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オンオフが曖昧な暮らし方が作る、夫婦の幸せ時間。

オンとオフを分けたい人もいれば、兎村彩野さんのようにオンとオフをゆるやかにつなげた「半オン半オフ」状態で過ごしたい人もいます。オンオフが溶け合った曖昧な暮らしから見えてきたこと、気づいたことを綴ります。

オンオフが曖昧な暮らし方が作る、夫婦の幸せ時間。

夫婦で一緒に仕事をしながら暮らしていると「仕事」と「プライベート」のオンオフがなくなっていきます。美味しいご飯を食べながらも、仕事のアイディアがわけばその場で話してしまうし、ベッドルームで一緒に読書していても、面白い記事を見つけると「こういう仕事してみたいね」と盛り上がったり。暮らしの中で、なにかを区切るのが面倒になってしまったので、暮らしの境界線は「寝ている」と「起きている」だけになりました。

オンオフがはっきり分かれている方が暮らしやすいという人もいれば、私のようにゆるやかにすべてがつながっている状態が暮らしやすい人もいます。どんな暮らし方も正解だと思うので、自分の身体や心にちょうどいいバランスを見つけるのが、幸せに暮らしていくポイントなのかなと思っています。

一度、独身時代に1ヶ月ほどきっちり時間を決めてオンオフのある暮らしをしてみたことがあります。ものは試しにという感じです。職業柄、締め切りのある仕事で日々に定時が作りにくいのと、興味があることが見つかると没頭するクセがあるので、その1ヶ月は奇妙なストレスが身体の内側に溜まってしまい、自分には合わなくてギブアップしました。

■「半オン半オフ」が合っていた

いろいろな暮らし方を試してみて辿り着いたのが、暮らしの時間の使い方を「半オン半オフ」でニュートラル状態に保つこと。これでした。

「美味しいご飯」が「なぜ美味しいご飯なのか?」と想像するとき、お皿に盛られたご飯だけではなく、家の玄関からレストランまで見えない道がつながっていて、その道中に出てくるすべてのデザインやサービス、プロダクト、経験・体験が作用して「美味しいご飯」を作っている理由がみつかります。

家を出たらプライベートだからと「完全オフ状態」になってしまうと、ヒント探しのスイッチも切れてしまうので、美味しいご飯までのアプローチが見えなくなってしまいます。とはいえ、常に全力でも疲れてしまうので、遊びも仕事も半オンくらいで面白いものを探す。肩の力は抜いても意識は好奇心に任せてみる。そんな感覚です。

オンオフを作らない暮らしにしてからはストレスが本当になくなりました。仕事をしている! 暮らしている! 休んでいる! と無理に考えなくなりました。全部「生きている」でいいかなという感じです。

オンオフのない暮らしを夫婦でしていると、必ずしもリズムが一致するとは限りません。片方が集中していて、片方がサボっているときもあります。そんなときは集中している方を優先して、サボっている方が寝室へ移動したりします。ときには集中するのにヘッドフォンを使ったりもします。

お互いにリズムを合わせることはなく、相手に任せつつ「今から少し集中して作業するね」とか「飽きてきたから寝室でゲームしてるね」のように、一声かけるようにしています。空気を読むという言葉が「言いたいことを我慢する」の意味ではなく、「相手を気遣う」という意味に捉えると良い言葉になります。二人で長時間一緒にいるとき、空気を読みつつ、一声かけて現状を確認することを大事にしています。

■小さな気遣いをするだけで、暮らしが心地よくなる

オンオフのない曖昧な暮らしを良しとするのは楽ができる代わりに、まわりに迷惑をかけない小さな気遣いの努力が必要になります。小さな気遣いという努力だけで、自分が心地よく暮らせるなら悪くないなとも思います。良い暮らしには努力は必要で、空から振ってくるようなものではないので、どうせするなら楽しい努力がしたいものです。

働くことも家事をすることも、食べることも本を読むことも、実はつながっていて、どこかを良くすれば全体が良くなっていく。そんな気がします。夫婦も本来は妻と夫以外の時間も存在する曖昧な人間関係で、夫婦だからなんでも一緒じゃなきゃダメだ、みたいには思いません。

夫という仲の良い他人にも、リズムがあり、調子があり、気分があります。わからなければ一声かけて現状を聞いてみる。言うか聞けばだいたいは解決します。世界が曖昧であるように、夫婦も曖昧でOK。その緩さがオンオフの向こう側へいける切符になりました。半妻。半オン。半分できていればまぁ良し。そんな気楽さが寛容な心地よさを作ります。

夫婦でオンオフをなくしてから、どんなときも暮らしそのものが仕事のヒントであふれ、ヒントを二人で楽しみながら見つけて、生かしていけます。夫婦でデザイン会社をしているからできることがきっとあるんじゃないかなと思っています。それは一般的な企業と違う視点かもしれないし、暮らしから出てくるヒントは生活者に近い視点かもしれません。いろいろな会社が世の中にあればいろいろなヒトの役に立てる。そう信じています。私たちは私たちらしく。

暮らしからオンオフをなくす。曖昧を受け入れる。無理をしない。自分の内側の声を聞く。相手の声を聞く。カテゴリ分けされた役割ではなく「生きること」そのものを楽しむ。二人だからこそ、一人よりも自分らしく暮らせるようになり、良い意味での空気を読む能力が高まっていきます。

兎村彩野さんの記事一覧

兎村彩野

Illustrator / Art Director

1980年東京生まれ、北海道育ち。高校在学中にプロのイラストレーターとして活動を開始する。17歳でフリーランスになる。シンプルな暮らしの絵が得意。愛用の画材はドイツの万年筆「LAMY safari」。

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