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目が離せない男、竹下幸之介

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『DRESS』編集長の池田園子です。今の自分が会いたいと思う人に会いにいき、生きるヒントをもらう――そんなシリーズ初回では、DRESSプロレス部 部長補佐も務める池田がプロレスにはまるきっかけをくれた人のひとり、DDTプロレスリング・竹下幸之介さんが登場。誰にもあるプレッシャーがつらい時期を彼はどう乗り越えてきたのか。

目が離せない男、竹下幸之介

こんにちは。『DRESS』編集長の池田園子です。今の自分が会いたいと思う人に会いにいき、生きるヒントをもらう――そんなシリーズを始めます。

初回はプロレスラー。編集長 兼 DRESSプロレス部 部長補佐でもある私はプロレスが好きです。1年をならすと月2回はプロレス会場へ足を運び、ときには地方遠征もし、プロレス関連のネットサービスと多数契約し、家でもプロレスにふれています。

その面白さや魅力をまだプロレスを見ていない人にも伝えたいと、プロレスにかかわる連載を企画することも。そんな風に、プロレスという分野に熱くなるきっかけをくれた人物のひとりが、DDTプロレスリングに所属する竹下幸之介選手(以下、敬称略)でした。

2016年5月29日の後楽園ホール。プロレスという競技及びDDTプロレスリングを初めて観戦した日です。メインイベントという最も注目される戦いに立ったのが竹下でした。公式情報によると187cm、99kg。恵まれた身長と緩みのない鍛え上げられた肉体。日体大に通う現役大学生(当時3年生)で、プロレスと学業を両立している。

DDTプロレス観戦【DRESSな女の初体験 #1】

https://p-dress.jp/articles/1825

プロレスブーム再燃か、といわれる昨今。プロレス好き女子(通称:プ女)も増えているという。実際どんなものなのか、『プロレスという生き方』を読んで気になった編集長・池田がDDTプロレスの興行を観戦してきた。

なんかすごい若い人がいる。この人の戦いから目を離してはいけない。プロレスの知識をほとんど持たないながらも体の奥が疼いて、そう思って静かにリングの中を見つめていました。一つひとつの攻撃の重さや筋肉の鎧を身につけているとは思えないほど俊敏性の高い動き、痛みに堪える姿、鬼気迫る表情……全部ひっくるめて、プロレスってすごいなと圧倒されたのです。

21歳の誕生日を迎えたその日、竹下はチャンピオンになりました。KO-D無差別級王座というベルトに挑戦し、最年少戴冠記録を作ったのです。初めてプロレス観戦をする私の目の前で。

■純粋で早熟な少年は、プロレスラーになるために生きてきた

すごいプロレスを見せて、ド素人の心を揺さぶった竹下の“プロレスファン歴”は長い。プロレスオタクと言っても過言ではない。

「プロレス好きな両親がアントニオ猪木さんのビデオを借りて見ていたのを2歳の僕は横から興味津々で見ていたらしいです(笑)。自分では覚えてなくて、親から言われたんですけど。それがプロレスファン人生の始まりです。小学生になるとケーブルテレビで試合を追い、レンタルビデオ店のビデオは制覇し、ひとりで観戦にも行き……とプロレスを見飽きるくらい見すぎてて、どんな試合の展開も読めてしまうというか。いい意味で期待を裏切る展開の試合を見せてくれる選手もいなかったから、自分がプロレスラーになるしかない、新しいプロレスを作るしかない、って決めたんです」

固く決意した後の竹下の行動力は、小学生とは思えないほど大人びている。自らの意思でレスリングを習い始め、小学校を卒業するタイミングで、全プロレス団体へ履歴書を送った。小学生が書いた履歴書を担当者はどういう気持ちで読んだのか――。

「いたずらだと思われたでしょうね。どこも相手にしてくれませんでしたが、唯一DDTだけが入団テストを受けにこいと返事をくれたんです。ただ、入門はできず、中学の部活で実績を残して卒業してからもう一度来い、と言われました。何でもいいので部活で実績を上げていれば、入団しやすくなるからと」

中学の部活で竹下が選んだのは陸上。レスリング出身者が多いプロレス界で、陸上というキャリアは珍しいほうだ。砲丸投げからスタートし、ひとりでいくつもの競技を行い、総合得点を競う混成競技で全国大会へ出場し、最高で3位入賞する実績を上げた。陸上競技には多種多様な種目があり、それぞれを身につけると最強のレスラーになれる――竹下は一貫して合理主義だ。ムダなことを嫌い、逆算して物事を考え、実行していく姿勢は今も変わらない。

■一番になると、気持ちが楽になる

DDTでのデビューは17歳、高校2年生の夏。

「高1のとき若手選手向けの練習に参加できる機会があって、そこで基礎的なことが全部できたんです、なぜか奇跡的に。10年以上続けてきたイメトレとプロレスごっこのおかげでしょうね。デビュー当日まで部活しかしませんでした。合同練習に参加したのは、最初の2回くらいですね」

20代前半でデビューするレスラーが多いなか、17歳は目立って若い。周りより5年ほど「巻き」でプロレス人生を歩み始めることになる。たとえば大卒でプロレスラーになる人の場合、「デビュー15周年」を40代半ばくらいで迎えるが、竹下は32歳で15周年を迎えることになる。「僕の運気が一番いいのって32歳の年なんです。ふふ。大きく動きますよ。そこまで効率よく過ごします」。

それにしても、「現役高校生レスラー」は話題性が高かった。プロレスファン歴=ほぼ実年齢で、プロレスラーになるために習い事や部活を選び、人生計画を戦略的に立てて一つひとつクリアしてきた竹下の身体能力やプロレスセンスも相まって、スポーツメディアは竹下を「プロレス界の未来を背負う」「若手ホープ」と表現した。

あの頃が周りからのプレッシャーがキツくて、精神的には一番つらい時期だったと竹下は振り返る。最年少チャンピオンになった2016年5月〜現在までと比べても、断然当時のほうがしんどかったと。周囲からのあまりにも大きな期待を受け、それに応えようと奮闘するのに、「まだ早い」「まだ若い」とはしごを外される。メンタルのケアまで心を砕く余裕のない10代半ばの少年には、「わけわからん」「どっちなん」と戸惑うしかない状況だった。

人知れず苦悩のときを過ごした後にチャンピオンになり、一度はベルトを手放したものの、再びベルトは竹下のもとへやってきて、10回に渡って防衛している。名実ともに「最強」となった今を、竹下は「壁をぶち破れた」と表現する。

「チャンピオンなので一番は一番。今一番強いのは僕、っていう。僕がチャンピオンなのが不満なら、誰かが挑戦しにくればいい。ただ、それだけですよね」

■「エリート」呼ばわりされることへの違和感

若くしてトップに上った竹下には次なる夢がある。プロレスという競技を上のレイヤーに持っていくことだ。残念ながら、今テレビやラジオなどのスポーツニュースで、プロレスの報道は一切されない。同じ格闘技ジャンルのボクシングは放送されるのに、だ。

「僕、筋肉が好きで、ジムに行くのも好きなんですね。で、トレーニングの様子をSNSにあげると、竹下はすごいとか練習がんばってるとか言われるんです。でも、それに対して違和感しかない。たとえば五輪選手や野球、サッカー選手が同じことをすると、何も言われないと思います。アスリートがトレーニングするのはあたりまえだって思われてる。その差を考えるとプロレスが他のスポーツとは違う目で見られているし、ステージが違いすぎるなと感じるんです」

メディアが竹下を形容する言葉は偏っている。度々「アスリートプロレス」「エリート」と表現されているのを、実際どう感じているか尋ねると、竹下は少し不愉快そうに「エリートって何? と思いますよ(笑)」と言った。

優秀なプロレスラーを育成する名門校もプロレス界のエリートコースも存在しない。ただ、真摯にトレーニングを重ね、鍛え上げられた肉体を有し、試合で確かな結果を出し、順風満帆なプロレス人生を歩んでいるように見えると、エリート扱いされる。裏に戦略的な考えのもとに重ねられた努力のときがあるのに、そのプロセスをスルーして「エリート」と一言でまとめられる。

「『竹下はサイボーグすぎて感情移入できない』とよく言われます。でも、強いものは強いから仕方ないし、生まれながら強いわけじゃなくて、プロレスラーになりたいと思ってから今まで、強いレスラーになるための過程を踏んできた。負けてばかりのレスラー、弱いレスラーを見て感情移入するのも自由ですけど、強いレスラーがいないとプロレスという競技自体が舐められちゃうから。それに、感情移入できるかどうかばかりにフォーカスしていると、プロレスがメジャースポーツに勝つ日は来ません。野球とかサッカー選手を見て、感情移入できたかどうかなんて言わないですよね(笑)」

すべてはプロレスのため。「プロレスラーはリング上で生き様を見せる、ってよく言われるけど、意識して見せられるものじゃない」と言う竹下だが、見る者は確かに生き様を感じ取っている。幼少期からここまで筋が通った生き方を続けてきた彼は何かを超越している。

3月25日のビッグマッチを控え、「会場に来て席についたらそこからの3時間ほどは、映画を観るような気持ちで、自分が好きなように感じ取りながら見てほしいです。193cm、135kgの巨体を持つ石川修司選手の挑戦を、187cm、95kg(2018年2月22日時点)の僕が受けます。どっちがチャンピオンかわからないくらい体格差があります。日常生活ではまず見ない光景じゃないですか。CGみたいな試合をするので、現実逃避をしにきてください」

Text/Photo=池田園子
試合写真はDDT提供

竹下幸之介さんプロフィール

DDTプロレスリング所属のプロレスラー。1995年5月29日、大阪府大阪市生まれ。2012年8月18日デビュー。KO-D無差別級王座他、数々のタイトルを獲得。2018年3月に日体大卒業。https://twitter.com/Takesoup

東京・両国国技館「Judgement2018~DDT旗揚げ21周年記念大会~」

日時:2018年3月25日(日)開始15:00
会場:東京・両国国技館
http://www.ddtpro.com/ddtpro/49902/
*今大会はAbemaTVでも生中継! 会場に来れない方はぜひそちらをご覧ください!
https://abe.ma/2rUvy1F

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池田 園子

DRESS編集長。楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは人間の生き方や働き方、性、日本の家族制度など。趣味のひとつはプロレス観戦。DRESSプロレス部 部長補佐を務める。著書に『はたらく人の結...

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