自分のギャラは自分で決めていい。“相場”に縛られすぎないで【鈴木秀樹×青木真也】
https://p-dress.jp/articles/6642プロレスラー・鈴木秀樹さんと、総合格闘家・青木真也さん。自らの肉体を武器に、リングという名の戦場を生き抜いてきた彼らには、意外な共通点がありました。それは「フリーランス」ということ。どこにも所属せず、自らの力で道を切り開き続けるおふたりに、「フリーランスのキャリア論」について語っていただきました。
プロレスラー・鈴木秀樹さんと、総合格闘家・青木真也さん。肉体を武器に闘い続ける彼らには、「フリーランス」という共通点がありました。裸一貫で道を切り開いてきたおふたりに、「フリーランスのキャリア論」について語っていただきます。
「個人の時代」と言われて久しい昨今、フリーランスとして働く人は増えています。クラウドソーシング大手のランサーズが4月4日に発表した「フリーランス実態調査2018」によると、2018年のフリーランス人口は1119万人で、日本の労働力人口の約17%を占めるとの予想です。
内訳は専業フリーランスが約3割、副業として取り組む兼業フリーランスが約7割。この割合のバランスが変わったり、さらにフリーランス人口が増えたりする未来はそう遠くないと思われます。
「自由に働ける」「自分らしく働ける」といったイメージから、フリーランスという生き方に希望を持ち、フリーランスになる人がいる一方で、「稼げない」「苦しい」「食べていけない」といった悲痛な声を聞くこともあります。
では、フリーランスとして活躍し、生き残っていけるのはどんな人なのか。今回、“体育会系フリーランス”として活躍する、プロレスラーの鈴木秀樹さん、格闘家の青木真也さんの対談を実施。
文化系フリーランス、理系フリーランス……どんな業種にも応用が効く、フリーランスとしての考え方、他との差分の作り方を、自身の経験や失敗談も含めて語っていただきました。
鈴木秀樹さん
鈴木秀樹さん(以下、鈴木):僕はプロレスラーとしてデビューして今年10年目になるんですが、フリーランスになってからはまだ4年目で全然浅いんです。青木さんは、デビューの頃からフリーランスなんですか?
青木真也さん(以下、青木):大学を卒業してからこの仕事をしているので、今年で13年目になりますけど、最初からほぼフリーランスのようなものでしたね。でも、決してフリーランスを礼賛しているわけではないんです。むしろ、やりたいことが見つかったとしても、すぐにフリーランスになるのはあまりおすすめしない。やっぱり、リスクはありますから。
会社員として安定した環境にいるのならば、そこでゆっくり技術を磨くのも大事なことだと思うんです。僕らでいうと、どこかの団体に所属して、そこでトップを獲ってからフリーランスになったっていい。
鈴木:特に日本の格闘技界はそうかもしれないですね。アメリカだと個人で活動している人も多いですけど。
僕はフリーランスのプロレスラーとして活動するうえで、団体を食ってやろうとは思っていないんです。やっぱり、団体とか組織というものは強いので。そこで大事なのが、自分の立ち位置を理解すること。組織がやらないこと、やれないこと、その隙間を狙って稼いでいくのが、フリーランスにとっては大事なことなんじゃないかなって思います。
青木:確かに。僕も二番バッターでいいと思いながら活動してます。
鈴木:その業界にとっての「隠し玉」みたいな存在になること。そしたらきっと価値が高まると思うんです。まずはなんでもやってみて、自分の居場所を見つけることが生き残る術になるかもしれない。
僕は、この業界で食べられなくなったらいつでも辞めてやろうと思って、フリーランスになったんです。全然違う業種に転職してもいいやって。だから、あまり同業の人たちとはつるまないようにしてます。
青木:僕も一緒ですね。
鈴木:だからなのか、フリーランスってすごく「孤独」でもありますよね。
青木:それは確か。もう孤独と闘い続けるしかない。フリーランスにとって、孤独に耐えられるかどうかって大事だと思います。
鈴木:むしろ、寂しいからといって、同じ業界の人とつるんでばかりいるのはどうかと思います。結局、同じ悩みを持っている人たちが集まって、ただ慰め合うだけになりがちじゃないですか。それって1円にもならないですよね。フリーランスの場合、限られた時間のなかでどれだけの成果物をあげられるかで収入が変わってきますから、なるべく無駄なことに時間を費やしたくない。それならば、全然違う業種の人たちの意見を聞く方がはるかにいい。同業の人たちからはもらえないような答えが返ってくる可能性もありますし。
青木:そもそも、成功するためには孤独が必要条件だとも思います。格闘技の世界でいうと、試合に勝つとどうしても「慢心」が生まれるんです。でも、それはよくないこと。だから、自分を孤独に追い込んで、その慢心を打ち消す必要があるんですよね。慢心と孤独のバランスが大事。
鈴木:それはすごくわかりますね。僕も、常に「明日からいらないよ」って言われるんじゃないかと思うようにしてます。すごくいい試合ができたときも、ふと「自分がいらなくなる可能性」について考えちゃうんです。物事がうまくいっているときこそ、慢心を打ち消すように自分を客観視するのって大切ですよね。
青木:重要なのは、孤独と上手に付き合っていくこと。それを誤ると、失敗しちゃう。僕でいうと、何年も勝ち続けていたなかで負けてしまった試合があるんです。あのときは、相手に負けたというよりも、自分のなかにある孤独に負けてしまったんだと思ってます。自分を律するために孤独は必要不可欠ですが、それに縛られすぎるのも良くない。
(後編につづく)
自分のギャラは自分で決めていい。“相場”に縛られすぎないで【鈴木秀樹×青木真也】
https://p-dress.jp/articles/6642プロレスラー・鈴木秀樹さんと、総合格闘家・青木真也さん。自らの肉体を武器に、リングという名の戦場を生き抜いてきた彼らには、意外な共通点がありました。それは「フリーランス」ということ。どこにも所属せず、自らの力で道を切り開き続けるおふたりに、「フリーランスのキャリア論」について語っていただきました。
構成/五十嵐大
編集・撮影/池田園子
参考/「フリーランス実態調査2018」(ランサーズ)
1980年2月28日生まれ、北海道出身。学生時代は柔道を経験し、U.W.Fスネークピット・ジャパンに入門。2008年、愛知県体育館での「GENOME7」でデビューを果たす。2014年にフリーランスに転向。以降、プロレスラーの枠を超え、幅広いジャンルで活動する。著書に『ビル・ロビンソン伝 キャッチ アズ キャッチ キャン入門』がある。Twitter(@hidekisuzuki55)
1983年5月9日生まれ、静岡県出身。小学生の頃から柔道を始め、2002年に全日本ジュニア強化選手に選抜される。早稲田大学在学中に、柔道から総合格闘技に転身。大学卒業後に静岡県警に就職するが、2カ月で退職して再び総合格闘家への道を歩む。以降、フリーランスとして活動。主な著書に『空気を読んではいけない』『青木真也の柔道&柔術入門』など。Twitter(@a_ok_i)
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