが、大切なことは伝え方ではなく、相手の言い分を聞くことです。
たとえば私が2泊3日で出張に行きたいと思ったとします。私はまず、「娘を実家に預けたほうがいいかな?」と夫に聞きます。そこで夫が「大丈夫、僕がみるよ」と答えたら、夫に娘を任せて私は出かけるわけです。
chihiRo:これは参考になるなぁ。仕事だからといって、こちらの都合を押し付けてしまいがちだけど、それでは相手も良い気分にはなりませんよね。お互いの気持ちを確認し合うコミュニケーションって素敵です。きっと夫婦仲も良いんだろうなぁ。お子さんからしても、両親が仲良しな方がいいですよね!
小田桐:それはもちろんです! 子どもが生まれると、どうしても子ども中心の生活になりがちです。でも、子育て中だからこそパートナーシップの重要度は高まると思います。夫は会社員で忙しい毎日を送っていますが、その中でも月2回はデートする日を設けていますよ。
■「なるべくこれをした方がいい思考」が育児を苦しくする
小田桐:子育てが辛いと話すお母さんたちの頭の中には、「なるべくこれをした方がいい」という考えがたくさんあると思うんです。
なるべく添加物がない方がいい、一緒にいた方がいい、テレビやiPadを見せない方がいいなど。挙げていったらキリがない。未来が不安だからその不安の芽を潰そうとする、こういった「ノーリスク志向」が、お母さんたちのやることを増やしていくのではないでしょうか。
いろいろなことを詰め込もうとすると、大切なことがブレてしまう。それは私のブログ発信でも同じだし、chihiRoさんにとっては曲作りでも言えることじゃないですか?
chihiRo:そうですね! 曲作りではテーマを決め、それに沿って書いていかないと、ぼんやりした仕上がりになってしまう。子育てでも同じなんですね! いろいろと詰め込んで大切なことがブレると仰いましたが、あさぎさんが大切にしていることとは何ですか?
小田桐:子どもがしたいことを邪魔しないことですね。親の価値観を無理に押し付けるのって、良くないと思うので。
もちろん、ダメなことはきちんとダメだと伝えますが、基本的には娘を信頼し、彼女の自主性に任せる方針です。人によっては私の子育てがいい加減にやっているように見えるかもしれないですが、さまざまな本を読んで、専門家の話を聞いたうえでしていることです。
人の目や周りを気にせず、お母さんたちが自分の考えをしっかりと持つことが大切です。
■子どもの捉え方で、それは愛にも毒にもなる
chihiRo:お話を伺っていると、お嬢さんにはあさぎさんの愛情が深く伝わっているように思います。
小田桐:愛情が伝わっているか、と私は考えたことがないんです。そもそも、愛情って受け取る側次第なところがありませんか? 親がどんなにがんばって何かをしたところで、子どもがそれを「愛情」と捉えるかはわかりません。
私の母は元保育士で子ども好き、おやつまで無添加の手作りで、めちゃめちゃがんばるお母さんでした。それは間違いなく母の愛情だったはずです。
でも小さいころの私は、母の愛とは思えなかった。それどころか、怒られた記憶がとても多いんですよ。粘土でお団子を作ったことがあるんですが、形が母好みじゃなかったために注意されました(笑)。
「これをすれば子どもに愛情が伝わる」なんてことはないんです。母は私を育てるときにがんばりすぎて、ノイローゼになったと後に話していましたよ。そういうことからも、親は必要以上にがんばらないことが大切だと学んだんです。
chihiRo:あさぎさんの言葉の一つひとつが心に響いて、もっと迷いを捨てようという気持ちになりました。ありがとうございました!