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女性は地方移住で幸せになれる? 田舎暮らしの実態を3人の女性に聞いてみた 2/2


建設会社・映画館代表の切替桂さん(48歳)の場合

Photo by nakariho

■切替桂さんプロフィール
出身地:東京都世田谷区出身
年齢:48歳(2017年7月現在)
移住歴:約3年(2017年7月現在)
職業:建設会社・映画館「御成座」代表
略歴:東京都世田谷区生まれ。日体大卒業後、車の営業を担当するも1年後ストレスで卵巣が破裂。営業から人事に異動し3年、1度目の結婚。
産休後復帰するも無認可保育に入れることになり、5年で退職し子供が3歳になるまで専業主婦に。事務職を経て、その後、離婚。のちに再就職先の建設会社の社長(現夫)と再婚。
夫が仕事で東北を拠点にすることが多くなり、仕事のために夫が借りた物件が閉館した映画館の御成座であることがあとから発覚。もともと映画館を営業する気はなかったものの、地域の人から復活を心待ちにされたため、事業を手伝うために家族で移住。

事務所兼自宅として借りた物件が、閉館した映画館だった

――移住した経緯をお伺いできますか?

夫が建設業を行っているのですが、東日本大震災の復興事業のため東北を拠点にした仕事をすることが多くなりまして。最初2年くらい夫はひとりでホテル暮らしをしていました。

ですが、その後も東北での事業を続けることになったので、自宅兼事務所(従業員も住めるような)として物件探しをして見つけたのが、閉館した映画館の御成座でした。

ただ、最初はその物件が映画館だったと夫は気づかなかったらしくて(笑)。映画館だと発覚した後も、映画好きな夫は「自宅で映画が観れる!」と喜んでいただけで、映画館を復活させようなんて思っていませんでした。

映画館を復活させる気なんてなかった

Photo by nakariho

――その後どういう流れで、映画館を復活させることになったのでしょうか?

御成座は閉館して9年以上放置されていました。床も抜けているし、ガラスも割れていて、スクリーンもそのまま。上の住居部分には食器もそのまま残っていて、生活感があるままでひどい状態でした。

本業が建設業というのもあるので、夫が自分でリフォームをしていたのですが、それを見ていた地元の人たちが「御成座が復活するらしい」と噂をするようになって……。

その噂が勝手に広まってしまいました。それをきっかけに夫は、「映画館を復活しなくては」という使命感を抱くようになって。

とりあえず映写技師のつてをたどって映写機をチェックしたら、フィルム上映ができるとわかり、いよいよ本格的に復活させることになりました。

映画館復活の噂が流れるようになり、使命感を抱いた

田舎 一人暮らし 女性

Photo by nakariho

――噂がきっかけとはすごいですね。

そうですね。

当時「御成座」には夫と社員数人が住んでいて、私と子供たちは千葉にいたんですが、「御成座を復活させたい」ということで、私たちもそれを手伝うために、移住することにしました。

夫の本業は建設業なので、ひとりで両方に手を回すことは難しかったんです。私が御成座の運営を行いながら、傍らで建設業の事務的な仕事もすることになりました。

もちろん映画業界の仕事経験は私もゼロ。映画に関わる仕事をこの歳で始めるなんて思ってもみませんでした。

――移住することに戸惑いはなかったですか?

私はとくになかったです。でも、上の子供(小学5年生)には、すでに仲の良い友達が千葉にたくさんいたので、すごく嫌がりましたね。あと、こっちに来てから私だけでなく子供たちも方言の壁は感じているみたいです。

――たしかに年頃のお子さんの方が、環境の変化に敏感かもしれませんね。移住後はどのような生活を送られていますか?

現在は家族全員(夫は出張が多く全国飛び回っている)と、映写技師さんで御成座の2階に住み込んでいます。

月曜から金曜は朝8時に子供を送って、9時から御成座のオープン準備を始め、10時から上映を開始しています。上映自体は基本的に映写技師さんに頼んでいるので、10時半過ぎから建設業の事務仕事を御成座でしています。

ただ、従業員が私と映写技師さんだけなので、受付や売店などは常に見ながらという感じです。土日も営業しているので、最初の2年間休みはなかったですね。

若い人たちに映画館で映画を観ることの感動を伝えていきたい

田舎 一人暮らし 女性

Photo by nakariho

――大変なんですね……。実際、映画館の売上はどうなんでしょうか?

正直なところ、採算をとるのが難しいのが現状ですね。建設業の方でカバーしている感じです。

でも「石の上にも三年」という気持ちでやってきて、やっとスタート地点に立った感じです。あと、若い人たちに、映画館で映画を観ることの素晴らしさをもっと知ってもらいたいという想いもあります。

今って無料で手軽に動画を見ることができますけど、映画館で贅沢な時間を買うっていうのは大切な経験だと思うんです。それは夫も私も昔経験してきたことで、そんな素敵な時間があることを今の若い人たちに伝えていきたいんですよね。

そういうこともあって、若い人たちに知ってもらう目的で柴咲コウさんの「こううたう」というカバーアルバムの発売記念キャンペーンに応募&当選し、ライブイベントも開催してもらったんです。

――素晴らしい信念ですね……! 実際移住してみて良かったことはありますか?

移住して良かったのかはわかりませんが、映画館の仕事をすることによって、今までの人間関係からは考えられないような人たちと出会えたことですね。私の場合は新しい土地で暮らすというだけでなく、まったく新しい業種の仕事を始めたので。

――逆に移住して不便だと感じたことはありますか?

やはり東京に比べると物流や流通が不便なことでしょうか。あとは21時過ぎに映画館の仕事を終えて外食したいと思っても、営業しているお店がほとんどないことですね。

大変なこともあったけれど、移住して映画の仕事を始めて出会いの幅が広がった

田舎 一人暮らし 女性

Photo by nakariho

――なるほど。都会とこちらで人の違いはありましたか?

私は東京や千葉で長年住んできたんですが、こっちの人は良く言えばシャイ、悪く言えば無関心というか、自分だけ良ければいいと思っている人が多いところもあるかもしれません。

――最後に移住に少しでも興味がある方へメッセージをお願いします。

私の場合、仕事内容は増えて大変になりましが、その分得られる経験の幅や出会いが広がりました。

東京や千葉にいたころに培ったスキルを生かしながら、こちらで新しい仕事に取り組めているとも感じています。自分の世界を広げるための手段として、移住はいい選択肢だと思います。

■自分の感覚を信じ、軽やかかつヘルシーに生きること

3人の女性にお話を伺ってみて、地方移住には良い面も悪い面もあること、そして出会いや運に左右されてしまう……。だからこそ、どれだけその運をうまく乗りこなせるかが移住先でも幸せに生きるコツであるように感じました。

そして、移住はあくまで手段であり、選択肢のひとつに過ぎないということ。「移住=定住」ととらえるのではなく、自分の感覚を信じ、気負わない気持ちで移住を選択するからこそ、軽やかにそしてヘルシーに3人は生活されているのだと感じました。

2017年8月2日 公開
2020年5月10日 更新

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中森 りほ

下北沢を愛するフリーライター、コラムニスト。女性向けウェブメディアでの編集・ライター経験を活かし、女性の生き方・働き方、恋愛や結婚など男女関係についてのコラムに加え、グルメメディアでの経験を活かしたグルメ記事、食レポを執筆中...

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