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自傷行為をやめたら、「さみしさ」がオマケに付いてきた。まんきつ×青木真也

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9月特集「ひとりの夜に」。今回は、サウナ漫画『湯遊ワンダーランド』著者・まんきつさん、プロ格闘技選手・青木真也さんの対談をお届けします。さみしい瞬間は「日々たくさんある」というふたりが、過去と現在のさみしさとの向き合い方について語ります。

自傷行為をやめたら、「さみしさ」がオマケに付いてきた。まんきつ×青木真也

社会人になって、出会いは仕事絡みばかり。学生時代の友達とも、なかなか会う機会が作れずに疎遠になってしまった。周りは結婚をする人も多くて、今までみたいに気軽に遊べない。大人になってから感じる「さみしさ」は、子どもの頃よりもずっと途方もないものに感じるかもしれない

そんな大人のさみしさを、漫画家のまんきつさんと格闘家の青木真也さんが語り合います。

一見異色の組み合わせではあるものの、孤独な作業を繰り返すお仕事であったり、既存の家族像と相容れない部分があったり、サウナが好きだったり、いくつも共通点があるおふたり。若い頃に比べて、「さみしさ」との向き合い方はどのように変わってきたのでしょうか。(聞き手:園田もなか)

まんきつさんプロフィール

漫画家。著書に、サウナをテーマにしたエッセイ漫画『湯遊ワンダーランド』、『アル中ワンダーランド』『ハルモヤさん』『まんしゅう家の憂鬱』などがある。2019年、「まんしゅうきつこ」から「まんきつ」に改名。

青木真也さんプロフィール

プロ格闘技選手。修斗ミドル級チャンピオン。DREAM、ONEライト級チャンピオン。執筆、プロレス、講演など多方面で活動中。著書に『ストロング本能』『空気を読んではいけない』など。2019年10月13日、「ONE Championship 日本大会」に出場予定。

■44歳の今、さみしくて仕方ない

――おふたりは普段、さみしさを感じる瞬間はありますか。

まんきつ:私はいま44歳なんですけど、最近になって突然さみしくて仕方なくなってしまったんです。

20代や30代の頃って、なんでもひとりでできていたんですよ。海外旅行もひとりで行けたし、友達だってそこまで必要だと思っていなかった。恋人に対してすら「私はあなたに一切期待していないから、あなたも期待しないで」と言っていたし、それで喧嘩になったこともあります。割り切っていたんですよね。

青木:僕もそういうところあります。期待したくないから、割り切った関係でいたい。面倒臭いことに、人がいないとさみしいんだけど、いると鬱陶しいと思ってしまう。あまり近すぎず、わきまえた距離感で人と一緒にいるのがいい。

まんきつ:私もそれに近かったです。でも、最近は大好きな女友達と遊んで別れたあととか、とにかくさみしくて……。あの頃とは別人です。昔は、どこか周りの人のことを「邪魔をしてくる存在」だと思っていたんですよ。だからひとりになるとホッとしていた。

――今年発売された『湯遊ワンダーランド』の最終巻(3巻)では、干渉をしてくるご家族と縁を切ったというお話が描かれていましたね。

『湯遊ワンダーランド』3巻より (C)kitsuko manshu / fusosha 2019

まんきつ:両親とも弟とも縁を切ってしまいました。今は周りに好きな人たちしかいない。おかげで、彼らがいないときはとにかくさみしくて仕方ない。当時に比べたら、むしろ人間らしくなったのかな、とも思っているんですけど。

青木:家族の話でいうと、僕は今家族(妻、子ども)と別居しているんですけど。「家族」という関係性が自分に合わなかったんですね。さっきも言ったとおり、近づきすぎると鬱陶しくて、一緒に暮らすことが難しかった。

僕は昔から、必ずしも一緒にいなくてもいいし、困ったときに助け合えるような都合のいい関係性を「ファミリー」と呼んでいるんですけど、そうやって自分にしっくりくる枠組みで、流動的な関係でありたい。だから、嫌だったら縁切っちゃうの、全然いいと思いますよ。

■試合をしていれば無心でいられる

まんきつ:格闘家って孤独との付き合い方がうまいイメージです。

青木:え、そうですか。

まんきつ:ヒクソン・グレイシー(※)とかが有名ですけど、試合前にセックスやオナニーを我慢するってよく聞くから、とにかく孤独に引きこもる印象があって。

青木:ああ、それは絶対に嘘だと思いますけどね。

まんきつ:え! ヒクソン、ホラ吹いたんですか。

青木:僕も、試合前のオナニー・セックス問題は気になっていろんなアスリートに聞いたことはあるんですけど、あまり意味がなさそうだし、信ぴょう性ないし。むしろ「試合前に一回セックスしとくか」みたいな人の方がメンタル強そうじゃないですか。

まんきつ:たしかに。青木さんは、普段さみしいと感じることってありますか。

青木:昼夜問わずありますよ。それこそ僕は独居中年だし、折に触れて「さみしいなあ」「何やってんだろうなあ、俺」と思うことはある。ただ、格闘技って、孤独になる作業の繰り返しでもあるんです。

より強くなるためには、周囲の賞賛やチヤホヤもすべて断ち切って集中しないといけない。以前、一度大きな負け試合を作ってしまったことがありますが、それも今思い返せば孤独に負けてコンディションを作りきれなかったのが原因です。

そういう意味では、孤独でさみしいことは決して悪いこととは言い切れず、どちらかというと人生に必要なスパイスのような位置付けです。漫画家にも同じようなところありませんか?

まんきつ:そうですね。漫画を描くことも孤独な作業なので、そこに打ち勝てないとできないかもしれない。昔の私はそういう部分を楽しめていました。

今はもう、全然ダメですね。ずっと座っていることすらキツい。集中までもっていくのに時間がかかるようになってしまった。青木さんは試合中とかってやっぱり勝つことだけを考えて集中しているんですか。

青木:試合中は何も考えていないんです。オートモードで、ただ目の前の敵を倒すだけ。試合の直前まではいろいろ考えていますけどね。しんどいなあ、やりたくないなあ、って延々と。

まんきつ:ああ、それじゃあさみしいなんて考えている暇もないんですね。試合前は試合のことだけ考えて、試合中は無心でいられる。

青木:そう。だから格闘技を続けたいんですよ。僕、試合とか仕事って自傷行為に近いと思っているんです。あえて自分に苦行を与える。その最中は孤独とかさみしさとかは忘れることができる。トレーニングもその一環だし、だからサウナも好き。

まんきつ:あ、サウナお好きなんですね。でもサウナって自傷行為かな?

青木:サウナのとき、水飲みますか。

まんきつ:飲みます。

青木:ああ、飲むんですね。僕、毎回12分と決めて、一切水を飲まずに水風呂とサウナの往復を繰り返すんです。体重だと2キロくらい落ちるかな。これ、よくない入り方らしいので、怒られちゃうんですけど。

サウナで苦しい思いをして、水風呂で解放される。それは、トレーニングで苦しい思いをして、試合で解放される、というのと同じような感じです。どちらも、ただ自傷行為を繰り返しているだけ。

まんきつ:いまのお話を聞いていて、さみしさって暇があるから感じてしまうことなのかな、って思いました。我が身を振り返ると、連載が終わってから時間ができて、どんどんさみしさが増していたところがあるんですよね。

いま、犬を2匹飼っているんですけど、2匹目がまだ生後5カ月なんです。あちこち走り回っていて目が離せない。そのせいか、なんだかさみしさが軽くなっていて。たぶん5匹とかに増やしたらもう全然さみしくない気がする。忙しいとさみしさなんて感じないのかもしれない。

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園田 もなか

記事を書く仕事をしています。ハリネズミのおはぎとロップイヤーのもなかと暮らしている。Twitter:@osono__na7

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