発信者は「万人に好かれよう」と思わなくていい【ジルデコchihiRo×渋木さやか】
ジャズバンド「JiLL-Decoy association」のボーカルを務めるchihiRoさんがホスト役となり、同じく「ものづくり」に携わる方を招き、ものづくり、クリエイティブをテーマに語らう本対談企画。第5回では、ヨガライフアドバイザーの渋木さやかさんをお招きしました。
ジャズバンド「JiLL-Decoy association」のボーカルを務めるchihiRoさんがホスト役となり、同じく「ものづくり」に携わる方を招き、ものづくりやクリエイティブをテーマに語らう本対談企画。
第5回の今回は、ヨガライフアドバイザーとして活動し、ヨギー(ヨギーやヨギーニ)の間で高い人気を誇る渋木さやかさんが登場。
渋木さんが提供するのは、ヨガの体験やリラックスした時間です。対して、歌で聴く人を魅了するchihiRoさん。「形のないものづくり」をするふたりの会話は、どのように展開されるのでしょうか。
■何それと言われても、「私はヨガライフアドバイザーです」と発信し続けた
chihiRoさん(以下、chihiRo):ヨガライフアドバイザーというのは、私は初耳だったのですが、もともとあった職業なのでしょうか? あと、なぜそれをしようとしたのか気になります。
渋木さやか(以下、さやか):いえ、私のオリジナルです。ヨガは長く続けていくと、心身に良い変化が見られるんです。その体験をもっと伝えたいと思い、「やろう!」って。
ヨガの哲学は、何千年も前から脈々と受け継がれてきたものです。伝統的なものは素敵ですが、現代に生きる私たちには適用できないこともあります。私個人の経験を交えながら、ヨガの哲学をわかりやすく伝えられたら、という想いで活動をスタートしました。
chihiRo:素敵ですね。具体的にはどんなことを発信しているんですか?
さやか:恋愛関係や人間関係に関することが多いです。私自身も悩んできたことなので、ヨガの教えを交えながらコラムを書いています。
chihiRo:それまでなかったものを作り出すのは大変ですよね。どうやって活動を広めていったのでしょうか?
さやか:周りがどう言うかを気にせず、「私はヨガライフアドバイザーです」と発信し続けました。「何それ?」と突っ込まれても気にしない(笑)。
ひとりが複数の肩書きを持って働く「スラッシュキャリア」があると聞いて、私もやってみようとスタートしました。SNSで誰でも自分のやりたいこと、やっていることを気軽に発信できる時代なので。
■伝統的なヨガの教えを現在の私たちに合うように伝える
chihiRo:伝統的なものを伝えるときに、さやかさんが独自の表現をすることはできるんでしょうか。音楽で言うと、クラシックを演奏するときには、昔からの音を忠実に再現することが正解とされています。ヨガでも同様なのかなと思って。
さやか:古くから語り継がれているものを壊していけない、自分の考えやフィーリングを入れてはいけない、という考えはありますね。
でもどんなに素晴らしい教えでも、今の私たちの生活に活かせなければ、あまり意味がない。たとえば、古典を原文で伝えても多くの人には意味がわからない。でもその作品には肝になる要素がある。それを私自身が「媒体」になって、たくさんの人に伝えられたらいいと思っています。
chihiRo:そうですよね。私はオリジナルを生み出すことに価値を感じて音楽を作っているので、昔からの音を忠実に伝えるというやり方には少し戸惑いを感じます。
さやか:伝統を守ろうとしすぎると、作品や考えの良さを感じてくれる人の幅が狭まってしまうように思うんです。ヨガの教えを、恋愛や人間関係のような日常の経験に交えることで、ヨガをやっていない人にも良さを伝えられるようになりたい。この対談のように、私のビジョンや活動をお話ししたり、コラムを書いたりして、ヨガの教えに興味を持つ人が増えるきっかけになりたいです。
■自分と合わない人がいるのは仕方ない
chihiRo:さやかさんは「すべての女性を幸せにするのが夢」とおっしゃっていますよね。私も自分の歌を聴いた人が幸せになってほしいという想いを込めて曲を作るのですが、図らずも誰かを不快にさせてしまうこともあります。
作品の中に、自分の「こうしたい」という想いをどれくらい入れたらいいか、悩んでしまいます。中には「自分の想いは商品化には不要で、お客さんのことだけを考えればいい」という考えもありますが、私は絶対できないなって……。さやかさんは、自分の想いを抑えて活動することはあるのでしょうか?
さやか:どうすれば自分の発信をわかりやすく伝えられるかは常に考えています。ただ、ウケがいいかどうかは、レッスンを受ける人や自分のコンディション、それに天候などにも左右されます。私はできる限りの努力はするけど、それでも自分の考えに合わない人がいるのは仕方がないこと。すべての人に好かれるのは難しいですよね。
ヨガではプラーナ(エネルギー)の交換という考えがあります。この対談でもchihiRoさんとエネルギー交換をしているんです。不快になる人は、単にエネルギーが合わないだけ、たまたま自分と合わない人がいるんだ、と考えるようにしています。そう思うと、だんだんと気にならなくなりました。
chihiRo:そういう考え方、身につけたいなぁ。
■今の自分だからできることがある
chihiRo:メンタルの話題に関連して、お聞きしたいことがあります。私は喉の調子がおかしくなるなど、30代半ばから体調を崩すことが増えました。自分では精神的な問題もあるのかなと思っているのですが……。
さやか:出産した影響もあるんじゃないですか?
chihiRo:それはあると思います! 出産を機に不調から抜けられると思っていたのですが、体の変化に自分が対応できていない気がします。
さやか:子どもを産むわけですから、産前とは別人になったと考える方がいいかもしれません。私も未だに骨盤が元に戻らなくて、昔できていたポージングができないこともあります。今の自分の状態を受け入れると楽になると思うんです。ヨガは「今」を大事にしますから。
chihiRo:わかります! 昔の音源を聴いて、「楽々とこの音を出せていたんだな」とか思うことがある。
さやか:ヨガのバランスのポーズでの話ですが、目的は揺れない体を作るのではなく、「ブレながらも元に戻れること」を覚えることなんです。最終的に自分が心地よいと感じるポイントに落ち着けばいい。
「今の私が求められること、今の私に見合う場所がある」と思うことで、気持ちは楽になりますよ。
chihiRo:それを聞いて、けっこう楽になりました(笑)。ありがとうございます!
■そのときに感じた「想い」を持って帰ってもらう
chihiRo:私たちは経験や時間を売っているじゃないですか。実はときどき、買って持ち帰れるようなモノを作った方が、お客さまに充実感を持ってもらえるのかな、と思うことがあります。目に見えないモノを提供する人間として、ファンの方やお客さんの心をガッチリとつかむ秘訣って何だと思いますか?
さやか:人は何をしたかという記憶より、「こんな体験をして楽しかった」とか「気持ちよかった」とかの感情をよく覚えていると思うんです。そうした思いを持ち帰ってもらうことが大切なのかなと思います。
chihiRo:その気持ちを長く持続させるどうすればいいのでしょう? 他のミュージシャンのライブに行くと、そのときは「また来よう」と思えるのに、少し経つとその感情を忘れてしまう。
さやか:定期的にファンの方と接触するのがいいのかな。chihiRoさんなら、ライブの本数を減らしてファン交流会を多くするとか。お話ししていると素敵な方だから、また会いに行きたいと思うのでは。
人はどんなに辛いことを経験しても、同じ気持ちをずっと抱き続けることはできない。それは楽しい経験でも同じです。毎日さまざまなことを経験するので、何でもかんでも抱えたまま生きられないわけですから。
chihiRo:なるほど。実は私、人の顔を覚えるのが得意で、自分から話しかけにいくんです。それっていいことなんですね! 今日もものづくりのヒント、ものづくりをしながら生きていくヒントをたくさんいただいた気がします。本当にありがとうございました。
(完)
文・写真/薗部雄一
渋木さやかさんプロフィール
ヨガ講師 / ヨガライフアドバイザー。
全国のヨガイベントに欠かせない、とびっきりの笑顔とユーモアを兼ね備えた人気ヨガ講師。
また、ヨガライフアドバイザーとして「恋愛とヨガ」をテーマにヨガ哲学の知識と経験を活かし、講演、コラム執筆や取材など活動中。その言動は人間関係や恋愛で悩む女性たちから熱い支持を受けている。
2016年に出産後、鎌倉で海のある子育てライフスタイルがさらに注目を集める。
夢は全ての女性を幸せにすること。息子とインドを旅すること。
アンバサダーlululemon、sambazonなど。
Instagram「#ヨガメモbysaya」でヨガの哲学を交えた人間関係や子育て、
恋愛関係のアドバイスを発信中 ▶︎ yoga_citta
「女子デコ夜会 vol.3 feat 渋木さやか」開催のお知らせ
■日程
2018年3月20日(火)
■時間
OPEN 19:00 / START 20:00
■会場
#802 CAFE&DINER 渋谷店
東京都渋谷区宇田川町28-3 クロスアベニュー渋谷 8F
※席数:40席限定 !!
■LIVE
JiLL-Decoy association (アコースティック編成)
■Talk Session GUEST
渋木さやか
■司会
高橋マシ(SLD Entertainment. Inc / 夏びらきFES)
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■TICKET:
<前売>¥3500
<当日>¥4000
※ お一人様一品以上のご注文をお願い致します。
※ お席はご予約をいただいた順番に見やすい席をご用意しており、すべて指定席となります。
お席の場所のご指定は承れません。
※ 前売券が完売し次第、当日券の販売は致しません。
【 Peatix オンラインチケット販売 】
https://180320joshidecoy.peatix.com/
※ Peatixでの事前決済のみとなります。上記URLのPeatixのサイトから販売致します。
※上記URLページはチケット販売時刻と同時に公開となります。
※チケット購入後のキャンセルやご返金は承っておりませんのでご注意ください。
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