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【赤池智子 連載 #2】「がんを放置しなさい」理論は正しくない

近年、メディアで頻繁に取り上げられる「子宮頸がんワクチン」問題。それについて考える前に、「腫瘍」と「がん」の基礎知識をおさらいしましょう。

【赤池智子 連載 #2】「がんを放置しなさい」理論は正しくない

最近、日本でも子宮頸がんワクチンについてたびたび報道されているので、DRESS読者にも気になっている方は多いのではないでしょうか。
おそらくニュースの内容だけを、少し見たり聞いたりしただけでは、「がんを予防するはずのワクチンで、何か症状が出て逆に苦しむなんて!」と不安になられたり、怖くなったりしてしまった方もいらっしゃると思います。

では、最初にこのテーマを取り上げる前段階とも言える、ごくごく基本的な質問ですが、「子宮頸がんとは、どんながんであるかご存知ですか?」。
そしてさらに質問しますが「“腫瘍”と“がん”はイコールではないとご存知ですか?」。
これは今後取り上げる予定の乳がんについてお話する際にも大事な前提知識となるので説明していきますね。

■腫瘍のなかで、悪性のものが“がん”

日常診療でも、「~腫瘍ですね」というお話をすると、「それはつまり、がんということですか?」と聞かれることがあります。

広辞苑を見ると腫瘍とは「自発的に過剰増殖する細胞の集まり。良性のものと悪性のものとある」と書かれています。
わかったような、わからないような?
大まかなイメージでいうと、とにかく「正常とは違う」ものです。正常とは違う見た目で、違うように大きくなっていきます。
そして広辞苑の通り、腫瘍には良性腫瘍と、悪性腫瘍と呼ばれるものがあり、腫瘍のうち、悪性のものをがんと呼びます。
ですので、「腫瘍のすべてが、がんだというわけではない」のです。
たとえば、よく顔や体にある、私たちが「ほくろ」と呼んでいる昔から顔や体にあるものは良性の腫瘍です。
みなさん、そのままにしていると思いますが、特に大きな変化はありませんよね(逆に変化を認めた場合は病院を受診してくださいね)。

ほくろでいうと見た目は正常な細胞や組織とは違って、色が黒かったり濃かったりして、周りの肌の色とは明らかに違いますよね?
顕微鏡レベルで見ても、いわゆる周りの「正常な細胞」とは異なっています。
しかし、あとでお話するがんと比べると、異常に増殖したり、血流やリンパの流れに沿って遠い臓器へとどんどん広がったり(そういう状態を「転移」といいます)することは基本的にありません。

一方、悪性腫瘍すなわちがんは正常な細胞や組織をこえてどんどん増殖し、がんそのものが大きくなります。さらには、血流やリンパの流れにのって、遠く離れた臓器にも転移し、転移した先でもむくむくと大きくなっていきます。

■悪性に変わる良性腫瘍もある

2つの違い、イメージがわかりましたか?

また良性であっても、今後悪性になる可能性があるものもあります。その場合、手術や化学療法、放射線療法等の治療が必要になることもあります。見た目やレントゲン、CTなどの画像だけでは、良性か悪性かわからない場合は、「生検」といって一部をとってきて、顕微鏡でその腫瘍の顔つきを見て、悪いものかどうか判断するという「病理検査」を行うことがあります。

■治療方針はがんの性質やその人の状態で決まる

逆に、がんであったとしても、ゆっくりと大きくなるものであったり、あまり転移しないものであったりした場合、患者さんの年齢や全身状態を考えて、積極的に手術しないという方針を患者さんと相談の上でとることもあります。
たとえば、もう90歳近い方で、手術による負担を考えた時には手術以外の治療やそのまま経過を見たほうが負担は少ないだろう、というような場合です。

そのがんの性質(転移しやすいなど)、患者さんの年齢や全身状態などを総合的に評価して治療方針を決定していくのが一般的です。

■子宮頸がんや乳がんは放置してはいけない

今お話したようないろいろな状況で治療方針は変わってきます。DRESS世代のみなさんの場合ですと、たとえば妊娠中にがんだとわかり、出産まで待てそうであると総合的に判断して、出産後に手術を行う場合はあります。逆に待てないと判断し、治療を行うこともあります。

ただし、注意していただきたいのは、基本的にはDRESS世代の女性に生じるがん(子宮頸がんや乳がんなど)を放置して良いというのは間違っているということです。ネットでご覧になった方もいると思いますが、「がんを放置しなさい」という理論などは基本的に正しくはなく、今回のテーマの子宮頸がんもそうです。
ぜひ病院を受診してくださいね。

今回はまず「腫瘍」というものについて、また良性腫瘍と、悪性腫瘍であるがんとの区別についてお話しました。

次回は、子宮頸がんとは何かについて、お話していきます。
子宮には、子宮頸がんと、子宮体がんという大きく2つのがんが生じるのですが、その違いを実は知らないという方も少なくないようですので、しっかり説明していきたいと思います。

Text=赤池智子
医師、内科/皮膚科医。内科認定医。2006年準ミス日本。
患者の視点に立った医療を行うことを何よりも大切にし、日常診療を第一に論文執筆、学会発表、セミナーも行っている。
2006年準ミス日本の経歴も生かし、女性ならではの視点から正しい医療知識に基づいた女性の病気、健康、美容に関する情報も発信し定評がある
https://www.facebook.com/tomoko.gunji 

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赤池 智子

医師、内科/皮膚科医。アメリカ University of Washington皮膚科勤務。 患者の視点に立った医療を行うことを何よりも大切にし、論文執筆、学会発表と共に日常診療を第一に行っている。 2006年準ミス...

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