なぜ築地移転は必要だったのか・前編〜食文化遺産(グルメ)としての築地

なぜ築地移転は必要だったのか・前編〜食文化遺産(グルメ)としての築地

築地の移転が2018年10月11日に決定しました。築地の場内市場移転はなぜ必要だったのか? 移転をめぐり、何が起こっていたのか? シリーズ「食文化遺産(グルメ)としての築地」では、前後編に分けて、「食文化の継承と発展、保全」との観点から解説します。


築地の移転が今年の10月11日(木)に決まりました。
それに伴い、築地場内市場最終営業日は10月6日(土)となります。

築地から豊洲への引っ越しスケジュールは、10月7日~10月10日の4日間。
東京都によると、業種の異なる事業者900社(2トントラックで5710台分)が一斉に引っ越しを行うため、環状二号線の暫定道路を利用し、引っ越しができるよう調整中であるということです。

築地の場内市場移転はなぜ必要だったのか? 移転をめぐり、何が起こっていたのか?
シリーズ「食文化遺産(グルメ)としての築地」では、前後編に分けて、「食文化の継承と発展、保全」という観点からお話しします。

■「食文化遺産」である築地

築地は都市の食文化遺産です。いわゆるグルメ。

都市の文化遺産には、必ず行政が関わっています。
築地の場合は東京都が土地の所有者です。

しかし行政とは、予算を計上するために議会を通さなければいけません。
上下水道に道路、地下鉄、保育園、公園、ゴミ出し……地方自治体の予算はすべて、議会を通じて決済されます。生活インフラには少なからず議会、つまり政治が関連しているというのは重要な事実です。

しかも、外国人観光客が日本に年間2400万人訪れ、約4兆5千億円の経済効果があるなかにおいて、築地の金額規模は年間約20億円。決して悪い数字ではありません。

築地の食文化は、新鮮かつ品質の良い素材をプロの方たち用に提供していますが、そのために、たとえばターレー。
場内市場では、ターレーが歩行者より優先です。ターレー優先という法律があるわけでも条例があるわけでもないんですが、長い間のルールとして、それが商売に一番合理的であるということから、ターレーが優先となりました。

これも一種の文化なんです。
ターレーが走っていたら、歩行者は道を譲らなければならない。

■築地で問題になっているネズミたち

築地のマイナス面にも目を向けてみますと、昨年、場外市場で火災がありました。
大変燃えやすい、木造建築であり、そしてまた長屋のように密集している土地柄もあり、あっという間に火が回りました。

築地市場は、とても古いのです。
建築のありようも、1985年以降に定められた耐震構造建築ではないものが多い。震災や火災を想定すると、改善の余地はまだまだある築地市場なんです。

そして思いがけず予算を割いているのが「ネズミ対策」です。
ネズミはネズミでもドブネズミさん。お魚が好きなんです。
中央区では、ネズミ対策予算が年間2000万円を超えるくらいかかっています。

さて、昨年から世の中を大変騒がせてきた「築地市場移転問題」。
「築地」という東京の食文化の中心地が移転するという、都市文化遺産の視点から見ても、移転してしまうことにより、継承ができない、保全ができない、といった事態になるわけです。

■築地が移転することになった理由を改めて

そもそもなぜ移転するのか?
古い、狭いがために衛生管理が困難である。
ネズミの問題、製品の品質を維持するための冷蔵設備が狭すぎるために機能しづらい、こういった理由です。

理由は古い、狭いに尽きるんですが、この移転についてはそれぞれの自治体で視点が異なります。
行政というのは、どこも縦割りの組織です。横のつながりがとても困難。というのは予算の配分や管理が縦にながれるために、指揮系統がどうしても縦割りになる。移転に際しても、それぞれの関連区で考え方がまったく異なります。

築地を有する中央区の立場は、長い間、「移転は反対」という立場でした。
築地の食文化を継承発展させ、保全していく、という立場です。
しかし、ほかの自治体、たとえば豊洲を有する江東区、築地の土地所有をしている東京都が同じ立場であるとは限りません。

さらに、2020東京オリンピックパラリンピックの開催という大きな要素が事を複雑にしました。
まず、築地と同じ中央区の晴海に選手村が建設されることになりました。しかしこの晴海という土地、選手村というだだっ広い土地があっただけあって、全くの交通不便地域なんです。地下鉄がない、幹線道路がないからバスがない。選手村はできたけど、道路がない、ではどうにもならない。

というわけで、東京都は選手村に通じる「環状二号線」という道路づくりに予算を計上しました。
この「環状二号線」が築地市場の移転と大きな関わりを持つことになります。

なにかというと、築地が移転した、その跡地の地下にトンネルを掘り、築地から晴海に抜ける道路(環状二号線)を作るという計画がなされたのです。
つまり築地市場移転「ありき」、の上での環状二号線建設です。
これは、一昨年の11月に築地移転がなされた、という前提に立っての計画でした。

次回、「食文化遺産(グルメ)としての築地」後編では、「小池都政により移転が延期になったことで何が起こったか?」を詳しく解説します。

この記事のライター

地方議員であり、子育てママとして日々奮闘中。地元である東京都中央区では、自民党において戦後55年体制からたった2人目の女性議員(子育てママとしては唯一)である。 2017年は地方議員として活動しながら、子どもの「お受験...

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