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ジェンダーギャップ指数121位のこの国で、今こそ「生理」を再定義しよう。

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ラジオで生理について話したら「昼間から下ネタかよ」――。これまで「エロ」「はしたない」領域に入れられてきた、生理のこと。今それを定義し直すことが、誰もが生きやすい社会を作るのではないでしょうか。タレント・エッセイスト 小島慶子さんのコラム。

ジェンダーギャップ指数121位のこの国で、今こそ「生理」を再定義しよう。

■生理はいやらしいことでも恥ずかしいことでもない

生理の仕組みを人に説明できますか。しようと思うと意外と難しいかもしれません。早速練習しましょう。できれば簡単な図も描けるようにしておくといいですね。会社のホワイトボードにサッと子宮の絵を描いて、内膜が剥がれ落ちては厚くなるサイクルがあることや、その剥がれ落ちた内膜を子宮がぎゅうっと収縮して排出するということを、基礎知識ゼロの上司にも説明できるようにしておくといいでしょう。

これ、冗談ではありません。生理について正確に知っている人は非常に少ないのです。特に多くの男性は、「女性は毎月股から血が出るらしい」という程度の認識で、おそらくあれほどの量が排出されるとは思っていません。制御しようもなく絶え間なく出血することや、数日にわたって行動が制限されることや、体調がホルモンに振り回されることも知らない人が大多数。なぜって、「男の子にも生理について教えなくちゃ」という理解が、日本社会で浸透していないからです。

でも、男性も女性の生理の仕組みや、必要なサポートについて知っておいたほうがいいですよね。自分とは違う体の仕組みで生きている人たちと、一緒に社会を作っていくわけですから。生理はいやらしいことでも恥ずかしいことでもなく、人体の摂理。女性器に関することがことごとくエロの領域に入れられているのは、それが女性の身体の一部ではなく、男性の性欲の対象物として扱われてきた歴史があるからです。

生理を文字通りの生理現象として語ることは、エロの領域に不当に押し込められている女性の摂理を、尊厳ある命の営みとしてこの手に取り戻し、定義し直すことです。ここ数年、そのような動きが世界各地で起きているのは希望が持てますね。

■生理の話をしたら「昼間から下ネタかよ」

生理用品への課税をなくそうという運動もそのひとつ。私の家族が暮らすオーストラリアでは、女性たちが股間を赤く染めたコスチュームでデモをして、生理用品は生活必需品だと訴えた結果、商品サービス税が非課税になりました。なぜ今までそうではなかったかというと、多くの社会制度が男性中心の発想で作られてきたから。彼らにとって生理は他人事。病気じゃないのだから……という感覚なのですね。それを「人が生きるために必要不可欠なもの」として定義し直したのが、非課税化の運動なのです。

生理について他人に話すのは、相手の頭の中に自分の性器に関するイメージを想起させることになるので恥ずかしいと感じるかもしれません。相手が性的な視線で自分の体を見る状況を自ら作り出すことになるのではないかと恐れる気持ちもあるでしょう。そう感じてしまう自分自身にも、すでに「生理=エロ」が刷り込まれているのです。まずはそれを外すことから始めましょう。

以前、ラジオで婦人科の先生と生理に関する対談をしたことがありました。女性の健康を考える真面目な対談です。それに対して「昼間から下ネタかよ」「萎えるわー。こういう女が増えるから少子化になるんだよ」という男性の声や「昼間からはしたない」という年配の女性の意見が寄せられました。それを読んで、よし、もっとやろうと思いました。生理の話は普段から真面目に語っていい、ごく当たり前の話題なのだと、多くの人に伝えなくちゃと思ったのです。

生理について語るときのポイントは、恥ずかしそうにしないこと、申し訳なさそうにしないこと、真面目に、自分の体に敬意を払って、当然のこととして語ることです。

逆にもし後輩や部下から相談を受けたら、反射的に性的な話を扱うような態度をとってしまわないように心がけることが大事です。気を遣ったつもりで、急にひそひそ声になったりもじもじしたりすると、相談者はかえって言いづらくなります。何であれ体に関することは、プライバシーに配慮しながら、真剣に話を聞くべきですよね。

普段から「体調不良などで辛いときには、我慢しないで早めに相談してほしい。女性の場合は生理に伴う不調もあると思うが、それも遠慮なく言ってほしい」と話しておくことも大事ですね。「生理」を「頭痛」や「アレルギー」などの単語と同じように淡々と言うのが肝心です。人の体に起きる当たり前のことですよね、という気持ちで言いましょう。

物ごとは、話す内容以上に、話すときの態度が重要です。それが人々の意識を変えるのです。

■生理で休む人をなくすのではなく、性差別をなくす

私は重いPMSに悩んでいたので、交際する相手には必ず生理の仕組みとPMSについて説明していました。ぼかしたりせずに、大真面目に健康問題として話すと、相手は大抵「そんな大変なことがあるんだね」と一生懸命聞いてくれました。もし「興醒めな話をするなよ」なんて言う男だったら、速攻別れたほうがいいでしょう。

PMSと言っても個人差がありいろいろでしょうが、私の場合はむくみや肌荒れ、頭痛、そして何よりもメンタルが嵐のように不穏になるのが辛かったです。怒りの衝動が抑えられなかったり、強い抑うつ状態になって「死にたい」とすら思ったり、何をしても激しい自己嫌悪に陥るばかりで、当時の恋人だった今の夫にそんなしんどさを全部ぶつけていたので、彼も本当に大変だったと思います。

婦人科で相談したものの出された漢方薬が体に合わず、ピルも飲んだけれどあまり合わず、多少落ち着いたのは、出産してからでした。それでも毎月の生理が苦痛でならなかったので、40代に入ってから、「ミレーナ」という子宮内で黄体ホルモンを放出し続けるIUDを装着しました。これによってほぼ毎月の出血とお別れすることに成功。たまにほんの軽い出血があるくらいで、体調も落ち着いています(※1)。いわば擬似閉経のような状態で、以前のようにホルモンのジェットコースターで上がったり下がったりしては辛い生理を繰り返す生活から解放され、一気にクオリティ・オブ・ライフが向上しました。

生理の問題は、人生の質そのものにも関わることがあります。躊躇しないで専門家に相談してください。生理の不調で仕事を休むことは、甘えではありません。「病気ではないのに」と後ろめたく思う必要もありません。生理の不調には病気が隠れていることもあるし、そうでなくても通常通り業務を行うのが難しい状態なら、それが病気であるかどうかにかかわらず休む権利があなたにはあるのですから。

もしも女性の上司が「それぐらいで」と言ったら、その人は人の数だけ生理があることをわかっていません。「そんなことで休むと女性はやはりダメだと思われる」などというのも筋違いです。生理で休むことを理由に仕事の能力が正当に評価されないのは性差別です。

生理で休む人をなくすのではなく、性差別をなくすのが責任ある立場の人のやるべきこと。女性上司に言われたのなら仕方がない……と諦めずに、社内の相談窓口や労働組合に相談してください。また、男性上司でも理解のある人はいるかもしれません。女性の問題は女性にしかわからないと思わず、信用できる人を探してみましょう。

■私たちは「当たり前」を変える力を持っている

そもそも生理で仕事を休むことは「女性の問題」ではありません。さまざまに異なる事情を抱える人々が、誰しも健康に安全に働ける職場づくりの課題なのです。

これまで長い間、働くということは「男の世界に入る」ということでした。男性も女性も、「あるべき男の流儀」に合わせることが、良き働き手となることだったのです。でも今、世界の潮流はジェンダー平等へと大きく舵を切っています。日本は残念ながら先進国で最も男女格差が大きく(※2)、男尊女卑が根深く残っていますが、それでも最近は職場での性差別的な服装規定の見直しや、ハラスメントへの対処を厳しくする動きが進んでいます。これまでタブー視され、軽視されていた生理の問題も、働く人の健康に関わる大事な問題であると認識を改める必要があるのです。

もしも今あなたが、生理について職場で提案したり発言したりしたいと考えているなら、仲間を探してみるといいでしょう。これまで困っていても言えずにいた人が、きっと近くにいるはずです。組合を通じて社内でアンケートをとるなどの方法も検討してみる価値があります。小さな声でも、集まれば力になる。私たちには「当たり前」を変える力があるのです。


※1 合う薬や薬の効果には個人差があります。生理に伴う体調不良は医療機関に相談の上、医師の指示を仰いでください。
※2 各国の男女格差の大きさを示す「グローバル・ジェンダー・ギャップ指数(世界経済フォーラム)」の2019年版において、日本は世界153カ国のうち121位。G7のなかで最低の順位となった。

生理に伴う不調にお悩みの方へ

重い生理痛やPMSの症状は、多くが医療の力で緩和できるものです。産婦人科医 髙橋怜奈先生のコラムもぜひご覧ください。

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小島 慶子

タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族と暮らすオーストラリアと仕事のある日本を往復する生活。小説『わたしの神様』が文庫化。3人の働く女たち。人気者も、デキる女も、幸せママも、女であることすら、目指せば全部しんどくなる...

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