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勇者から転職! 夫婦で戦士と白魔道士のパーティーを組んでみた

ずっと「勇者」として生きていた私。夫と出会い「戦士」と「白魔道士」を交互にするようになってから変わったこととは――?

勇者から転職! 夫婦で戦士と白魔道士のパーティーを組んでみた

幼い頃からゲームが大好きだった私。なかでも「ロールプレイングゲーム」や「シュミレーションゲーム」は別格に好きでした。イラストレーターという職業を選んだきっかけはいろいろありますが、その1つは間違いなく「ファミコンのゲームを作りたい!」という子ども時代のぼんやりしたイメージと空想が影響しています(ゲームの中の物語とキャラクターを作りたかった)。

■ゲームで得た感覚はリアルで生きている

ファミコンのゲームの好きなところに、キャラクターの設定があります。人間が勇者になったり戦士になったりすることで、特性が変わったり、できることやできないことが変わっていったりするのがとても好きでした。友だちを「あのキャラクターに似てるな~」と妄想するのも楽しくて。

ゲームを始めたばかりの頃。買ってもらったゲームは勇者が1人で魔王を倒しにいく物語で、大変でした。すぐゲームオーバーになるし、孤独です。村人にどんなに話しかけようと、着いてきて助けてくれるわけでもなし(笑)。その後は勇者の自分が戦士や魔法使いと一緒に冒険できるゲームを買ってもらいました。画面の中の自分の周りに、なかなか頼もしい仲間がいる。個性的でいろいろな特性のあるキャラクターに囲まれる。みんなで強くなっていく。どの特性でバランス良く旅していくか考える。なんとも言えない楽しみや喜びがありました。

大人になっても、私の中ではゲームで覚えたキャラクターの感覚で物事を進めていく感覚が強く残っています。人と人の関係性を考える上で、この感覚はとても役に立ちます。ゲームをたくさんしてきて良かったなと思っています。

■家事も仕事もリーダーとサポーターで分担

さて、ちょっと冒頭が長くなりました。
今回のコラムは「夫婦の関係も冒険の旅に似ています」というお話です。

私たち夫婦は、家事も仕事も、リーダーとサポーターに分かれてやっています。この関係は戦士と白魔道士に似ています。夫婦という家族の中に勇者を作りません。1人で何でも決めるのが勇者。そう考えると、私の中で独身時代=勇者の時期だったかなと思っています。自分で全てを決めて自由だったけれど孤独——勇者っぽいですね。

ある日、私は「夫」という勇者に人生という冒険をする中で出会いました。私も「勇者」なのでどうも冒険をするには不便です。そこで話し合い、勇者以外の何かに転職することにしました。ふたりとも勇者のままで上手くいく夫婦もいるかもしれませんが、私たちは話し合いにより勇者をやめました。

では、勇者の代わりに何になるか。私たちが決めたのは「戦士(リーダー)と白魔道士(サポーター)を交互にすること」でした。

私たち夫婦は家事も仕事も、タスクごとにリーダーを決めます。リーダーは最終的な決定権を持ちますが、そのぶん、もろもろの段取りを組まないといけません。そしてもう一方はサポーターになります。サポーターはリーダーのバックアップにまわります。

■得意なことに立候補してリーダーになる

少しわかりにくいので、具体的な例をお話します。

我が家の洗濯は「夫に洗ってもらったパンツしか履かない」でも書いたように、夫がリーダーで、私はサポーターです。そのため、洗濯の仕方やルールを決めるのは夫。彼のやりやすい方法で自由に決められます。洗剤の投入タイミングから干し方、畳み方まで、夫にとって気持ちいいルールになります。私がお手伝いをするときは、私のルールは一切出しません。口も挟みません。夫にお伺いを立てて、やり方を教えてもらいます。結果、洗濯の仕方に関して喧嘩になることはありません。

我が家の経理では、私がリーダーで、夫がサポーターです。私のやりたい経理の方法を夫にお願いすると、夫はその通りにエクセルに情報を打ち込んでくれます。請求書なども経理なので、私の作ったひな形で作業してくれます。ミスがない限りは、私が作った経理のルールを夫が手伝ってくれます。こちらもやはり、余計な言葉が生まれないので喧嘩になりません。

リーダーには「得意な方が立候補」することが多いです。お互いの性格もなんとなくわかっているので、空気感で決まることもあります。

■入れ替わり制度で互いの気持ちを理解する

先ほどの冒険のキャラで説明します。リーダーは戦士なので、タスク(家事や仕事)を最前線で指示しながらさばいていきます。まさに攻撃系です。大きな斧や剣でザクザク前へ進んでいきます。サポーターは白魔道士です。傷ついたり、体力がなくなったりした戦士が回復するサポートをし、癒します。たまに回復だけでなく、戦士の動きの速さをアップさせたり、守備力をアップさせたりします。弱点になる部分もしっかり支えます。

そして戦士と白魔道士、両方の気持ちを理解するために、話し合いをしながらポジションを入れ替えていきます。この入れ替わり制度により、相手の気持ちを想像する力がついていきます。されて嬉しいこともわかってきますし、ありがたいなと感じるポイントも見えてきます。

「夫婦は平等なのか?」難しい問題ですが、私はこの世に平等はないと思っています。夫婦でいるときに、平等だと言って真横に並んで進むのではなく、お互いの適正で前後にポジションをとり、前後を入れ替えながら進む方が、多様化した今の社会では楽なのかもしれないなと感じています。

■夫婦は「自分とは違う人」

戦士と白魔道士は、見た目も能力もまったく違います。それを平等ですかと聞かれたら「比べられない」と答えます。もしかすると夫婦も、男女であり、生まれてきた環境も能力も違います。知っているコトも知らないコトも違います。たまたま人間のカタチをしていて、同じ言葉を話すので、わかっているような気がしますが、それはわかったような思い込みだけで、そもそも戦士と白魔道士くらい違うものなんじゃないのかなと思っています。

夫婦は他人であり、自分とは違う人。平等でも、不平等でもない。ただ単に個性的な自分じゃない人。それでも一緒にパーティーを組んで人生の冒険をクリアしていきたい仲間。違うから面白く、違うから楽しい。

勇者だった時代は勇者としてとても楽しかったです。戦士と白魔道士に転職してパーティーを組んだ今、勇者には転職で戻りにくいけど、ふたりで一緒に困難に立ち向かう毎日も良い物語です。

兎村彩野さんの記事一覧

兎村彩野

Illustrator / Art Director

1980年東京生まれ、北海道育ち。高校在学中にプロのイラストレーターとして活動を開始する。17歳でフリーランスになる。シンプルな暮らしの絵が得意。愛用の画材はドイツの万年筆「LAMY safari」。

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