「別れた相手が今も許せない」目の前にいない人への怒りはどうすればいい？【大人の上手な怒り術＃９】

怒りと上手く付き合うための心理トレーニング「アンガーマネジメント」。一般社団法人日本アンガーマネジメント協会理事・戸田久実さんがお届けする連載【大人の上手な怒り術】第９回では、別れた相手に対して持ち続けてしまう怒りについてお聞きしました。

■過去の怒りを何度も繰り返し思い出してしまう

数十年前と比べると、離婚率も上がり、離婚という選択が珍しくなくなりました。熟年離婚というケースもありますが、中には結婚後１年も満たない時期に離婚する夫婦も多いようです。

離婚の原因も、どのようなプロセスを経て離婚するかもそれぞれですよね。もちろん、お互いが幸せになるための選択として離婚を選び、その後はイキイキと前を向いて生きていく人々も多くいますが、やはり、離婚後に元夫・元妻に対しての怒りがおさまらないというご相談を受けることがあります。相手からの被害を受けて離婚せざるを得なかったケースに多いようです。

「好きな人ができたから」と一方的に離婚を迫られた。浮気を繰り返された。相手が借金を作ってそれを背負わされた。暴力を振るわれた――。

そんなひどいパートナーとは別れて正解だったといえるかもしれませんが、離婚をした後も相手にされた嫌なことやひどいことを繰り返し思い出し、そのたびに怒りや悲しみで心がいっぱいになってしまうのなら問題です。

離婚するには多大なパワーを使います。そんな労力を費やしてやっと怒りの元と離れたのにもかかわらず、未だに怒りや悲しみに囚われているというのは、辛いことですよね。

過去に受けたダメージを何度も何度も「反すう」してしまい、繰り返し強い怒りや悲しみの感情を呼び起こしてしまうことは、心の病にもつながります。

■怒りの元はあなたの心の中だけにある

離婚後の怒りの大きな特徴は、「目の前にいない相手に対して」感じる怒りという点です。

身近な相手なら、相手による謝罪などによって関係性が変化する可能性がありますが、目の前にいない相手にはそれが望めません。相手が「謝ってくれる」「心を入れ替えてくれる」といった希望がほぼないのです。

その代わりに、相手から新たな被害を受けるということもありません。つまり、怒りの元はあなたの“心の中だけにある”状態なのです。ということは、自分の心の在り方を変えれば現状は変わるということ。

「相手を変えるのではなく自分の心の持ち方を変える」。これは、アンガーマネジメントの得意分野です。

考えてみてください。いつまでも過去を振り返り、怒りの渦中に身をおいて、元パートナーへの怒りに振り回される日々は、あなたが望む人生ではないですよね？

本来願うのは、怒りから解放され、笑顔でイキイキと過ごせる日々ではないですか？　そうであれば、アンガーマネジメントのテクニック「ミラクルデイエクササイズ」に取り組んでみてください。

このエクササイズは、すべての怒りが解消した“奇跡の日”をイメージするという方法です。怒りを感じたとき、そのことで頭がいっぱいになって悶々としてしまいがちな人や、「いつか仕返しをしたい……」といった、よからぬ未来を想像してしまう人に特におすすめの方法です。

■ミラクルデイエクササイズのやり方

まずは、怒りから解放された「最高の１日」を具体的にイメージしてみましょう。具体的にとは、たとえば次のようにです。

目を覚ました瞬間、どのような景色が見えますか？　どんな色の何が見えますか？　その景色を映像で浮かぶよう、イメージしてみましょう。また、そのときにどのような気持ちになっているかをイメージしましょう。

続けて次の質問に対して、具体的なイメージを思い浮かべ、回答を書いてみてください。
□行動にどんな変化があらわれる？（例：笑顔になる、足どりが軽くなる、など）
□最初に誰が変化に気づく？　（家族？　パートナー？　職場のメンバー？）
□その人はあなたに何と言う？
□あなたはどのように感じる？
□どのような光景が見える？
□奇跡の日を10とすると、今年一番10に近い日はいつ？
□その日は誰といた？　何をしていた？

このように、すべての怒りから解放された、「こうなったらいいな」「こんな１日だったら嬉しいな」という理想の１日を具体的にイメージしてみるのです。

ミラクルデイエクササイズに取り組むことによって、「本来、自分が望むのは、怒りに支配された未来ではなく、こういう日々なのだ」と強く思えるようになり、目指す姿が明確になります。それによって、怒りの気持ちから次第に解放されていくでしょう。

過去に受けた怒りを今も抱え続けている、という方は、「不倫関係でイライラ。思い通りにならない、から生まれる怒りはどうすれば？【大人の上手な怒り術＃５】」でご紹介した「グラウンディング」なども併せて取り組んでみてくださいね。