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「愛人をつくってもOK」ルールができるまで。浮気がバレた夫と、産後の妻が見つけた嘘のない世界

ひとことで“夫婦”と言っても、形はそれぞれ。『隣のフーフ』は、インタビューを通じてさまざまな“夫婦・家族観”を考える連載です。今回は、産後すぐに、夫の浮気を知ってしまった妻と、バレた浮気を辞める気はない夫、そのふたりが、どうやって関係を再構築していったのか、お話を伺いました。

「愛人をつくってもOK」ルールができるまで。浮気がバレた夫と、産後の妻が見つけた嘘のない世界

神保町の“芳賀書店”といえば、1936年から続く老舗書店。その三代目となる芳賀英紀(はが・ひでのり)さんと、妻の柚衣(ゆい)さんは、“愛人を公認する”カップルとして、一部では名の知られた存在です。

それぞれに愛人を認める際の基準はあるものの、なぜふたりさんは愛人を公認するに至ったのか、そこに葛藤はなかったのか――インタビューを通じてさまざまな“夫婦・家族観”を考える連載『隣のフーフ』、第5回です。

■出会いは名古屋のデリヘル。当時、柚衣さんは一目ぼれ、英紀さんには恋人が

芳賀夫妻。左が柚衣さん。右が英紀さん。

――まずはおふたりの馴れ初めを教えてください。

英紀さん(以下、英紀): 僕、出張で地方に行ったときは、絶対にデリヘルを呼ぶんです。その地方の地域性とかをリサーチすることが目的なので、「方言や訛りがある子が来たらラッキー」と思ったり。(プレイを)するしないに関わらずに、もうルーティンになってるんですね。それで友人と名古屋に出張に行ったときに、フリーで呼んだら当時デリヘル嬢として働いていた柚衣さんが来ました。それが最初の出会いですね。

――風俗店の従業員と客という、金銭が介在する関係から、始まったんですね。

英紀:その頃、僕は性に疲れていて、あまりセックスをしたくない時期でした。でもなんとなく、彼女と触れ合っていく中で燃えてくるものがあって。話してても楽しくて、LINEで連絡先を聞いて、別れた後に「ありがとね」と送ったんですけど、返事は返って来ませんでした。

柚衣:その頃、性に疲れていたのはわたしも同じで、もうセックスをしたくないし、このままセックスができなくなるんじゃないかって。偶然にもふたりとも、同時期にまったく同じ悩みを抱えていたんですよね。そういうふうに通じ合うものがあったせいか、芳賀さんに対しては、初めて会って話したときに、ちょっと特別な感情を持ったんです。基本的にわたしは、お客さんと連絡先を交換するってありえなくて。交換したとしても、いつもすぐ削除していたんですけど、実は彼と会ったときに、一目惚れしていたのもあって、珍しく残しておいたんです。

返事はしなかったんですけど(笑)。それでも「明けましておめでとう」みたいな日の出の画像を送ってきたりとか、まめにアプローチが来て。で、会ってみたいなと思って、半年後くらいに再会しました。

英紀:半年間も無視されてたのに、いきなり「今日会える?」って来たんです。仕事も全部キャンセルして、会いに行ったら「(今夜)泊まる場所がないです」って。

柚衣:その頃、わたしは名古屋から実家の横須賀に戻っていたんですが、母親とうまくいってなくて、あまり家にいたくない状態が続いてて。

英紀:僕はそれを聞いて「体を提供するので泊めてください」みたいなふうに感じちゃったんですね。それは嫌だわと思って、一緒にラブホテルに行ってハグだけして。もちろんラブホテル代は支払い、更に1万円を渡して「これは寝坊した時用にでもしてね」って、その日は帰ったんです。次に再会したのが2週間後くらいだったんだけど、「あの1万円は別で使っちゃいました」って言われて。
お母さんといるのが本当に嫌だったから、そのお金でひとりでホテルに泊まってたんですよ。それで全部使っちゃって。

英紀:彼女、そのとき携帯も止まりそうだったから、携帯代も払ってあげて。そこから定期的に安めのビジネスホテルをとって、頻繁に会うようになったんです。ただ、当時僕は、同棲をしている彼女もいて。

――柚衣さんは、その当時、英紀さんにどのような感情を持っていたんですか?

柚衣:私は彼が当時同棲していた彼女が本命であっても、彼の近くにいれればいいやと思ってたんです。

英紀:そうなの?

柚衣:そりゃそうだよ。一番になれればいいなぁって感じはありましたけど。

英紀:僕は柚衣さんと再会したときから、同棲相手とはどうやって別れようかっていう考えしかなくて。なんとか別れることのできたときに「付き合おう」って告白して、親を紹介しました。

――そこは誠実というか、いわゆる“本命の彼女”と“それ以外”を、きっちりさせるタイプなんですね。

英紀:はい。そこは崩さないです。

■出産してから2カ月後、ラブホテルのポイントカードで浮気が発覚

――とはいっても、同時に多数の女性と関係を持ったことで、これまで揉めたことってないですか?

英紀:以前は浮気していることを、堂々と言ったりはしていなかったので、付き合っている彼女と揉めたことはないです。が、彼女以外の女性が「なんで一番にしてくれないの?」って包丁を持って刺しに来たことはありました。

――そりゃそうですよね……。これまで浮気は隠し続けてきたのに、柚衣さんとは「公認ならば、浮気も可」という関係になったのは、どういう経緯があったのでしょうか。

柚衣:英紀さんと付き合って間もなくして、妊娠が判明したのをきっかけに、結婚することになったんです。ただ、産前からなんとなく(浮気の)予感はあったというか、「男はみんな……」なんて言葉もありますが、私は男も女も関係なく、すべての人は浮気するものだろうって思ってたんですよね。

それで、産後2カ月くらいのときだったんですが、その時期って育児中心で、家からあまり出られないじゃないですか。なかなかふたりの時間をとることができなかったから、彼の財布に手紙を入れようとしたんですよ。「お仕事がんばってね」って。そしたら財布から、ラブホのポイントカードがポロっと出てきて。たまに一緒に行っていたラブホテルのもので懐かしいな~なんて思っていたんですが、押されているスタンプの日付が最近のものだったんです。

それで頭に来て、彼の携帯をこっそり見て、浮気を確信しました。ただ、携帯を見たっていう罪悪感があったので、彼には(浮気を知っているということを)言えずにいたんです。生後半年あたりまで溜めこんでました。

――結婚・出産からの夫の浮気って、勝手な想像ながら不幸のどん底に突き落とされたを地で行く経験ですよね……。とても辛かったのではないでしょうか?

柚衣:そう、あのときはきつかったですね。出産直後って貧血になるじゃないですか。そこに夫の浮気について追及できなかったストレスが重なって、気を失ったことがあったんです。相当まいってたんだなって、今思います。

英紀:あのタイミングで浮気をするのは、僕が完全に悪いです……。

――浮気がそもそも……という感じもしますが。柚衣さんはどうやってそのつらい気持ちを乗り越えましたか?

柚衣:女友達に相談しましたね。小学校1年生から25年の付き合いのある親友がいて、その子はわたしがセックスワークをしていたことも知っていて、お互いに子供も1カ月違いで産んでるんですよ。物事をはっきり言ってくれる子なので「浮気するのが悪いよね、旦那さんクソだわ」とか言ってくれたりして。

――そういうときに、共感して「あなたは悪くない」って言ってくれる友達の存在って大切ですよね。ところで、英紀さんのほうはいつ頃から浮気されていたんですか?

英紀:僕は出産の前の年の……年末ですかね。柚衣と入籍するちょっと前くらいからふたりの女性と浮気をしていたんですが。

――えっ! まさかの複数人……。そのおふたりとは、どうなったんですか?

英紀:柚衣さんに「浮気してるでしょ」って言われて、全部晒しました。それこそ、ふたりとの出会いの経緯から携帯のやりとりも全部見せて「もちろんこのふたりを切ってもいいけど、正直俺はまた浮気してしまうと思う。浮気しないって約束をすると、それは嘘をつくことになる。その嘘はつきたくないから、そういう俺をどう思うか決めてくれ」と言いました。

柚衣:私は、「浮気相手のふたりのうちのひとりと、お泊まりをしていたことがどうしても許せない」ということを言いました。

――その際に、ずっと隠れて浮気していた英紀さんが責められることはなかったのでしょうか?

英紀:僕からは柚衣さんに「ビンタして」って提案したんです。けど、遠慮したのか、最初は軽くビンタで。「それじゃ、怒りが収まらないでしょ。気がすむまでやっていいよ」って言ったら、彼女の記憶では3回なんですけど、僕がくらったのは8発。途中からビンタが掌底みたいになって。頭がグラグラしてきたんですけど。

でも、たぶんあの行為がなければ、自分たちの今の関係はなかったと感じてます。今回は浮気だったけど、一緒にいるうちに、何か別の理由で大切なパートナーを怒らせちゃうことがあるかもしれない。そういうときは、いくらでも怒りをぶつけて、制裁を受ける覚悟を絶対に持ってなきゃいけないと、勝手に思ってます。

■夫、妻、浮気相手の三者面談。そこからポリアモリーという形に

――その後、“愛人”の方も含めて、どういう形でパートナーシップを再構築していったのでしょうか。英紀さんは、メディアなどで“ポリアモリスト(複数のパートナーと関係を築く恋愛スタイル)”として活動もされていますが、この段階では、少なくとも柚衣さんには、ポリアモリーの条件である、了解を得ていない状態だと思うのですが。

英紀:この頃はまだ、ポリアモリーじゃなかったんです。浮気が明るみになってからまずやったことは、柚衣さんの目の前でひとりの女性にLINEで「これこれこういうわけで、もう会えない」って送って。もうひとりは「切らなくていいけど、腹が立つし、どんな相手か知りたいから会わせて」と言うので、僕、柚衣さん、その女性との三者面談をすることになりました。

――その女性は、柚衣さんにバレた時点で身を引くっていうのはなかったんですね。

柚衣:はい。けど、逆にその彼女の態度が好印象で。そこで「じゃあいいです」「関係終わらせますから」ってなるんなら、そもそも浮気するんじゃないよ、って思うので。その子は、私が会いたがってるっていうことに対して「会います」って応じてくれて、彼のことちゃんと好きなんだなって好印象を持ちました。実際に会って話したら、意外と女同士で話が合いそうなところもあるし、根はいい子だなと思いましたね。

――そこから公認のパートナーとしてその方との関係が始まった、と。その後はどうなったんですか?

英紀:そうこうしているうちに、某週刊誌から取材が来たんですよね。妻が愛人を公認している夫婦ですって。そこでポリアモリーを押し付けられたんです(笑)。

柚衣:結構、作られたところもあるよね。

英紀:その後、全国放送のテレビ番組にも、僕たち夫婦と、僕のパートナー(元浮気相手)との3人で、出演することになったんです。ですが、自分がポリアモリーっていう肩書を背負っていいのかって、迷いもあって。

ちょうどポリアモリーの第一人者と言われる人と付き合いもあったので、「どう思う?」って話をしたときに「いいんじゃないの」って言われたんですよ。当時は、ポリアモリーの活動をしている人って、女性が多くて、男性側からの発信はあまりなかった。僕にも何か伝えられることがあるのかもしれないって思うことができました。

ポリアモリーって体感型であって、本や記事を読んで理屈を理解したからってそういう関係性を築けていけるわけじゃないなって思うんです。柚衣さんの怒りとか、苦しみをわかったうえで行動しないといけない。論理的な部分ではなく、心や感情に納得がいくかどうか、今目の前にいる柚衣さんはどんなことを辛いと思うのか、会話を通じて理解を深めていく必要があります。

■「公認なら愛人を作ってもOK」ただし……

――そもそも、いまのおふたりの関係に至ったのは、柚衣さんが「誰でも浮気をする」という考えの持ち主であったことが大前提にあったお陰でもあるとおもうのですが、おふたりにとって、浮気ってどういうものなんですか?

柚衣:私も、もともと浮気性なんですよね。これまでの男性と付き合っている間も、だいたい浮気してます。だから、彼が浮気してしまう気持ちもわかるんですよね。わかるんだけど、知ってしまうと、ショックはショックです。

英紀:柚衣さんの浮気はどういう特性なの? 既存のパートナーに不満があって浮気するとか。

柚衣:私の浮気は「別腹タイプ」かな。ただ、たしかに私も浮気症だったんだけど、最近はそうじゃなくなったかな。あ、でも、先週、気のある女友達とお泊まりしてきて、楽しかったです。わたしはバイの気があるので。

――その女性とは肉体関係がある?

柚衣:まだないですね。

英紀:その肉体関係にいくためには、傷つく覚悟して口説かないとダメよって、送り出しました。

――英紀さんとしては、柚衣さんが浮気するとしたらどうですか?

英紀:そうですね……まず、妊娠するとかってなったら嫌だなっていうのが正直なところです。僕は出産前、毎日柚衣さんをマッサージしていたし、病院も毎日一緒に行ってました。出産の立ち合いもして、大変な姿も見てきた。「僕と同じことできるの?」って。それでも産みたいって言われたら、その意向を汲みますが、お腹の子の父親の男の対応がダメだったら、俺が対応します。僕は血の繋がりを、そんなに強く見てないんです。血より強い絆ってできると思うので。

――英紀さんの愛人に、「子どもを産みたい」と言われたら、柚衣さんはどうですか?

柚衣:私の方は覚悟があれば、その形もありなんじゃないかなって思っています。彼が愛せる人で、それで子供がほしいって言うのであれば、私もその子供を見てみたいなって。いろんな考え方が浮かびますね。

――なるほど。そもそも、芳賀さんにとっては浮気って、どういうものですか?

英紀:僕は、セックスって「言葉を超えた最上級の会話」だと思ってるので。人間として仲良くなって、男女として仲良くなって。そしたら自然とそうなるでしょっていうのが、僕の中にあるロジックです。

柚衣:そこは私も同じかな。

英紀:誇れることではないとは思いますが、こうやって全部を報告し合う関係になったいま、僕は浮気をしていないんです。「最近浮気しないね」って茶化されてるくらいで(笑)。せっかく新しい人が家族構成の中に加わるんだったら、僕だけじゃなくて、柚衣さんも、娘も大事にしてほしい。逆に新しい人のことも相互で大事にしないといけないので。(セックスを)やれるからいいとかじゃなくて、人として認め合える人じゃないと、前提としてお付き合いする対象とも見れない。行きずりの浮気みたいなものを必要としているわけじゃないんです。

――夫婦で互いの浮気を公認するからには、そこに加わる“第三者”も、相応の相手でないと、というハードルがあがったということですね。

英紀:“公認なら愛人を作ってもOK”という生活をして何カ月後かに、柚衣さんに言われたんです。「嘘がない世界って、こんなに気持ちがいいんだ」って。そこまで言われると僕も嬉しいし。僕も嘘偽りのない生活は初めてなんです。ずっと嘘をつかないといけなかったので(笑)。そうなると、柚衣さんは、どうしても失ってはならない方だし。もうこんなパートナーは現れないって思っちゃったんですよ。僕は柚衣さんによって生かされてる。自分の人生の主人公が、柚衣さんになったみたいです。

柚衣:嬉しいこと言ってくれるな~。わたしも、英紀さんと結婚したことで、今は母とも仲良くなりました。彼が話し合いの場を作ってくれて。

英紀:彼女の母は、娘がセックスワークをしてることを秘密にしておきたかったんですよ。それを、一緒に全国放送のテレビ番組に出たときに言っちゃったもので怒ったんです。「セックスワーカーだった過去の娘は認められません」って言うので、僕が「都合のいいこと言ってんじゃねえよ」ってブチ切れたんです。

「彼女はやりたくて風俗嬢をやったとも言えるし、家庭環境的にやらざるをえなかったとも言える。それを公表したことで楽になった部分もあるって本人も言ってる。それに、今の僕の柚衣さんがあるのは、そういう時代があったからであって、納得いくまで話さないと許せない」って言って(笑)。

柚衣:それでお母さんなりに考えてくれたみたいで、接し方がかなり変わって。今はもう仲良くなりました。

――まさに、雨降って地固まったんですね。

英紀:僕たちふたりが付き合うときに約束したことがあるんです。何かの出来事の後には、「ありがとう」か「ごめんなさい」しか残らないよねって話をしたあとに、それだったら「ありがとう」を増やすように生きていこうって。毎日、ありがとうを51個にして、ごめんなさいを49個にして、「ありがとう」の割合を少しでも増やしていこうねっていうのを最低限つねに意識しています。

フーフのプロフィール

芳賀英紀(はが・ひでのり)
1981年生まれ、東京都出身。神保町の老舗書店「芳賀書店」の三代目として21歳の時に社長に就任。現在は芳賀書店専務取締役に加えてSEXカウンセラー&コンシェルジュ、エロ本ソムリエ、アダルトソムリエとしても活動中。BSスカパー!『田村淳の地上波ではダメゼッタイ』の準レギュラー出演など、メディアにも度々登場。 @hagashoten

芳賀柚衣(はが・ゆい)
1991年生まれ。2017年結婚、2017年に長女出産。

取材協力:芳賀書店
芳賀書店 1936年に東京・神保町に創業した老舗書店。アダルトを中心にした品揃えの実店舗では、定期的にイベントを開催。また、カルチャーを発信するウェブマガジン( https://hagamag.com/ )も発行している。

編集・Photo/小林航平
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大泉 りか

ライトノベルや官能を執筆するほか、セックスと女の生き方や、男性向けの「モテ」をレクチャーするコラムを多く手掛ける。新刊は『女子会で教わる人生を変える恋愛講座』(大和書房)。著書多数。趣味は映画、アルコール、海外旅行。愛犬と暮...

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