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夫婦はオナラで笑えるくらいがちょうどいい

パートナーの前でオナラ、してますか? 兎村彩野さんご夫妻は「する」派。しかも“プ〜ッ”と鳴る度に笑いや会話が生まれ、おもしろい雰囲気になるのだとか。オナラで笑い合える関係は、ダサさや弱い部分を互いに見せられる特別な安心感がある、と語ります。

夫婦はオナラで笑えるくらいがちょうどいい

夫は口数が少なく、ひとりの時間は本を読んだり漫画を読んだり、静かです。ただ、面白いコトに対してはとてもよく笑います。

一緒に暮らし始めて、半年〜1年くらい経った頃だと思うのですが、お互いにふたり暮らしがずいぶん馴染んだ頃です。気が緩んでいた私は、夫の前でオナラをしてしまいました。ぶーっ! というなかなか良い音で、自分でもびっくりしていたら、いつも静かな夫がケラッケラ笑っていました。「なにその音(笑)」。ずっと笑ってるので、なんだかオナラをしてしまった自分もおかしくなってきました。いつも静かなので、声を出して笑っている姿を見てとても嬉しかったです。

その日以来、オナラはやはり少し恥ずかしいですが、夫婦がケラケラ笑えるので、家の中でだけの秘密の会話になってしまいました。


「暮らしながら働く」なので自炊しながら基本的には同じモノを食べている夫婦です。スパイスをたくさん使ったアジア料理が続くと、オナラも同じにおいになります。「なんだか数日パクチーやナンプラーが続くから、ちょっと臭くない?」「わかる(笑)。くさいよね(笑)。ふたりとも同じにおいなのね、今」そんな会話が日常にたまに挟まります。

決してひどく下品とか下ネタとか自虐ではないのですが「なんだか笑えるオナラ」みたいなコンテンツが夫婦の間に生まれました。

■ひとりぼっちのときにオナラをしたら、寂しくなった

ある日。夫が打ち合わせへ出かけ、私が家にひとりでいました。ぶっ! とオナラをしたのですが、いつもの笑い声はなくラジオの音だけが家の中に響き続けます。そのとき、オナラをするといつも笑い声いっぱいになる家なので、ラジオの音が淡々と響くだけの空間はとても寂しく感じました。ふたりで笑える家というのは、どれほど心地よく楽しい空間なのか知りました。ひとりってつまらないなぁと。

昔はひとり暮らしだったわけで、オナラくらいはするんですが、別に面白いとか笑えるとかはなく、ただの生理現象だった気がします。それをつまらないと感じるのがすごい変化だなぁと気づきました。

■夫婦間でしか見せない、弱くてダサくて、人間らしい部分に安心する

私たちは下品にならない範囲であれば、オナラで笑い合える関係です。自分にだけ見せてくれる相手の弱い部分、人間の部分に安心感を覚えます。この人のオナラって私しか知らないよなぁって思うと、もうすごい秘密を持っている感じで面白いです。

良い人間関係とは安心が関係の真ん中に存在します。安心には種類がいくつかあって、相手に優しくする安心、相手に優しくされる安心、相手に弱さを見せられる安心、相手の弱さを許容する安心、他にもいろいろあります。夫婦にはこの「安心」が重要で、さらに法律的な結びつきが存在しつつ、安心に愛情が足される複雑な状態で、距離が近いので、心地よいバランスを見つけるのは、他人との関係より簡単ではないのかも知れません。

「オナラで笑える関係」という安心が、私たち夫婦にはダサさ・弱さの共有ポイントになっている気がします。それがふたりでゆるりと見つけたバランスです。

■お互いひとりの人間だけど、それぞれの命はふたりのもの

夫のダサさ・弱さを知っているので、そこにいてくれるだけで嬉しいと思えるくらい安心と信頼があります。安心を積み重ねて信頼し合っていると、もし相手が病気やなにか大きな事故や怪我をしても、本気で守ろうと思えるし、私自身もきっと同じで、私の顔や身体を失うような事件や事故、病気になったとしても夫は守ってくれるだろうと感じます。自分自身がもうひとりの命ではないんだなぁと知ります。自分はひとりで、相手もひとりで、でも命はお互いのモノ。それが夫婦の尊いつながりかもしれません。

お互いにオナラをすれば笑うし、ベランダでシーツを干しているときの影ですら好きだなぁと感じるのは、良い関係がふたりの間で築けているからかなぁとぼんやり感じます。全力で守りたい。全力で守ってくれる。理屈ではなく、本能が安心していると、それが「わかる」という感覚的なところにまで辿り着きます。これが私にとって私が知っている幸せの本当の姿です。

命は永遠ではないので、いつか未来、オナラをしても誰も笑ってくれない日がきっとやってくるでしょう。その日「そういえばふたりのときはいつも笑ってたね」という独り言を言うのでしょう。運命にしかわからないので、できればその日が遠いと良いなと願いつつ、今日も明日も、オナラくらいで笑える良い関係を続けていきたいです。

※この記事は2016年6月8日に公開されたものです

兎村彩野

Illustrator / Art Director

1980年東京生まれ、北海道育ち。高校在学中にプロのイラストレーターとして活動を開始する。17歳でフリーランスになる。シンプルな暮らしの絵が得意。愛用の画材はドイツの万年筆「LAMY safari」。

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