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「トンデモ健康情報」はなぜ女性に向けられやすいのか。“非科学”を信じてしまう背景にあるもの

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巷にあふれる「女性ならはこうケアすべし」という健康法。科学的・医学的に証明されているものであれば良いのかもしれないが、明確な根拠もなく広められているのだとしたら、時にそれは大きなリスクに繋がる。「トンデモ情報」にハマってしまう背景にはどのようなものがあるのだろうか。

「トンデモ健康情報」はなぜ女性に向けられやすいのか。“非科学”を信じてしまう背景にあるもの

デトックスにオーガニック、冷えとりに布ナプキン、経血コントロール……次々に提案される女性向けの美容や健康法。

「流行っているし、体にいいのかな」と、実際に試してみたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、これらの中には、科学的根拠が一切なく効果が疑われるものや、それどころか健康被害を及ぼすものもあります。

そこで今回は、女性向けの美容健康雑誌のライターとして数多くの取材を重ねる過程で、そこに潜む科学的根拠のない“トンデモ”の存在に気づき、昨年末に、『呪われ女子に、なっていませんか? 本当は恐ろしい子宮系スピリチュアル』(KKベストセラーズ)を刊行した山田ノジルさん、そして、産婦人科医、プロボクサー、ベリーダンサーと多方面で活躍しながら、SNSで女性の役に立つ医療情報を、日々発信している髙橋怜奈さんをお招きし、巷で「女ならばこうケアすべし」という呪いを振りまいている「脅し系健康法」について対談していただきました。

トンデモ健康情報はなぜ女性に向けられるのか

写真左:山田ノジルさん(@yamadanojiru)/写真右:髙橋怜奈(@renatkhsh)さん

■祖母が、睡眠が良くなるというダイアモンド入りの布団を買った

――おふたりの身内に、いわゆるあやしげな健康法にハマった方っていらっしゃいますか?

髙橋怜奈(以下、髙橋):うちの祖母は、睡眠がよくなるっていうダイヤモンド入りの布団を買ってました。

山田ノジル(以下、山田):ダイヤモンド⁉ いったい布団のどこに?

髙橋:それが、まったくわからないんです(笑)。何百万円もしたらしいんですけど、若干認知症もあったし、判明したのも、買ってしまって時間がたった後だったので。家族会議をして「否定はしないでおこう」という結論になりました。よく眠れるようになったって本人も言っていたので。


山田:よく眠れるなら、いいのかな……。

髙橋:「ひどい!」って思いましたけどね。

山田:うちは母が生協信者なんですよ。無添加無農薬をよしとする自然派。けど、生協って実はEM菌(※)を売ったりもしているんです。「母親が子宮教」みたいな話に比べれば全然マシなのかなと思うのですが。

※EM菌:有用微生物群。琉球大学農学部教授だった比嘉照夫氏が命名した。土壌改良や害虫抑制などに効果があるとされるほか、がんをはじめC型やB型肝炎、エイズ、ヘルペス、インフルエンザ等々のウイルスに対しても万能的な力を発揮するとされているが、実証はされていない


髙橋:親が「EM菌を信じているから、抗がん剤は打たない」っていうような主張の持ち主だと、こうやって笑ってはいられないですよね。

山田:最悪、ご本人は仕方ないにしても、身内……特に子どもは逃げ出せないですからね。

■なぜ脅し系健康法は、女性たちに向けられるのか

――生協にしろ、子宮教にしろ、ターゲットは女性だと思います。なぜ女性は、そういうものの標的にされやすいのでしょうか。

山田:男性に比べて女性は、ひと月の中でもホルモンバランスに変動がありますよね。生理前のPMSとか、経血とか妊娠とか出産とか、自分ではコントロールできない瞬間が多いじゃないですか。そういった不安的になりやすいシーンに付け込んでくる人たちが多いのかなって思います。

髙橋:身体のことを数値化できない、ということも原因のひとつじゃないかなって思うんです。生理痛があったとしても、それって数値で表せられるものじゃないし、人とも比べられないじゃないですか。明確に自分のことがわからないからこそ、何かにすがりたいというのもあると思います。

山田:下世話なことを言えば、男性って小学校の頃にトイレで横並びになったり、一緒にお風呂に入った時とかに性器の特徴を比べあったりできるじゃないですか。でも女性は、自分の膣圧がどうかなんてわからないし、比べようもない。

髙橋:そうですね。あとは性教育の影響もあると思います。日本の性教育って“性”をタブーとしているところもあって、そういうことを人前で話してはいけない雰囲気がある。下半身の悩みを誰にも言えず、ひとりで抱えやすい状況だからこそ、おかしなものに頼る方向に行ってしまうのではないかと。

山田:性の話が、これまでタブーだったっていうのを逆手にとって、「みんな膣ケアしてこなかったけど、本当は必要」とか「汚らしいとされてきたけれど、もっと触るべき」みたいな口上で、膣マッサージ用の高いオイルを売りつけたりして、女性から搾取しようとするトンデモ健康法は多いですよ。

髙橋:たしかにそうですね。

山田:こういう脅し系健康法って、主語を大きくするのが大きな特徴なんですよ。膣の中にオイルを塗るようなケアは、もちろんほとんどの人がしてない。けれど、「それが海外では当たり前」って言われると、多くの人が信じてしまう。わたしはライターっていう職業柄もあって、基本的には物珍しいものが好きなんです。本当にいいものかどうかはわからなくても、目新しいものには挑戦したくなる気持ちはわかります。けれど、そこに没頭してしまうことのリスクってあると思うんです。

髙橋:特に病気に関することを言うのはよくないですね。経血コントロールができても、できなくても、その人の個性ならどっちでもいいんですよ。けれど、「経血コントロールができると、月経痛がなくなる」とか「生理が3日で終わるようになる」とか「筋腫ができない」みたいに、病気と結びつけたりすると、治療の機会をなくしてしまう。これが怖いんです。

それに「経血コントロールは誰にでもできるようになる」ってそういう人たちは言いますが、過多月経の人の場合はまずできない。それに対して、「経血コントロールができないのは、膣トレをしていないからだ」とか「膣が緩んでいる」とか言われて傷つく人がいると思うんです。

山田:「あなたの努力不足」とか「あなたが女として劣っている」っていうマウンティングするようなメッセージにもなり得るわけですからね。

――そもそも、なんで経血コントロールができることが良しとされているんですか?

髙橋:「できたほうが、身体の機能が高い」ってことじゃないですかね。

山田:あとは、ナプキンを使うのはエコじゃないっていう話にしたり。漏らさないという美意識をくすぐることもします。そういった自分たちの言い分を強化するために、経血をナプキンに出すことを「おもらし」って言ったりとか。

山田:ナプキンでケアすることに罪悪感を意識させる手口なんて典型的な「トンデモ(別名、疑似科学やニセ科学と呼ばれるデマのこと)」ですよ。

――そもそも、経血コントロールってできるものなんですか?

髙橋:元々生理の血の量が少なくて、鍛えられている人であれば、できるかもしれない……けど、こういうことを言うと必ず「わたしはできます!」って人が出てくるんですよ。

山田:女性器を使って吹矢を吹くようなお座敷芸もあるので、経血コントロールができる、ごく少数の特殊な人はいると思うんですよ。でもだからといって、他の人ができるかできないかは、まったく関係ないですよね。ましてや「できるのが当たり前」なんて主張はどうかと思います。

■非科学的な健康法を信じてしまう背景には、医療への不信感もあると思う

――そもそも“経血コントロール”って、どういう背景から生まれた発想なんですか?

山田:最初は、三砂ちづるさんという大学教授の方が、「ショーツを履く習慣のなかった昔の女性たちは、骨盤底筋を締めて経血がもれ出さないようにコントロールしていた」みたいな感じで提唱し始めたんですけど、そこに目をつけて「おまたぢから」とか「月経力」とかって、どんどんキャッチーに仕立てていった人たちがいて、おかしな方向に進んでいった。わたしは無責任な立場なので、半分面白がっているところもあるんですけど、真に受けた人たちを相手にしてらっしゃる先生は大変なんだろうなって思います。

髙橋:でも、産婦人科を受診をしてくれる患者さんは、そういうものを信じていない方が多いです。

山田:どっぷり足の先まで使っている信者の人たちは、標準医療とは遠いところにいらっしゃるので、お医者さんの前には現れないんですかね。

髙橋:そうみたいです。ただ、ツイッターでは、そういう信者の方たちから攻撃を受けたことがあります。「反ピルの産婦人科医を見つけた」ってつぶやいたら、信者の方から「許さない」っていうようなダイレクトメッセージがいっぱい来たんですよね。

髙橋:このツイートで触れた産婦人科医の方は、普通の産婦人科の診療もやっているんです。ただ、それにプラスするような形でこういった活動もされていて。すべてがおかしいわけじゃないんですよ。だからこそ、患者さんたちが信じてしまうのかもしれません。

山田:がんは治療してはいけないという「がん放置理論」を唱える医師もそうですが、トンデモ健康法を牽引する人って、1から10まですべてが間違っていたり、怪しいわけではなく、わりと普通のことを言っていたりもする。

髙橋:こういった科学的に正しくない健康法を信じてしまう背景には、医療不信もあると思うんです。初めて産婦人科にかかるときって、緊張したり、敷居が高いと感じることもあるじゃないですか。それなのに、担当医の対応がそっけなかったり、酷いこと言われたとかで傷つくことがある。そんなときに、自分の不安や悩みをなんでも聞いてくれるような存在が出てきたりすると、そこに没入してしまうのかなって思います。わたしたち産婦人科医の最初の対応がいかに大切かってことを感じますね。

■自分の身体のことを真剣に考えている人を取り込む罠がある

山田:ひとり2万円もするような高額なセミナーでは、コストがかかっているので、相談者にじっくり寄り添ってくれる。けれども、なぜ寄り添ってくれるのか……その背景も疑って欲しいです。

――セミナー参加者たちは、その金額に不信感を抱いたりはしないんですかね?

山田:例えば1000万円取を支払うようなセミナーであれば大騒ぎになるでしょうけど、100万円くらいの金額であれば、「高い勉強代だった」って諦める人が多いのだと思います。つまり、値段設定が微妙にうまいんですよ。仮に参加者が「騙された」と感じたとしても、引っ込むような金額設定にしてある。

髙橋:産婦人科でピルをもらうためにかかるコストは1カ月に2000~3000円くらいなんですけど、「セミナーで膣トレを覚えて月経コントロールができれば一生ものだし」っていう感覚もあるそうです。

山田:すべての講座を受け終えたられば、自分も講座を開けるようになる……という認定資格が与えられるセミナーもあります。トンデモ健康法によって被害を受けた人たちが今度は加害者側に回ることがあるんです。

――今は、SNSで周りにいる人たちの動向が可視化されやすいじゃないですか。だから「あぁ……友達がそっちにいったなぁ」っていうのがすごくわかりますよね。といいつつも、実はわたしもハマった経験があります(苦笑)。それこそ布ナプキンを使っていたこともあるし、「赤ちゃんの身体には天然の乳酸菌がある」っていう話を聞いて、0歳の我が子の手を味噌樽に突っ込ませて味噌を作ったり……。おふたりは、ないですか?

髙橋:わたしの場合、貧乏性で節約家なので、お金を払いたくないっていうのがあります(笑)。

山田:わたしもないですね。手を出さなかった理由は、他に趣味がある対象が多すぎて、そこにハマる余裕がなかったことですかね。

髙橋:それはいいかもしれないですね。脅し系の健康法に一気にハマる人たちの中には、「夢中になるものが欲しい」という動機もあると思うので、別の趣味に熱中するのは、対策に繋がるかもしれません。

――人って、何かハマるものを求めたりしますよね。髙橋先生も、ボクシングにベリーダンスって、だいぶ多趣味ですし。

山田:そういえば、韓流アイドルにハマってる人に、いくらあやしげな健康法を勧めても、「それどころじゃない」って、絶対になびかないって話を聞いたことがあります。そもそもそこに使えるお金がない。逆をいうと、トンデモ系の健康法って、そういう趣味の活動のひとつになっちゃってるってことですよね。でも、失くすのはお金だけじゃない。健康に絡むんだからやめようよって思うんです。

――芸能人の中にも、がんなのに医学を拒んで、民間療法に頼った方がいらっしゃいました。

山田:トンデモ系の健康法って、まるで意義があるかのような雰囲気を作り出すんです。もちろんそこにハマっていく人たちが悪いわけではありません。むしろ、自分の身体のことを真剣に考えている人たち。でも、そんな人たちだからこそ取り込まれてしまうような罠があるのだと思います。

髙橋怜奈

東邦大学医療センター大橋病院・婦人科在籍。2016年6月にボクシングのプロテストに合格をし、世界初の女医ボクサーとして活躍中。また、ベリーダンスもレストランでショーを行うほどの腕前を持つ。SNSでは女性に役立つ医療情報を日々発信中。@renatkhsh

山田ノジル

長年女性向けの美容健康情報を取材し、そこへ潜む「トンデモ」の存在を実感。愛とツッコミ精神を交え、斬り込んでいる。2018年、WEZZY(サイゾー)掲載の『スピリチュアル百鬼夜行』連載をベースにした著書『呪われ女子に、なっていませんか?』(KKベストセラーズ)を発売。@YamadaNojiru

Photo/池田博美

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大泉 りか

ライトノベルや官能を執筆するほか、セックスと女の生き方や、男性向けの「モテ」をレクチャーするコラムを多く手掛ける。新刊は『女子会で教わる人生を変える恋愛講座』(大和書房)。著書多数。趣味は映画、アルコール、海外旅行。愛犬と暮...

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