スキンシップがもたらす3つの幸せ効果
心地よさを感じるスキンシップは親から子どもに対してだけでなく、大人においても大事なこと。心を込めたスキンシップをする側・される側共に感じる3つの幸せな効果をご紹介します。
■気持ちいいスキンシップから期待できる効果
親から子どもへのスキンシップの効果や重要性は広く知られていますが、大人においてもスキンシップが大事だと示す興味深い調査結果があります。
大人になっても毎日30分間、軽いマッサージをするなど、週に3回のスキンシップを強化したところ、4週間後のデータで、特に夫の仕事のストレスが低下し、血圧の安定化や愛情ホルモンと呼ばれる「オキシトシン」量の増加が見られたそうです。
ちなみに、オキシトシンは、タッチを増やしたから分泌量が急増するというものではなく、毎日5~10分間の短時間でも繰り返すことによって増えるのだとか。
【参考】桜美林大学リベラルアーツ学科 山口創『身体接触によるこころの癒し:こころとからだの不思議な関係』
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam/64/3/64_132/_pdf
■愛情ホルモン、オキシトシンとは
改めて「オキシトシン」について解説します。前述のように、オキシトシンは愛情ホルモンといわれ、脳内で働いて心を変え、血液中のホルモンとなって健康や体の成長に良い作用を与えます。
脳内でオキシトシンが神経物質として働くことによって、信頼関係や愛着を深め、ストレスに強くなり、幸福感を得られるようになるのです。
この愛情ホルモン、オキシトシンは、マッサージを受ける側だけでなく、する側のホルモンにも反応します。
なぜなら、オキシトシンは人に親切にしたり、感動したり、大事な人と支え合ったりするときにも分泌されるからです。
ドーパミンが短時間しか継続しない達成感だとすると、オキシトシンは長くゆっくり続く幸福感といった感じです。
つまり、C触覚線維を刺激し、オキシトシンを分泌することは、リラックス効果を高めるだけでなく、マッサージを受ける側・する側、両者の親密感を深め、幸福感を高める、とても素敵な方法だといえます。
かつて、オキシトシン=出産に関するホルモンという認識が一般的でしたが、後に信頼ホルモン、絆ホルモンと呼ばれるようになったのもそのためでしょう。
子宮を収縮させ陣痛を強め、お産を促し、産後は赤ちゃんに母乳を与えるための射乳ホルモンだったのが、ツラく苦しい出産の後でも、母性が芽生え、わが子を愛おしく抱きしめたくなる。
乳房が張って母乳をあふれ出させ、夜中に3時間おきの授乳ができるのも、愛しいわが子を守るため。オキシトシンは、人と人とのつながりを深める、奇跡のホルモンなのです。
■適度な圧をかけて5cm/秒でゆっくりマッサージしよう
皮膚には4種類の触覚の受容体があります。
*4つの重要な皮膚の働き
(1)外界からの刺激に対して体を保護する働き
(2)新陳代謝の終末産物を体外へ排泄する働き
(3)体温調節をする働き
(4)触覚・庄覚・痛覚・冷覚などの感覚器としての働き
そして最近、性質の異なる触覚受容体がもう一つあることがわかりました。
それが「C触覚線維」で、「触れて気持ちいいい」とか「触れられた感触が気持ち悪い」といった感情と関わりのある神経線維です。このC触覚線維が興奮するための条件とは、触れるものの速度と柔らかさ。
C触覚線維は、人の手でゆっくりと手を動かして、マッサージをするような刺激に反応し、愛情や嫌悪感などの感情が喚起されます(1秒に約5cmの速度が最もリラックス効果を得られるスピード)。
C触覚線維が興奮することで、脳内のセロトニン神経を活性化させ、オキシトシンの分泌が起きるとわかっています。
C触覚線維が存在するのは有毛の皮膚だけ(手のひら、足のひらにはない)。C触覚線維の情報は、脳で情動や自己の意識と関わる部位や、自律神経の中枢である視床下部に届きます。
撫でる圧力は強くかけるでもなく、皮膚をさするでもなく、適度な圧をかけることが重要です。このタッチでマッサージすると、脳内にオキシトシンが分泌される、というわけです。
■心を込めたスキンシップの効果
心を込めてスキンシップをする行為には、
・気持ちいい
・ストレスや痛みに強くなる
・幸福感を感じられる
という効果があります。
私はセラピストとしてこれらを意識し、フェイシャルやボディのマッサージをさせていただいていますが、皆さんにも大切な方と一緒に幸せになれる「撫でセラピー」をおすすめします。日常で取り入れてみてくださいね。