日本の夏って寒いですよね。長袖スーツに靴下と靴を履いたおじさんたちが汗だくにならないように、建物に入ればエアコンがガンガン効いている。多くの女性を悩ませる「冷え性」、いろいろな不調の原因と言われています。しかし「冷え」というものに科学的根拠はありません。根拠のない「○○は冷えが原因」説には惑わされないようにしましょう。
身体を冷やす食べ物は食べない方がいいの?
外来でよく質問されることの一つに「身体を冷やす食べ物を食べても大丈夫ですか?」というものがあります。アイスクリームやかき氷のことではなく、「トマトやナスなどの夏野菜は身体を冷やすと聞いたのですが」「南国の食べ物は身体を冷やすと聞いたのですが、妊娠中に食べない方がいいというのは本当ですか?」という質問です。
前回は、「冷え」というものは西洋医学にはない概念ではあるけれど、それそのものは存在し度を越すと良いとは思えない、しかし冷えが悪さをするという科学的根拠はなく「本当にそれって冷えのせいなの?」というものも多いというお話でした。
外来でよく質問されることの一つに「身体を冷やす食べ物を食べても大丈夫ですか?」というものがあります。アイスクリームやかき氷のことではなく、「トマトやナスなどの夏野菜は身体を冷やすと聞いたのですが」「南国の食べ物は身体を冷やすと聞いたのですが、妊娠中に食べない方がいいというのは本当ですか?」という質問です。
そもそも夏野菜や南国の食べ物が身体を冷やすという証拠があるのかと言われれば、「先人の知恵」「おばあちゃんの知恵袋」のようなものです。もともとは中国で古くから言われているようです。
確かにナスやトマトを食べると体が涼しくなる気がしないでもありません。しかし、食べ物で体が冷えるというのはどういう状態を指すのでしょうか。低体温症になるわけではないので「なんとなく涼しい感じ」という涼感が得られるというようなものでしょうか。これを客観的に測定するコンセンサスの得られた方法はありません。これも冷えそのものと同じように主観です。これらが冷えを悪化させ健康に悪影響を与えるという根拠はありません。
南国の食べ物の例として、カレーがありますが、唐辛子は身体を温めるものとしても知られています。でも、カレーを食べて発汗し、汗が引けば最終的には身体も冷える。ある食べ物を、「身体を温める」「冷やす」と定義するのはなかなか難しいのです。そして、南国の食べ物が妊娠に悪いのなら、暖かい国でこそ人口が増えているのはどう説明できるのか、考えてみてほしいものですよね。結局はイメージ先行の健康論なんです。
世間では○る○る大辞典の教訓もすっかり薄れているのかも知れませんが、特定の食べ物ばかりを食べたり、特定の食べ物だけ排除してもダメ。和食も洋食も野菜も肉や魚もいろんなものをバランスよく食べるのが一番なので、もっともらしい but 根拠のない情報を鵜呑みにするのはやめて食生活をエンジョイしましょう。
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すぎたるは及ばざるが如し。夏場の「あたためすぎ」は健康に良くありません。それは妊婦さんも同様です。適切な体温調節を心がけましょう。