プロレスラー丸藤正道が考える「誰にとってもわかりやすいプロレス」
丸藤正道選手といえば、プロレスリング・ノアに所属するプロレスラーで、自身の会社、キュリオシフトで代表を勤める経営者でもあります。そんな丸藤選手にプロデュースするカレーのこと、プロレスのこと、いろいろ伺いました。
第一線で活躍するプロレスラーながら、経営者としての顔も持つ。それがプロレスリング・ノア所属のプロレスラー、丸藤正道(まるふじ なおみち)選手です。プロレスファンの間では「方舟(はこぶね)の天才」として知られ、決め技のひとつである「不知火(しらぬい)」は漫画の世界を見ているかのよう。
身体能力の高さを生かした技の一つひとつは、ぜひ一度は見てほしいほどです。その不知火という名前を用いた「不知火カレー」と、それをプロデュースした丸藤選手にインタビューをおこないました。
■プロレスを見てもらうための入口を作りたい
――(不知火カレーが運ばれてくるのを見て)フォトジェニックですよね〜。私も一度いただいたことがあるんですが、淡路島玉ねぎのちょうどいい甘さが、マイルドで美味しかったです。たんぱく質がしっかり摂れるのも嬉しいですね。
ありがとうございます! 不知火カレーはぼくが惚れ込んだ淡路島カレーとライセンス契約し、大好きなチキンレッグとコラボさせて開発しました。初めて淡路島カレーを食べたとき、本当に美味しかったんですよ。これはもう他の方にもぜひ食べてもらいたい! と心から思ったくらい。
そこで、2014年8月に自ら立ち上げた会社、キュリオシフトの事業第一弾としてスタートしました。ぼくが飲食業に携わることで、「このカレー、プロレスラーがプロデュースしてるの!?」と、プロレスとはなじみのない方へ、プロレスに興味を持ってもらう狙いがあります。
そもそも、プロレスへの入口が、かなりわかりづらいと思うんです。そこをもっと広く、わかりやすく、入りやすくしていくのが、プロレス業界をより一層盛り上げるためには欠かせません。
ぼくたちプロレスリング・ノアは、年間130試合、だいたい3日に1回は試合をして、地方を回ることも多いです。毎日が慌ただしいですが、自分のやること、発信することすべてがプロレスにつながっていくと思い、Webでの連載もやっていますし、メディア露出も積極的にやります。世の中とプロレスとの接点を少しでも増やしたいんですよね。
■「くどき上手」っていうセクシーな名前の日本酒も好き
――丸藤選手はTwitterやInstagramを中心に、SNSでの発信も積極的におこない、ファンを増やしている印象があります。とくにInstagramにアップした食事の写真は大好評ですね。本当に美味しそうなものばかり!
ただ純粋に美味しいものが好きなんです(笑)。ぼくたちは地方に行く機会も多いですから、その土地土地でしか味わえない食を楽しみたい。極端に節制しないタイプです。でも、意外と少食なんですよ、ぼく。
――そんなイメージはなかったです。
あまりたくさんの量を食べられないんです。朝は食べないことが多いですし、昼はそこそこ食べて、夜は試合があれば食べますが、試合がない日はあまり食べません。思った通りの回答じゃないかもですね(笑)。食べているふうに見えますけど、そんなに食べないんですよ。むしろお酒を飲みますね。だから、肉よりもずっと飲んでいられる魚のほうが好きです。
――とくに好きなお酒は何ですか?
ワインと日本酒です。ワインは基本的に赤が好きで、最初はカベルネ・ソーヴィニヨンを飲みます。日本酒は全国各地で飲んでいて、やっぱりお米が美味しい地域のものがいいですよね。食事しながら飲むのが好きなので、辛口や超辛口ばかり選んでいます。
しょっちゅう飲むのは〆張鶴(しめはりつる)。くどき上手という、ちょっとセクシーな名前の日本酒も好き(笑)。知らない名前の日本酒が並んでいると、「端からください」と頼んでいくこともあります(笑)。
――強い人にしかできないオーダーの仕方(笑)。ひとりでしっぽり飲むこともありますか?
ありますよ。地方だと友人や選手と食べにいくこともありますが、何も予定がないときには試合後ホテルに戻って、シャワーでさっぱりしてから、街へ繰り出します。路地裏の美人女将がいそうな小料理屋に入るんですよ。
すると、たいてい知らないおじさんが隣に座ってきて、「にーちゃん、何してる人?」なんて聞かれて話しているうちに仲良くなって、いつの間にか奢ってもらっている、なんてこともよくあります(笑)。
■初めての人にもわかりやすいプロレスをやっている
――リング外でも心、つかんでますね(笑)。私は試合会場で丸藤選手の技に心つかまれちゃいました。プロレスファン歴7ヶ月と短いんですが、初めてフィニッシュ・ホールドの「不知火」を目にしたとき、度肝を抜かれました。今何が起こった……!? と(笑)。
ありがとうございます(笑)。不知火をやれる選手はたくさんいますし、もっとすごい技で魅せる選手もいるんですけどね。ただ、映像や写真を見ていただくとわかると思いますが、ぼくは相手の首を持っていないほうの腕は、指先までぴんと伸ばしています。一つひとつの技に対するこだわりがあるので、見た目の印象が残りやすいのかもしれません。
――丸藤選手を象徴する技をもうひとつあげるなら、打撃技の「逆水平チョップ」でしょうか。強烈すぎるんですよね。素人目にはシンプルな技に見えますが、胸板に逆水平を受けた相手の肌が、どんどん赤く腫れあがっていく様子を見るのは衝撃です。
逆水平も当然、相手に対する攻撃でもありますが、見てくれる方へプロレスをわかりやすく伝える意図があります。初めてプロレスを見にきた方、プロレスをあまり知らない方でも「◯◯がすごかった」と言語化できるくらい、わかりやすいことが大事だと思っているので。
今おっしゃったように「胸板が真っ赤になっていた」とか、「音がすごかった」「カッコいい選手がいた」とか、何でもいいんですよね。とにかくわかりやすいところから、プロレスの世界に入ってもらうことが、お客さんを増やすひとつの要素だと思います。
わかりやすいプロレスを、ということでさらに言うと、ぼくはリング全体を使って戦うようにしています。ロープも鉄柱も使うし、横野動きや縦の動き、距離も意識しています。受け身も大きな動きでとりにいきます。プロレスは「相手の技を受ける」ことを前提とした競技ですから、受け身は必須ともいえるものです。
自分の身を守れる受け身をとるために、投げられると飛んで、自分が安全な体勢になれるスペースを作りにいくんです。よく「どうしてそんなに飛ぶの?」と聞かれますが、見栄えのよさを追求するだけじゃなく、怪我をしないようにという理由もあるんです。
細かい技術も大事ですが、極端な話、東京ドームの2階席で初めてプロレスを見るお客さんにも、「今、何をしているのか」が伝わるようなプロレスを心がけています。
(つづく)
取材協力/不知火カレー(しらぬいかれー)
東京都港区赤坂6-11-13 赤坂鏡ビルB1F
03-6662-6945
2017年1月〜は夜メニューのみになります。
丸藤 正道(まるふじ なおみち)
1979年9月26日生まれ。埼玉県鴻巣市出身。プロレスリング・ノア所属。176cm、90kg。1998年8月デビュー。ノアの至宝GHCの各タイトルをすべて手にし「方舟(はこぶね)の天才」と呼ばれる。Twitter( @noah_maru_fuji )でも情報発信中。
Text/池田園子
Photo/安井信介
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