■「高揚感」が不倫の理由になる
不倫がしたいと思っても、誰でも良いわけではありません。
秘密を守ってくれる人間であることは大前提、それで自分の都合の良いときに会ってくれて、楽しく過ごせる人。
そんな男性をイチから探すとなると、当然ながら簡単には見つかりません。
それでも、相手が欲しい。
元カレだったら、自分の性格やセックスについてもよく知っているし、仕事についてはこっちも把握しているから会える時間を調整できる。
完全に、彼女の都合だけで選ばれた人物でした。
「よく元カレも乗ってきたよね」と言うと、
「仕事が忙しくて彼女を作る暇がないって前から言っていたから、誘えばいける気がした」
と彼女は答えました。
男性からすれば、別れて人妻となった元カノは、いわば「おいしい」存在です。
結婚という責任を取らずにセックスだけ楽しむことができる。面倒なデートも考えなくて良いし、ホテルに直行してベッドで過ごしたら後はそれぞれ好きにできる。
「後腐れのない関係」を続けられる存在として、これほど条件の良い女性はいないでしょう。
それを理解した上で誘い、実際に元カレが不倫相手となって、彼女は欲しかったものを手に入れました。
それは、人妻の自分が不倫という「秘密」を持った高揚感です。
確かにセックスも楽しみたいし、愛情も少しは感じたい。でも本当に実感したかったのは、退屈な毎日に刺激をくれる興奮でした。
「旦那とは平日あまり話もできないし、正直働いていたころが懐かしいと思うときもある。気分を変えるものが欲しくて……」
これが彼女の本音です。
「気分を変えるもの」が、誰にとっても不倫である必要はありません。
それでもリスクのある関係を望むのは、それが他人には言えない後ろめたい秘密であり、そんなスリルが自分にもたらす高揚感は何よりも濃くて深いものだから。
相手が元カレというのも興奮が増すものです。
「夫以外の男性」という許されない存在として、かつて関係のあった人だからこそ、自分にかまってくれない夫に対する「あてつけ」にもなります。
夫に対する罪悪感や、バレたときの恐ろしさ、元カレへの失礼な扱い。
ブレーキになるはずのこれらをしのぐ熱量が、彼女にとって魅力的でした。
不倫に走った理由は、「秘密」が持つ高揚感だったのです。
■後に残るのは虚しさだけ
「でもね、だんだん虚しくなっちゃって」
彼女から打ち明けられたとき、すでに元カレとの関係は終わっていました。
「何が?」
「だって、別に元カレのことが好きなわけじゃないし……。エッチは気持ちいいけど、それだけだなぁって。時間作るのが面倒くさくなって」
高揚感は長くは続きません。
関係を止められずにずるずると引きずってしまうのは、そこに確かな感情があるからです。
ただ刺激と興奮が欲しい彼女にとって、「不倫という秘密のためだけのつながり」は、相手が恋しくなるようなせつなさも、夫を捨ててまで相手を選べないという絶望も生みません。
不倫を続けるにはエネルギーが必要ですが、簡単に手に入るつながりは、そんな努力をする気にはなれないのですね。
そして、
「元カレも、何か本当にセフレみたいな感じで接してくるのが嫌になって」
という点。
かつて愛し合った男性に、性欲処理相手のように扱われること。わかっていて選んだのに、結局はそんな状況に幻滅し、嫌悪感が湧いてきます。
対等なつながりを望むなら、不倫なんて関係は最初から間違っています。
それは、お互いを尊重しないこと。自分勝手な欲に付き合わせても、後に残るのは虚しさと失望だけです。
彼女は元カレと連絡を取ることをやめました。
結婚前、付き合っていたころの楽しかった思い出も、不倫相手に選んだことで後味の悪い記憶になってしまったのです。
■これからも抱え続けるリスク
一度不倫関係を結んでしまうと、「夫を裏切った」事実は一生付きまといます。
もし元カレが心変わりをして、彼女に「関係を続けないなら、旦那に不倫していたことをバラすぞ」と脅してきたら。
独身の彼のほうは、彼女との関係を気楽に続けられます。弱みを握ったまま、好きなときに体を要求することだってできるのです。
一方、彼女は結婚している身なので不利な状態です。夫に知られれば離婚の危険性もあるし、以前いた会社の人間に噂が広がることも考えられます。
相手が漏らさなくても、どこで誰に見られていたか、何がきっかけでかつて不倫していたことが露見するかは、誰にもわからないのです。
そして、彼女自身、安易にほかの男性と肉体関係を持った本当の罪悪感は、元カレと別れた後から襲ってきたといいます。
それを懺悔する勇気もないまま、これからも夫と生きていくことを選びました。
最中はそんなことも他人事かもしれませんが、終わってみればこれだけのリスクを抱えて結婚生活を続けていかなければいけません。
一度の不倫で彼女が手にしたのは、つかの間の高揚感だけでした。
そして後に残るのは、虚しさとリスクだけなのです。
37歳で出産、夫と子どもの三人暮らし。何歳になっても恋愛ネタ大好物。恋愛相談家としてこれまで多くの男女から話を聞いてきた経験を活かし、復縁についてのアドバイスや不倫などさまざまな「愛のカタチ」について書いていきます。
人生...