「相手の考えを変えてやろう」では幸せになれない【成功する結婚#7】

「相手の考えを変えてやろう」では幸せになれない【成功する結婚#7】

愛し合っているカップルでも、政治や宗教についての考え方は違う場合もあります。時に激しい議論にまで発展してしまう可能性があるこれらのトピック。夫婦となる人との間で考え方の違いがあるときはどうしたらよいのでしょうか。


政治や宗教は「タブー」な話題

夫と私が結婚する前に受けた「プレマリッジ・セミナー」の内容を紹介するこのシリーズ。

第7回では、「政治と宗教」という項目について考えてみます。



プレマリッジ・セミナーとは

他人であるふたりの人間が一緒になり、家庭を築いていくにあたって、事前に知っておいた方がよいことについて理解を深めるために行われる話し合い。多くのカップルが集まり、それぞれにカウンセラーがついて話し合いをすすめる。

話し合う項目には、価値観、お金、家族関係、友人関係、コミュニケーション、性生活、政治、宗教……などがある。

私たちが受けたプレマリッジ・セミナーは、そもそもはアメリカで生まれたコンセプト。そのためセミナーに出席するカップルの片方はアメリカ人という状況でした。

ちなみにアメリカでは、知らない人同士が集まるパーティなどの場では、「政治と宗教の話はタブー」とされています。どちらのテーマも、異なる意見があった場合に喧嘩に発展したり、その場の雰囲気を壊してしまうという危惧からでしょう。

言い換えると、これらのトピックは容易に「火種」になりやすいのです。

プレマリッジ・セミナーの場でも、司会進行をしたカウンセラーは「これも、とても重要なトピックなので、適当に端折ることはしないでください」と言っていました。

政治や宗教が結婚生活に与える影響

前回の記事で、私が夫の家族に結婚を反対されていたと書きましたが、その理由のひとつは「宗教が違う」というものだったから。

実際に、私に相談してくれた方も、「婚約するというところまで話が進んでいたけれど、相手の家族から彼らの信じている宗教への入信を強くすすめられて、その人との結婚を諦めた」という過去について話してくれました。

また、政治にしても、そもそも関心がない、議論するだけの知識がない、あるいは投票に行っても無駄だと思うから行かない、という考え方の人と、自分なりに考えて選挙権を行使し、社会に参加していかなければ、政治に対して文句を言う資格もないと信じる人の間には、簡単には埋められない溝があるのではないかと感じます。

政治と宗教それぞれについて、思い入れがある人と、関心が薄い人の間には亀裂は起こりにくいのでは? と思うかもしれませんが、どちらも「相手に自分の視点を理解してほしい」という気持ちが少しでもある場合は、それが普段の言動にも表れて、喧嘩に発展してしまうこともあるでしょう。

「夫婦」という不思議な関係

たとえ、特定の政治政党を支援していたり、宗教が生活の一部……というのではないにしても、夫婦として生活していく中で、「生きる上で自分が大切にしている価値観」を問われる場面に遭遇することもあるでしょう。

作家の曽野綾子さんが書いた『夫婦、この不思議な関係』(ワック刊)という書籍のなかで、こんな場面がありました。

自分と夫が町を歩いていると、若い女性が包丁を振りかざした男に襲われているという事件に遭遇。自分たち夫婦はどうしたらよいのか試練に立たされる、という設定で、考えられるシナリオが説明されていきます。

1、夫が、襲われている若い女性を助けに行こうとして自分が止める(あるいは、自分が行こうとして夫が止める)。

2、夫が助け行き、に自分は止めることをせず、夫が刺されてしまう。

3、夫婦ふたりともが助けに行き、ふたりとも被害に遭う。

4、夫婦ふたりともが物陰に隠れて見守り、若い女性は死んでしまう。

などなど。

このような状況で、命の危険を顧みずに助けに入る、ということを咄嗟にできなかったとしても、誰も非難する人はいないだろう、としつつも、曽野さんは「私だったら、夫がこの状況で何もせずにいたら、彼への尊敬の念は失うだろう。でも、同時に自分のそのような気持ちが、時としては夫を殺すことになるだろうとも理解している」と書いています。

いずれにしても、「夫婦で首尾よく強盗を取り押さえた」というのでない限り、自分たち夫婦は苦しむことになる、と曽野さんは結論づけています。

人生哲学が露呈するような経験

夫婦どちらか、あるいは両方にそれぞれ信仰する宗教があった場合、結婚したあとの生活に、それがどんな影響を与えるかを、あらかじめ話し合えればベストです。

とくに信じている宗教がない、という場合でも、このストーリーのような事態に実際に遭遇したら、自分だったらどうするのか? 相手にどうしてほしいのか? ということを考えたり話し合ったりすることは、お互いの人生哲学を浮き彫りにする意義があるでしょう。

世界では毎日いろいろなことが起こっています。

日本の国内外をとりまく情勢についてはもちろん、私にとっては第2の故郷でもあるアメリカで起こっている人種差別の問題なども気になります。とくに、このアメリカの国内の情勢は、政治と宗教が絡み合って問題を複雑にしているよい例ともいえるでしょう。

簡単に白黒をつけることが難しい時事ニュースや、優れた小説なり映画なりのテーマを材料にして、お互いに「生きる上での拠り所としていること」について、折に触れて話し合ってみてください。

そうすることで、人間のより本質的な部分についても理解を深めることができますし、精神的にもより豊かな夫婦生活が送れるのではないでしょうか。

「合意は難しいということを受け入れる」という選択

この連載で今まで取り上げてきたどのテーマにも共通して言えることですが、ふたりが「同じ考え方をしなければならない」ということではありません。

政治や宗教というトピックは、往々にして「その人のコアとなる信条」に触れるものでもあるので、最初から「相手の考え方を変えよう」とするようなコミュニケーションは逆効果になる可能性が高いでしょう。

今までに自分が得た知識や経験から、その政治信条や宗教に対して既になんらかのイメージを持っていたとしても、ひとまずそれは置いておく。そして、オープン・マインドでお互いに話を聴こうという姿勢が大事です。

信条が違っていても、やはり一緒にいたいと思えるような相手であれば、"agree to disagree" つまり「ふたりが合意できないことに合意する、ということで納得しよう」という選択もあります。

なかなかこの選択ができずに、いつまでも相手を説得しようとし続けるカップルがいますが、それは相手を尊重していないことにつながり、かえって問題を悪化させてしまいます。

それよりも、お互いの違いを認め、受け入れ、そのトピックに関わる話し合い方などについてのルールをふたりで決めていく方が、「それでも一緒にいたい、一緒にいるからにはできるだけハッピーにやっていきたい」というゴールに近づく、より建設的な道だと思います。


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この記事のライター

カップル&ファミリーコーチ。好きな人と結婚して、結婚した人を好きでいる方法を日夜研究中。著書「国際結婚一年生」(主婦の友社)、訳書「異性の心を上手に透視する方法」(プレジデント社)。東大卒、モントレー大学大学院卒、国連勤務を...

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