『DRESS』3月特集は「どうして伝わらないの」。新生活といえば、新しい出会いがセット。でも、新たに人と知り合う場で、うまく振る舞えない、いいように話せない……。そんな風に、少しだけ憂鬱になっている人もいるかもしれません。でも、大丈夫。新たな環境で過ごし始める人へヒントになる記事をお届けします。
夢が叶うから、私はネットで「自分」を発信し続ける【えとみほ】
昨年『SNSで夢を叶える』(著:ゆうこす)という本が話題になりました。SNSを使えば誰でも夢を叶えられるのか。答えはイエス。自身もSNSやnoteなどネットの発信を通じていくつもの夢を叶えてきたえとみほ(江藤美帆)さんに、「SNSで伝える」をテーマに寄稿いただきました。
ブログやSNSの登場で、誰もが「自分メディア」を持てる時代になって久しい。最近ではテキストだけでなく、音声や写真、動画、ライブ配信など、表現の方法も多様化している。かくいう私もSNSを大いに活用している。中でも発信頻度が高いのがnoteとツイッターだ。
下の世代の子たちからはよく「えとみほさんみたいな年上の女性はあんまりいない」と言われるが、おそらくこれは「こんなにブログや実名のSNSで発信している40代の女性は珍しい」という意味ではないかと思う。
私自身もそれは実感している。私の同級生の多くは、女性は子育てや仕事に忙しく、SNSを利用しているとしてももっぱら閲覧中心で、発信している人は少ない。40代以上の女性は、ネット社会ではマイノリティなのだ。
■「SNSで夢を叶える」は、才能ある若者だけの特権じゃない
そもそもそんなマイノリティの私がなぜネットで発信を続けているのかというと、端的に言うと「ネットで発信すると夢が叶うから」だ。
タレントのゆうこす(菅本裕子)さんが『SNSで夢を叶える』という本を出版して話題になったが、決してこれは彼女のような容姿や才能に恵まれた若い女性だけの話ではない。すべての人に平等に夢を叶えるチャンスがある。もちろん、40代既婚女性の私にもだ。
私がこの「ネットで発信すると夢が叶う」という事実に気づいたのは、実は四半世紀ほど前に遡る。まだウェブというものが一般に普及していなかった頃、私はアメリカの片田舎で学生をしていた。ある日、同級生の留学生がコンピュータルームに入り浸っているのを見て「何をしているの?」と尋ねたら「パソコンで母国の人と会話をしている」と。
そのときまで、1分300円以上かかる国際電話でしか日本語を話す方法を知らなかったから、必死になって日本のパソコン通信網と接続する方法を調べた(ちなみに当時はグーグルもヤフーもなかったので、この手の情報を調べるには紙の本を取り寄せるしかなかった)。そして、とうとう日本の「ニフティサーブ」というパソコン通信網に接続することができたのだ。
それまで1年以上、日本語を話すことはおろか日本語を読む機会さえなかった私は、夢中になってフォーラム(掲示板)のログを読み漁り、活発に発言をした。すると、そこで知り合ったある男性が「お仕事をしませんか?」と声をかけてくれたのだ。その男性は日本の音楽出版社に勤務する人で、当時人気のあったAccessの浅倉大介さんが書いた歌詞の英訳をしてくれる人を探しているということだった。
その時点で英語力に自信があったわけではなかったけれども、二つ返事で了承した。そして、そこからのご縁でまた翻訳の仕事をいただくようになり、さらにパソコン通信を通じてコンピュータの知識も身についてきたことから、ソフトバンクや技術評論社といったIT系の出版社から連載のお仕事をいただくようになり、23歳のときに初の著書を出版するに至ったのだった。
■SNSで夢を叶えていく現代の女性たち
「これはインターネット黎明期の話で、何の参考にもならない」と思われるかもしれない。しかし、現代においても十分再現性のある話であると思う。
ちなみに、身近な事例でいうと、私が経営するスナップマートの事業推進をやってくれている女性ふたりとは、SNSを通じて出会った。私が彼女たちの存在を知ったのがSNSだったのだ。ひとりは女子大生ながらも7万人以上のフォロワーがいるインスタグラマー、もうひとりは副業でホームパーティプランナーをしている30代の女性だ。
彼女たちはいま、SNSがきっかけで自分の「好き」や「得意」を生かした仕事をしている。それもこれも、彼女たちが「自分」を発信し続けていたからだ。その発信が誰かの目に留まり、何かのきっかけで思い出してもらうことができた。それが人生を左右する大きな転機になったのである。
■普通の人がインターネットで夢を叶える3つのコツ
「珍しい」は武器になる
まずひとつ目は、自分が珍しがられるフィールドを見つけることだ。たとえば私の場合、パソコン通信を使っていたのは当時30代くらいの男性が中心で、若い女性はほとんどいなかった。だからこそ目立つことができたし、注目してもらいやすかった。
同じことは今の時代にも言える。たとえば私の知っている事例でいうと、格闘家の青木真也さんがオンラインサロンを始めたり、Jリーガーの井筒陸也さんがnoteを始めたりするケースだ。これらのインターネットコミュニティではまだまだアスリートは珍しいため、ただ「始めた」というだけでも注目される。その分野の第一人者になれるのだ。
受け手に思考の余地を残すテキストで伝える
ふたつ目のコツは、テキストメインで発信すること。昨今は、YouTubeやインスタグラムに代表されるように「画像」「動画」によるコミュニケーションが活発に行われている。実際、ミレニアル世代より下の世代は、長文のテキストをあまり読まない。
しかしそれでも私は、ネットで夢を叶えたい人にはあえてテキストによる発信を推奨したい。なぜなら、テキストは画像や動画と違って情報量が少ないので、受け手に「思考の余地」を残すからだ。
たとえば私は自分の仕事観について発信する機会がけっこうある。こうした文章に対する反応は受け手によってぜんぜん違う。ときに誤解を受けることもある。しかしそれは、私が投げかけたことに対して読み手が「自分ゴトに置き換えて思考した」ということの表れなのだ。これはコンテンツとしては非常に強い。人が脳内でコンテンツの一部を「自分ゴト化」した瞬間、俗に言う「刺さる」という現象が起きるからだ。
もちろん画像や動画でも「刺さる」ものを発信していくことは可能だが、私はあまり普通の人向きではないと思う。クリエイティブのスキルが要求されることもさることながら、やはりコンテンツとしても容姿の良い人や特技がある人、そもそも著名な人、お金がある人など、実社会でパワーを持つ人が影響力を持ちやすいからだ。
テキストはその情報量の少なさから、そういった現実社会での立ち位置をすっ飛ばして人をエンパワーメントする力を持つことができる表現方法だ。「我こそは凡人だ」と思う人こそ、テキストの力を活用すべきだと思う。
ありのままを発信する
そして3つ目に重要なコツは、嘘偽りのない「ありのまま」を発信することだ。その際必ずしも実名顔出しでなくても良いが、自分がどこの誰なのかを明かして発信するのがベストだ。リアルに近い存在であればあるほど、夢が叶うスピードは速くなる。
四半世紀もの間インターネットを見続けてきた私が得た結論は、ネットの世界で得た力を現実に還元できる人は、リアルとバーチャルの乖離が小さい人だということだった。かつてSNSがなかった時代、インターネットは「リアルとは別の自分」になれる場所でもあったが、その当時のバーチャルな人気者たちはほとんど現存していない。残っているのは、当時から素性を明かして地道に発信を続けていた人たちだ。
■「発信」はもはや特別なことではない
SNSが登場して、オンラインとオフラインはどんどん重なりが増えている。もはやインターネットは別次元のバーチャル空間ではない。リアルを忠実に反映するものになりつつある。
ただ一点、ネットがリアルと違うのは、自分が「ここにいるよ」と声を上げない限りは、誰もその存在を認識できないというところだろう。ネットにおいては、発信しない人は存在しないのと同じなのだ。
この現実をどう受け止め、どのような行動を取るかはあなた次第だ。ひとつ言えるのは、ネットで発信することは、お金もスキルも資格もいらないということ。「自分」という人間が、どんな人間で、何が好きで、どんな人になりたいのかを発信しても、誰も困らないし誰に迷惑をかけるわけでもない。これで夢が叶うのなら儲けものだろう。
誰もが自分の未来を自分で切り開いていける、良い時代になったなと思う。
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