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主人、旦那、奥さん、家内……という呼び方、共働き時代には違和感

リクルートブライダル総研の「夫婦関係調査」によると、他人に話すときの配偶者の呼び方で女性の1位は「旦那・旦那さん」・2位が「主人」、男性の1位は「嫁・嫁さん」・2位は「名前」「家内」という結果。共働き時代に「家内、奥さん、主人、旦那」など、パートナーの呼び方に、少し違和感をおぼえませんか?

主人、旦那、奥さん、家内……という呼び方、共働き時代には違和感

来年度は見送られることになったものの、配偶者控除の廃止が話題になっています。配偶者控除は半世紀前に作られた制度で、男性の多くが正社員になることができ、右肩上がりの経済の中で会社から妻子を養う分の手当まで支給され、定年まで勤めることができた時代の産物です。

今や男性の終身雇用、年功序列といった戦後日本型の雇用形態が崩れ始めています。共働きでないと成り立たない世帯も増え、また労働力人口が減る中で女性の大学進学率も上昇しており、女性の能力や意欲も高まっています。心身ともに働くことができるにもかかわらず、就労を調整している女性たちにもっと働いてもらうために廃止が検討されていたわけです。

現在、廃止の議論には暗雲が立ち込めていますが、私がこの制度は基本的に見直していくべきだと思っているのは、女性の就労を増やす観点だけではなく、「夫は外で働き、妻は家で支える」という性別役割分業の固定観念が象徴的に埋め込まれている制度だからです。

■「主人」「旦那さん」という呼び方は、対等なカップルにそぐわない

主人、旦那さんという呼び方は時代に合っていない

社会の実態が変わっているのに、制度が変わらない。その制度に引きずられて、人々の意識が実態に追い付かずにいる――。もちろん、制度が変わればすべてがオセロの駒のようにひっくり返っていくというわけではありませんが、一つずつ見直していく必要があると感じます。

制度と同時に私たちの意識も変えていかないといけない側面もあると思います。言葉は言霊と言って、魂が宿るもの。言葉を使って仕事をしている身として、しばし気になるのがバリバリ働いている女性ですら夫のことを「主人」と呼んでいる人が意外といることです。

少し古いですがリクルートブライダル総研の「夫婦関係調査2011」によると“他人に話すときの配偶者の呼び方”で女性の1位は「旦那・旦那さん」、2位「主人」3位「お父さん・パパ・おとうちゃんなど」だそうです。

使っていらっしゃる方はあまり意識されていないだけなのだと思いますが、「主人」「旦那」はやはり男性上位の表現で、昨今の様々な意味での対等カップルにはそぐわないと感じます。「私の夫は」「パートナーが」といった表現のほうがニュートラルですね。

■「主人」という呼び方が定着して100年も経っていない

主人という呼び方が定着

少し調べてみようと、日本語の研究をしている知り合いに、『気になる言葉』(遠藤織枝、1987年、南雲堂)という本を紹介してもらいました。この本によると、妻が自分の夫のことを「主人」と呼び始めた歴史はそう古くないようです。

明治~昭和10年ごろまでは女中奉公などが「主人」と呼ぶ自分を雇っている人との区別をするという背景もあり、配偶者のことは「おっと(夫・良人など)」と呼ぶほうがむしろ主流。国語辞書の「主人」に夫の意味が一般的に載るようになったのも、昭和30年以降だということです。

主人が定着したのは戦後ということで、その背景まではこの本では言及されていませんでしたが、まさに戦後の男性稼ぎ主と専業主婦による雇用のモデルができた時代に重なりそうです。その後たびたび「主人と呼ばずに夫と呼ぼう」という活動が発生しているようですが、昨今、共働きカップルが増える中では本格的に時代遅れの表現になっていきそうです。

なお、相手のパートナーのことを丁寧に呼ぶときには「ご主人」「旦那さん」という表現を使わざるを得ないシーンもあるかもしれません。さきほどの本には「御良人」「夫君」「お連れ合い」なども出ていました。英語はファーストネームで呼ぶことが多く、敬語的な概念がない点も便利だなぁと思ってしまいます。私はお子さんのいらっしゃる方には「パパさん」とか「パートナーの方」「夫さん」など苦しまぎれの呼び方をしています。

■夫が妻を「嫁」を呼ぶのは誤用

他方、「この人イクメン! すばらしい!」と思っている男性へのガッカリ感が大きい、「妻の呼び方」は「嫁」です。先ほどのリクルートの調査では男性1位は「嫁・嫁さん」、2位は「名前」「家内」だそうですが、「嫁」に関しては完全に誤用です。嫁とは、舅、姑から見た「息子の嫁」を指しますから。あなたの妻はあなたの嫁ではありません。

こちらも悪気はなく照れなんかもあって使っているのだと思いますが、なんとなく上から目線のニュアンスが伴います。言葉は言霊。「家内」「奥さん」は「主人」と同様にもはや古いと思いますので「私の妻は」と呼んでほしいですね。

事実婚やLGBTカップルなど多様な家族のあり方が認知されるにつれ、もはや性別のニュアンスを入れない「パートナー」が主流化していくかもしれませんね。日本語では意外と「ツレ(連れ合い)」なんかがいいのかもしれません。言葉や制度から、さまざまな固定概念が崩せていけるといいなと思っています。

【編集部おすすめ】「男は仕事、女は仕事と家事」?

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「夫が南米に単身赴任になり、2か月ごとに通っては20日分のおかずを作って冷凍庫に入れるような生活を送っていたのですが、夫の理解を得て仕事に全力を割くことにしました」

※この記事は2016年10月26日に公開されたものです

中野 円佳

女性活用ジャーナリスト/研究者。『「育休世代」のジレンマ』(光文社新書)著者。東京大学教育学部卒業後、日本経済新聞社入社。金融機関を中心とする大企業の財務や経営、厚生労働政策などを担当。14年、育休中に立命館大学大学院先端総...

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