「お子さんはまだですか?」なんて大きなお世話。実に無責任な圧力だ

「お子さんはまだですか?」なんて大きなお世話。実に無責任な圧力だ

結婚して、子どもがいれば果たして幸せなのでしょうか? 「家族という病」などで大きな話題を呼んだ下重暁子さんは、「子どもをもたない」人生を選んだ一人。近著『わたしが子どもをもたない理由(わけ)』(かんき出版)に綴った、下重さんの家族観や夫婦観を、お伝えしてきた連載も今回が最後です。


■「お子さんはまだですか」という失礼なセリフ

子どもを持つという責任について、私自身を振り返ってみると、自分自身への責任さえ持てないのに、子どもへの責任など持てないというのがあった。

つれあいは成長した大人だから、私と違おうと何をしようと私が責任を持つ必要はない。どんな時代が来ようと、大体同じ年代なのだからそれぞれが乗りこえていくしかない。

子どもは自分とつれあいとが作るものだ。これから生まれてくるものを、自分たちにとって必要だとか、自分たちの欲しいという願望で作ってしまっていいものだろうか。

もう一つある。社会から結婚の次は子どもと何となく強要される。
「お子さんはまだですか」とは何という失礼なセリフだろう。
なぜ他人のお節介までする。それが一種のお世辞にもなっている。

結婚式でも世間の常識がすべてと思っている大人たちは必ず子どものことを言う。
実に無責任な圧力。しかも自分の父母、祖父母といった人から早く孫の顔が見たいなどと言われると、気の弱い人はそれが務めかと思いこみ無言の圧力に負けてしまう。

「ほっといてよ」「私の人生なのだからまかせといてよ」と言える人の数は少ない。なぜそんなに素直になれるのだろう。

私ならそれだけで反発して「絶対産むものか」とか「そんなに欲しければ自分で産んだらどう?」とたてついてしまうだろう。

なぜ静かに一人ひとりの判断にまかせてくれないのだろうか。

■子どもは親の分身、一部ではない

子どもを持つという責任は重い。自分の人生ではなく子どもの人生まで背負いこむことになるのだから。何も考えずに産む人にとっては、子どもは分身、自分の一部、という思いがあるのだろう。
子どもは自分のものと信じて疑わない人がいる。

自分の腹を痛めて自分が産み育てたとしても自分とは違う一個の個であって私とは違う人間なのだ。
生まれて間もなくはわからなくとも、育ってくる過程で個が少しずつ出てくる。似てはいても自分とは非なるものだ。だからこそ面白い。

私は自分の身ですら、扱いかねている。自分のやったこと考えたことは自分に戻ってくるから、やむを得ず責任をとらねばならないが、それ以外は無理だ。

私はほとんど他に期待することがない。子どもはいないから当然だが、つれあいにも期待しない。父や母にもある時点から期待しなくなった。

するとずい分ラクになった。
他人に期待すると期待通りにいかない落胆は大きい。期待通りではないからといって他人のやることに文句は付けられない。

その結果起きてくるのは、文句と愚痴、それがストレスになって溜まってくる。他に期待してもろくなことはない。この場合の他には子どもも父母もつれあいも含まれている。私と違う人間という意味だ。

■他人に期待するから不満がたまる

私もかつては他に期待して何度も痛い目に遭った。その結果、他に期待せず自分に期待することにしたのだ。

自分に期待すれば、自分の責任であり、自分に戻ってくる。自分に落胆しても、また一から始めればいい。

他に期待しないで思いがけず、何かをしてもらった時の嬉しさはない。結婚記念日や誕生日を憶えていなかったからといって文句を言うより、何も期待していない時に思いがけず憶えていてくれると嬉しい。

憶えているのが当然と思いこんでいる肉親の場合に不満は大きくなる。
高じると、夫の出世やら、子どもの進学にまで期待する。いかに本人にとってはしんどいものかという想像すらしない。

子どもを持つ責任は大きい。私は子どもの時病弱だったこともあって、自分一人を食べさせ、自分一人を支えていくのがやっとなのである。

『わたしが子どもをもたない理由(わけ)』書籍情報

わたしが子どもをもたない理由(わけ)
著者:下重暁子
発行:かんき出版
単行本:240ページ
発売日:2017/5/22
価格:1188円

[公式サイト]
https://kanki-pub.co.jp/pub/book/details/9784761272555

下重暁子さんプロフィール

作家。日本ペンクラブ副会長。日本旅行作家協会会長。
早稲田大学教育学部国語国文科卒業。NHKに入局。アナウンサーとして活躍後フリーとなり、民放キャスターを経たのち、文筆活動に入る。ジャンルはエッセイ、評論、ノンフィクション、小説と多岐にわたる。公益財団法人JKA(旧:日本自転車振興会)会長等を歴任。
著書に、60万部を超すベストセラーとなった『家族という病』(幻冬舎)をはじめ、『持たない暮らし』(KADOKAWA/中経出版)『母の恋文』(KADOKAWA)、『「父」という異性』(青萠堂)、『老いの戒め』『若者よ、猛省しなさい』(集英社)などがある。

下重暁子さんが「子どもをもたない」人生を選んだわけ

https://p-dress.jp/articles/4714

“子どもをもたない”という選択肢について語られることが増えています。「家族という病」などで大きな話題を呼んだ下重暁子さんも、「子どもをもたない」人生を選んだ一人。近著『わたしが子どもをもたない理由(わけ)』(かんき出版)に綴った、下重さんの家族観や夫婦観を前回に続き公開します。

この記事のライター

人生を自分らしく楽しむ大人の女性たちに、多様な生き方や選択肢を提案します。

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