終わりを知っているふたりの暖かな二度目の結婚

終わりを知っているふたりの暖かな二度目の結婚

はじめまして、エッセイストの紫原明子と申します。結婚や離婚、シングルマザーをテーマにしたコラムをお届けします。 先日テレビを見ていたら、爆笑問題の田中裕二氏と再婚した山口もえさんが出ていた。田中氏にも離婚歴があり、ふたりは共に、二度目の結婚とのこと。


はじめまして、エッセイストの紫原明子と申します。結婚や離婚、シングルマザーをテーマにしたコラムをお届けします。



 

先日テレビを見ていたら、爆笑問題の田中裕二氏と再婚した山口もえさんが出ていた。田中氏にも離婚歴があり、ふたりは共に、二度目の結婚とのこと。

山口さんが語るところによると、田中さんは「子供のことを一番に考えるもえちゃんが好きです」と言って交際を申し込んだのだという。そんな田中氏、無事結婚を果たしてからも、しばしば彼女に「僕のどこが好きになったの?」と尋ねるそうだ。彼女が「どこかなあ……」と考えていると「そうか、君は変わってる子だから僕のことを好きになったのか」と独自に結論付けているのだという。「彼は、普通の子が自分のことを好きになるはずがないと思ってるみたいなんです」と山口さんは言う。

このエピソード、他人事ながら、何だかとてもぐっときてしまったのだ。何を隠そう私にも離婚歴があり、現在はふたりの子を育てるシングルマザーである。離婚という選択は、その時点で最悪の状況を脱するための前向きな解決策である、と頭では理解していても、やっぱりふとしたときに、結婚を続けられなかったことを負い目に感じてしまう。疲れていたり、弱っていたりすると、私のこういうところがダメだったのかなと欠点を拾い上げては沈み込んでしまうし、いや、むしろこういうネガティブな思考に偏っちゃうところがよくないのかも、なんて、悪いスパイラルに陥ることだってある。一度心に落ちた影って、なかなか消えてくれないものだ。

だから、「自分のどこを好きになったの?」と結婚してもなお、しつこく山口さんに尋ねるという田中氏の気持ちに、痛いほど共感してしまったのだった。輪をかけて、彼には身長が低いという身体的特徴があり、お仕事上それが有効に働いたとしても、プライベートの恋愛ではそうはいかないことも少なからずあったのだろう。だからこそ、山口さんのように綺麗な人がどうして自分を、と、疑問に思ってしまうのかもしれない。

一方の山口さんは、メディアの報道によれば、一度目の結婚で色々と辛い思いをされたそうだ。DVや夫の逮捕の果てに、ふたりの子供を抱えて離婚。そんな彼女が、子供のことを第一に考えるあなたが好き、と思いを打ち明けた田中氏を選んだ気持ちも、やっぱりとてもよくわかる。母であり、かつ元夫とのゴタゴタで世間の冷たい視線を嫌という程浴びてきた彼女には、今更、自分をより華やかに彩るアクセサリーのような相手なんて、微塵も必要ないのだ。なぜなら誠実さ、寛容さといった内面性こそ、何にも勝る価値を持っているということを、身をもって知っているから。

これから結婚しようというほとんどの人は、当然その結婚が最初で最後だと思っている。目の前にいるこの人と、死ぬまで良好な関係を築いていけるものだと信じている。けれど、実際には人の価値観なんて日々どんどん変化していくものだし、そうでなければ死んだように生きていくより他ないし、お互いに懸命に生きているうちに、いつしかすれ違って、どんなに努力しても、どうしてもうまくいかなくなるときがある。終わりを決めるときは苦しく、決めてからも、やっぱり結構あとを引く。だけど、幸いなことに離婚したって私たちの時間は止まらずに流れ続けているわけで、あるとき思いがけずまた、新しい出会いが、ひょんなことから目の前に降ってくることだってある。

一度深く傷ついた人が、勇気を持って再び、誰かと深い信頼関係を結んでみようと決意したとき、過去の体験は全て価値ある糧となって、自分をより強く、賢明にしてくれる。一つの物語を最後まで見届けた者にこそ紡ぐことのできる新しい物語は、きっとより優しく、より暖かい。

この記事のライター

エッセイスト。1982年福岡県生。二児を育てるシングルマザー。個人ブログ『手の中で膨らむ』が話題となり執筆活動を本格化。『家族無計画』『りこんのこども』(cakes)、『世界は一人の女を受け止められる』(SOLO)など連載多...

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