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介護は相手あってのこと。一方的に「してあげる」ものじゃないと知りました【さとういもこ】

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介護について考え始める人も増えるDRESS世代。既に介護を経験している女性のリアルな声を聞いてみませんか。ブログ『さとうさんちの介護な日々』で義母・サトコさん(故人)について綴っていた、さとういもこさんへのインタビュー後編です。介護の記憶から、介護をしながら「共倒れ」にならないための考え方まで幅広くお話を伺いました。

介護は相手あってのこと。一方的に「してあげる」ものじゃないと知りました【さとういもこ】

介護はいつか終わるもの。でも、現在進行系の介護ブログでその終焉までを綴ったものはほんのわずかです。

イラストレーターのさとういもこさんは、2017年8月に他界した義母のことを、自身のブログ『さとうさんちの介護な日々』で、10月に公表しました。出産、介護&育児のダブルケア、義母の容態急変……と、怒涛の日々が描かれています。

インタビュー前編「介護中、義母を『愛おしい』と感じました」に引き続き、さとうさんに仕事を持つ女性が育児をしながら介護をどう乗り越えてきたのか、話を聞きました。

■息子の育児&義母の介護を同時に進めた時期

――さとうさんはいつ出産されたのですか?

2016年3月です。男の子が産まれました。ブログでは「しお太郎」として登場しています。帝王切開だったので、1週間入院しました。その間の義母のお世話は、実家の母に頼むこともありました。

事前に書いておいた長い長い対応マニュアルを渡して……。本来ならば義母と同じような立場にある実母に、サトコの世話を頼むのは心苦しかったのですが、快く引き受けてくれたのでありがたかったです。

――退院すると、育児と介護の両方をこなすことになります。

私がどうしても育児にかかりっきりになってしまうので、夫と約束したわけではないのですが、私が子どもを、夫がサトコをと、自然と分担するようになりました。

介護も育児も「ひとりで生活できない人」をフォローする、生きる手伝いをするという点ではどちらも同じなんですよね。ただ、世話をする・されるの関係に固定されてしまうと息苦しくなってしまう。最近言われる「ワンオペ育児」のつらさはそこにあるのではないでしょうか。

我が家は介護と育児の環境にありましたが、どちらも1対1の固定された関係ではなく、2対2で取り組むことができました。夫とふたりで両方のお世話をすることで、「当事者は私だけじゃない」という心の余裕につながっていたと思います。

――旦那さんは自営業ですが、いつも家にいるわけではないですよね。その際のお世話はどうされていたのですか?

当時は乳飲み子優先で、サトコは後回しですね(笑)。大人はお腹が減っても泣いたりしないですし、ちょっと目を離しても死ぬ可能性は低いですから……。

ただ、その分サトコに負担をかけていた部分はあると思います。かわいい孫のために我慢してくれたこともあるんじゃないかな。そういう点では彼女は辛抱強い人で、過剰に注文をつけたり、人に文句を言ったりすることのない人だったので、こちらが甘えている部分もありましたね。食事などもわがままを言わないので、助かるなあと思っていました。

――ブログにサトコさんは家事や育児を手伝ってくれるわけではないけれど、「おばあちゃんと赤ちゃんが見つめ合う姿はたいへん微笑ましくて爆萌え」と書いてありますね。息子さんとお義母さんの関わりについて教えてください。

サトコも息子が大きくなる様子を楽しんでいました。サトコにとって、しお太郎の存在はそりゃあ大きかったと思います。待望の「内孫」ですから。リウマチで手が悪いので抱っこはあまりできませんでしたが、同じ家にいれば顔を見るたびに声をかけてあやすことはできます。

会話が少なくなりがちなサトコが声を出す機会が増えたし、何より赤ちゃんがいると家の中の明るくなるんです。生きる希望というと大げさかもしれませんが、「しお太郎の成長を見たい」という気持ちが、サトコを元気にさせてくれていたと思います。

私は赤ちゃんと暮らした経験がなかったので、赤ちゃんのあやし方など学ぶこともありました。

寝ながらぐずるしお太郎のお腹をポンポンして、「ねんねだよー」と長〜い時間をかけて寝かしつけてくれて、結果的にすぅっと息子が寝たのを見たとき、ああやって寝るまで粘ってこその寝かしつけなんだ、途中で諦めちゃだめなんだ! と(笑)。

■全力で向き合った分、思い残すことはないけど寂しい

――サトコさんの体調の異変に気づいたのはいつですか?

2016年12月、数日の発熱をきっかけにサトコの食欲が突然がくんと落ちました。食べやすいお粥や、やわらかい食事を用意してもひとさじ、ふたさじぐらいしか食べることができない日が続き、さすがにおかしいなと思いました。

年末年始に体調が急変するといけないので、休みに入る前日、念のために病院に連れて行くと、肺炎が見つかってそのまま入院しました。

――育児もあるなか、サトコさんの体調が回復せず、12月は気が気でなかったと思います。正直、お義母さんの様子を目の当たりにしたとき、どう思いましたか?

どうやったら治るんだろう。食事かな、生活かな? って。腰が痛いと言っていたのでベッドを替えたり、いろいろ工夫しました。何年か病気をせずに過ごせていたので、早く元気になってほしいと思いました。

その反面、何度か近くの病院で診てもらっても原因がはっきりせず、まだ9カ月の息子に伝染るんじゃないかという心配がありました。また、このまま寝たきりになったらどうしようと悪い想像もしてしまいます。

これから行動範囲も増え、遊びたい盛りの息子に対して、「おばあちゃんのお世話があるから、外に遊びに行けないよ」と説明しなければならなくなったらどうしよう。近くの公園にすら息子を連れていけなくなったら、正直どうしてくれるんだ……とも思っていました(笑)。

――旦那さんにはご姉弟もいらっしゃるそうですね。ご姉弟はサトコさんの介護を手伝ってくれていましたか? 入院中に何かきっかけはありましたか?

ちょくちょく顔は見せてくれますが、何かしてくれるわけではなかったので、自分の親なのになあ、当事者意識がないんだろうなあと、もどかしさを感じていました。介護の大変さそのものではなく、自分以外の生活や体調の管理をしなければならない、休みのない緊張感をもっと理解して……できればたまには代わってほしいなと思っていましたね。

でも最終的にはよく手伝ってくれるようになったと思います。そのきっかけが入院でした。みんなでLINEを交換して、日替わりでサトコのもとに行くようになったんです。

姉弟たちにしてみれば、入院したことでサトコのもとを訪れやすくなったんじゃないでしょうか。家で面倒を見ていると、訪れる姉弟たちはいわば「お客さん」です。お茶や菓子を出されて世間話をして、さあ一歩踏み込んでサトコの生活に介入できるか……というと、どうしても遠慮してしまうんじゃないでしょうか。

でも、病室を訪れればサトコとは親子水入らず、1対1の関係になることができる。昔話もスキンシップも誰にはばかることもありません。そういった意味では、最終的に義母が入院したのは良かったことだと思います。

――終わりが見えないと思われたサトコさんのお世話ですが、今年8月に亡くなられることで、介護を終えることになりました。今、思っていることはどんなことですか?

一緒に暮らした家族を亡くした悲しみ、寂しさはもちろんあります。特に介護が必要になってからは濃い関係を築いていたと思うし、もうサトコに何もしてあげられないと思うとポッカリと穴があいたような気分にもなります。

ただ、自分でできることはすべてしてきたので、思い残すようなことはありません。葬儀のときに、夫の親族、仕事関係の方からも「がんばったね」「寂しくなったね」と声をかけてもらえましたし、向き合ってきた甲斐があったと思います。

こう言うのもなんですが、サトコ自身はみんなに大切にされて、幸せな晩年だったのではないでしょうか。今は介護サービスがなかなか受けにくいとは言っても、体の状態や経済的負担を考えて利用者側がサービスを選択することができました。

でもこれが5年後、10年後になったら、…もっと先、自分たち世代の順番になったら、今回のサトコと同じようなお世話が受けられるかどうかはわからないですよね。

伴侶も先に亡くしているし、持病もありましたし、最後に孫にも会えたし(笑)、サトコ自身、思い残すことはないんじゃないかな。サトコはよくがんばってくれたと思いますよ。

■自営業でも会社員でも……介護と仕事の両立は簡単じゃない

――旦那さん、さとうさんともに在宅ワーカーであったから、仕事と介護が両立できたと思いますか?

両立できていたとは言えないですね。かなり仕事が犠牲になっていますよ(笑)。睡眠を削って時間を捻出するのが常態となり、その分仕事に影響があるという意味では、会社にお勤めの方も同じだと思います。ただ常に目の届く環境ではあるので、いちいち家に帰ったり、介護離職を考えたりしなくて済んだのは良かったです。ただ、家にいる分、介護を忘れる時間はないので、緊張感はずっと続きますね。

――介護をしながら、仕事の時間をどう見つけていましたか?

付きっきりで見なければならないというわけではなかったので、時間がないわけではありませんでした。ただ、常に視界に入るように、あるいは困ったことがないか、耳をそばだてて様子を伺っていましたから、仕事に集中していたかというと怪しいですね(笑)。

サトコがデイサービスに行く日は、彼女が朝出かけてから16時くらいまでを仕事の時間に充てていました。週に2日だけでしたが、送り出した時の開放感を思うと、いかに普段、気を使っているかを実感しました。実はちょっと寂しくもあるんですけどね(笑)。

――サトコさんは入院後、介護老人保健施設に移られます。ようやく施設に入所できたときに、ブログに「かなり『ラク』なのです!!!!」と書いてあったのが、印象的でした。

楽だと思ってしまう自分にうしろめたさがありました。在宅介護も悪いことばかりじゃないよというスタンスで漫画を描いているのに、「やっぱり施設の方が楽じゃん」と思ってしまうのは読者への裏切りのような気がして。

でも、家族だけでなく本人にとっても在宅介護が絶対に良いわけではない場合もあるので、施設に入れるのであれば、そういう選択肢もいいんじゃないでしょうか。家族が無理をして疲弊しながらの在宅介護は、長く続けられないと思いますし。

■共倒れしないために必要なのは、自分を過信しないこと 

――在宅介護にこだわる必要はないというお話が出ました。共倒れにならないようにするには、どうしたら良いですか?

自分を過信しないことですかね(笑)。自分がちょっとでも倒れそうな未来が見えたら、何かまだ変えられるところはないか考える。サービスを利用して、負担を減らすのか、人を巻き込んで手を増やすのか、本人に自立を促すのか。私はとにかく自分を信用してないんだと思います。

サトコが大腿骨骨折後に自宅に戻る際、病院の先生から「退院するにあたって、心配なことはありませんか?」と聞いていただきました。サトコの足の状態では難しいと思っていましたので、「お風呂がちょっと……」と切り出したんですね。

すると、「介護サービスを使うのはどうですか?」と先生から提案されました。そのときは、退院イコール在宅介護だとは思っていませんでしたので、そうしたサービスが使えること自体、目からウロコでした。

その後、1日でも早く介護サービスが受けられるよう動いて、退院後1カ月半で要介護2の認定を受けることができました。1カ月半で要介護認定が出たことは、他の地域に住む方からすると早いと聞きますが、先の見えない1カ月半はかなり長かったですよ。今思い出してもあのときが、一番精神的に大変でした。

昨年末に入院させたときも、毎日サトコの食事の様子を夫が見に行っていましたが、半年近く毎晩となると、さすがに家で待っている私の方がキツくて。病院や施設に入っても、ラクなことばかりじゃないんだなと思いました。

それならば、協力者を増やそうと姉弟たちに相談したんです。快く引き受けてくれて、日替わりで様子を見に行くことになりました。もっと早く相談していればよかったと思ったぐらいです。困ったら何かを変える、本当にその繰り返しですね。

――自分ひとりでお世話ができると過信せずに、サービスを受けたり、協力者を募る以外で、介護で準備できることはありますか?

私は小さい頃から祖父母と同居していて……かわいがってもらいましたし、かなり「おじいちゃん子」だったんです。祖父は92歳まで長生きして、私が28歳のときに亡くなりました。

人は歳をとると体が衰えて、できることがだんだん減っていくのを、体感として知っているというのはすごく大きいんじゃないかと思います。人は誰しも歳をとり、いずれは自分もそうなるんだということを知っておくのは、介護だけでなく高齢者と接する上で大事かもしれません。

あとは、祖父母、親といった介護予備軍といえる人たちとの関係を普段から良くしておくことだと思います。病気や怪我、認知症になったからといって、急に人に甘えられるものでもないと思うんです。頼れる、甘えられるってことはお互いの信頼関係がないとできませんよね。

介護は一方的に「してあげる」ものじゃないんです。相手あってのこと。もし介護する・される予定があるのなら、なるべく早いうちに信頼関係を築いた方がいいですね。

これは極論かもしれないですが、将来的に親と同居する可能性があるのならば、最初から同居しちゃった方がいいです(笑)。親子3〜4人の人間関係ができているところに、後から他人が入るのは、お互いにとってストレスですし、高齢になってから住環境を変えることのリスクもあります。

家族が増えれば厄介ごとは増えますが、家事もシェアできてメリットも大きいです。それに、おじいちゃん、おばあちゃんと暮らす影響って、そこで育つ子どもにとっては大きいと思うんですよね。

世の中の流れには逆らっているかもしれませんが、同居の良さ、メリットを知って選択する人がもっと増えるといいなあと思います。我が家もサトコが亡くなって3人家族になってしまったので、私の実父母が元気なうちに同居したいなって考えているところなんです。

(完)

さとういもこさんプロフィール

イラストレーター。義母の介護と子育ての漫画を描いたブログが注目を集める。
http://satouimoko.hatenablog.com/archive

Text/横山由希路
プロ野球の見すぎで「やきうモンスター」とあだ名されるライター&編集者。エンタメ系情報誌の編集を経て、フリーに。コラム、インタビュー原稿を中心に活動。ジャンルは、野球、介護、演劇、台湾など多岐にわたる。

イラスト/さとういもこ

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DRESS編集部

人生を自分らしく楽しむ大人の女性たちに、多様な生き方や選択肢を提案します。

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