北朝鮮弾道ミサイル――今こそニッポンのリアルな安全保障を考える【佐藤あつこ】
9月15日、午前7時4分に北朝鮮のミサイルが日本の領域に侵入し、襟裳岬の東、およそ2000キロに落下しました。ミサイルが日本の領域に侵入していたのは約2分。国際平和を脅かし、日本国民を恐怖に陥れる暴挙といえます。本コラムでは日本の安全保障について考えます。
■脅威の北朝鮮。対GDP防衛費は0.99%の日本
本日、9月15日、午前7時4分に北朝鮮のミサイルが日本の領域に侵入し、襟裳岬の東、およそ2000キロに落下しました。
ミサイルが日本の領域に侵入していたのは約2分。
国際平和を脅かし、日本国民を恐怖に陥れる暴挙であると思います。何とかしなければなりません。
私たちは、どうしたらいいのでしょうか?
■ニッポンのリアルな現状
今年3月に成立した2017年度の予算において、日本の防衛費は5兆1251億円となりました。前年度当初より1.4%上向きになり、5年連続の増加となります。
今日、Jアラートが発信された北朝鮮の弾道ミサイルへの対応策を見込んでの予算であり、ほかにも南西諸島の防衛を見込んでいます。
GDPに対する防衛費比率でみると、
1位:サウジアラビア 10.42%
2位:ロシア 5.32%
3位:アメリカ 3.29%
日本は、韓国、インド、フランス、中国、イギリス、ドイツに続いて10位です。
GDP比率:0.99%という1%にも満たない日本の防衛費。しかし、第二次安倍政権以来、国家安全保障会議と国家安全保障局を作り、武器輸出三原則を緩和しました。
第三次安倍政権下では、2016年に平和安全法制が施行され、集団的自衛権の改正という一連の流れを考えると、安全保障・防衛政策を含め、日本の安全保障には積極的な変化が起きているといえます。
■「戦闘行為」か「武力衝突」か? 南スーダンの自衛隊PKO活動
日本政府は、「戦闘行為」を「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し、または物を破壊する行為」と定義しています。
定義のなかにある「国際的な武力紛争」とは、「国または国に準ずる組織(国準と呼びます)間の武力を用いた争い」と解釈しています。
このため、2016年の臨時国会で、稲田元防衛相は南スーダンの反政府勢力は「支配領域や系統立った組織がない」ため、国準には該当せず、「戦闘行為」にはならないと国会で答弁しました。
しかし野党は、「武力衝突」ではなく、「戦闘行為」ではないかとの厳しい追求を続けました。
万が一、自衛隊がPKO活動における「戦闘行為」に巻き込まれると、海外での武力行使を禁じる憲法9条2項違反に直結してしまうためです。つまり憲法違反です。
仮定の話をするのは極力避けたいのですが、たとえ万が一、南スーダンでは「戦闘行為」が起こっていたとしても、それをあえて「武力衝突」と言葉を敢えて変えなければいけない理由あったとすれば、それが憲法9条2項にあるのは、勘のいい読者の皆様にはおわかりいただけるかと思います。
日本の安全保障における憲法9条2項の与える影響の大きさ、これはリアルな現実なのです。
■国連の安全保障政策はどうか?
北朝鮮の弾道ミサイルが北海道上空を通過したことを受け、安倍総理は「国連安保理の緊急会議を要請する」としました。
国連による北朝鮮への制裁が、どの程度ワークするのか。このことを私たちは冷静に見ていかなければなりません。
リアルな現実としては、国連の安全保障政策は、「五大国の一致がある場合だけ、国連の安全保障は機能し得る」としています。
そのなかで日本の安全保障はどうなるのか?
リアルな現実に対応するのは、日本と、同盟国であるアメリカです。
五大国という力により秩序を保つことと、国連を中心とした信頼と協力によって望ましい国際環境を情勢することを両輪として進めなければなりません。
しかし、今回の北朝鮮弾道ミサイルで顕著になったことは、パワーやプレゼンスよりも「協調」のみを重視して進めることは効果がないということも、現実ではないでしょうか。
そればかりか、「グレーゾーン事態」のような、自衛隊に防衛出動が命じられる「有事」ではないが、治安維持を担う警察や海上保安庁の能力では対処できない、しかし最も発生率が高いとされている事態に対応できないのではないかと考えてしまいます。
こうしたプレゼンスの変化を、安全保障でどう位置づけるかを、国会を含めて現実的に議論してほしいと心から思います。
子どもたちの未来を作り出すのは、今の大人たちなのですから。