「銀行員を辞めたことに1ミリの後悔もない」女子プロレスラー・雪妃真矢の決断

「銀行員を辞めたことに1ミリの後悔もない」女子プロレスラー・雪妃真矢の決断

女子プロレスラーとして活躍する雪妃真矢さん(アイスリボン所属)は、自身のキャリアを大きく転換した人のひとり。銀行員からプロレスラーへ、大胆な人生の選択をしたように思えます。その決断に到った背景や思いをインタビューしました。


清楚で可憐なイメージとは裏腹の、激しいファイトスタイル。そのギャップで、男性だけでなく女性をも虜にしているプロレスラー・雪妃真矢さん。実は3年前まで銀行員でした。大学はフェリス女学院というエリート。しかし、すべてを捨てて、大好きなプロレスの世界に飛び込んだ――。大きな決断の裏に、どのような思いがあったのでしょうか。

■プロレスを観戦し続けたら、自分でもやりたくなった

――プロレスを好きになったきっかけは?

5年前くらい、プロレス好きだった姉に誘われてDDTプロレスリングの試合を観戦したんです。最前列に座ったんですけど、試合中に突然、隣の席に選手が座ったんですよ。「疲れた」とか言って(笑)。そういう、お客さんを巻き込む感じとか、ライブ感とか、会場全体を含めてのエンターテイメントというのが面白かったんですよね。

――プロレスラーになろうと思ったのはなぜですか。

3年くらいプロレスを見ていて、やりたくなっちゃったんですよね。どういう技術でああいう風に見せられる動きになるんだろう、と。アイスリボンに一般の人向けのプロレスサークルがあると聞いて、体験会に参加したんです。そのときはもう、リングに上がれるのが嬉しくて仕方なかったです。でも仕事があったので、平日の18時半には通えない。そこで初めて、プロレスの練習をするということと、仕事を続けるということを天秤にかけました。

――プロレスが勝ったんですね。

そのときは、プロレスラーになるという目標があったわけではなく、ただただ練習がしたいという欲でした。プロレスラーになるのが簡単なことだとは思えないし、誰でもデビューできるものだとも思えないし。いつか練習生になってデビューするという可能性も考えてはいたんですけど、『プロレスラーになりたいから仕事を辞める』ではありませんでした。あくまで練習がしたかったからです。


プロレス部が発足!趣味で繋がるサードプレイス DRESS部活。新入部員絶賛募集中です【編集部】

■安定を求めて勤めた銀行を辞めたとき

――銀行を辞めるという決断をした決め手はなんですか。

仕事は常々、「これでいいのだろうか?」と思いながらやっていたんです。大学を卒業して就職活動をしたとき、特別なりたいものがなかった。だから安定を求めて銀行に就職しました。収入のためだったり、親を安心させるためだったり。それがあたりまえだと思っていたんです。でも、好きなことを仕事にしている人への憧れがずっとあったんですよね。だから、プロレスという本当にやりたいと思えることができたとき、飛び込んでみようと思ったんです。

――迷いはありませんでしたか。

とにかく、親に申し訳なかったです。父には黙っていて、母に「お父さんの思うように生きられなくて申し訳ないと思う」と言って泣きました。父はわたしに普通に、手堅い道を選んで生きることを望んでいたんです。でも母は、そんなことを思う必要は一切ないと言ってくれました。今まで親が望むようにやってきたんだから、と。本当にありがたかったです。

――銀行を辞めたことへの後悔はありますか。

1ミリもないです(笑)。今、大金を稼いでいるわけではないけど、生活できないわけじゃないので。もしこの先、収入が下がったとしても、後悔することはまずないと思います。でも辞めた銀行に対して、ものすごく感謝はしているんですよ。元上司が試合を観にきてくれたときは、すごく嬉しかったです。大した貢献もできないまま勝手な私情で辞めた、とんだ社員だったのに(笑)。

■涙ながらに応援してくれるファンのために勝ちたい

――プロレスラーになって、一番よかったと思うことは?

自分の存在意義を感じられることです。人生ってほとんどが苦しいことで、楽しいことは一握りだとわかってはいたんですけど、どうしても納得がいかなかった。プロレスラーになって、そういう部分が解消されました。自分の仕事を応援してくれる人がいるって、すごいことだと思うんです。銀行に勤めていて、涙ながらに応援してくれる人なんていないじゃないですか(笑)。

――どんなときに応援されていると感じますか。

「試合で負けそうなときですね。カバーされてレフェリーが『ワン、ツー』と叩くと、客席から『ユキー!』とか『返せー!』とか、声援が聞こえてくるんです。あとは売店で声をかけていただいたり、グッズを買っていただいたり。ただでさえチケット代がかかるのに、売店に並んでサポートしようとしてくださる。応援してくれる人がいなかったら続けられないです。自分がやりたくて始めた仕事だけど「ファンの方々のために勝ちたい」という気持ちに変わったんですよね。

――いつ頃から気持ちが変わったんですか。

1年目にケガで長期欠場したんです。デビュー戦でたくさんの人が応援してくれたのに、ケガをしたことでそういう人たちを裏切ることになると思いました。プロレスラーにふさわしくない体なのにリングに上がったということは、自分がプロレスを侮辱しているような気がして、辞めようかなと本気で悩みました。でもそういうときに「戻ってくるの、待ってるから」と声をかけていただいたり、復帰してからも応援していただいたり。そこからですね。1年目はしんどいことだらけでしたが、あのとき欠場してよかったと今は思います。

■女性にこそ、女子プロレスを観にきてほしい

――これから、どういうレスラーになりたいですか。

強くなりたいとか、誰に勝ちたいとか、あまりなくて。ただただ、唯一無二でありたい。自分にしかできない女子プロレスのアピールとか、自分にしかできないキャラクターを見せていきたいです。女性に愛されるレスラーになりたいですね。今、男子プロレスを見る女性はすごく増えているのに、女子プロレスは男性しか見てくれない。それが悩みなんです。女性にこそ見てほしいし、女性を感動させられるようになりたいんです。

――ありがとうございました。

美人でスタイル抜群。サバサバとして芯が強い――。まさに女性が憧れずにはいられない雪妃さん。女子プロレスへの熱い思いに、こちらも胸が熱くなりました。個人的にも、女子プロレスは女性にも見てほしいと思います。感情移入できる度合いが、男子プロレスよりもはるかに強い。相手選手に果敢に立ち向かっていく姿を自分と重ね合わせて、つい声を張り上げて声援を送ってしまいます。プロレスラーを応援することは、自分を応援すること。そんなことを改めて感じたインタビューでした。

雪妃真矢(ゆきひ まや)さんプロフィール

アイスリボン所属のプロレスラー。千葉県出身。フェリス女学院(英文科)卒業後、銀行に就職。2014年11月24日、横浜リボンでプロレスラーとしてデビュー。英語、韓国語、スペイン語が話せるマルチリンガルでもある。Twitter( @yukihi_maya )

Text/尾崎ムギ子

【編集部おすすめ】慶大→博報堂のエリートコースから外れて。プロレスラー・三富政行の選択

https://p-dress.jp/articles/3851

慶大、博報堂出身という、異色の経歴を持つプロレスラー・三富政行。「安定」「エリート」の道を手放し、あえて「普通」ではない道へ進んでいった彼をインタビュー。自分らしい生き方を選択し、今どう感じ、どう生きているのか迫りました。

この記事のライター

人生を自分らしく楽しむ大人の女性たちに、多様な生き方や選択肢を提案します。

関連する投稿


発信者は「万人に好かれよう」と思わなくていい【ジルデコchihiRo×渋木さやか 対談】

発信者は「万人に好かれよう」と思わなくていい【ジルデコchihiRo×渋木さやか 対談】

ジャズバンド「JiLL-Decoy association」のボーカルを務めるchihiRoさんがホスト役となり、同じく「ものづくり」に携わる方を招き、ものづくり、クリエイティブをテーマに語らう本対談企画。第5回では、ヨガライフアドバイザーの渋木さやかさんをお招きしました。


コンプレックスは隠さず、笑いに昇華するのも“芸風”です【主婦ブロガーこだまさん】

コンプレックスは隠さず、笑いに昇華するのも“芸風”です【主婦ブロガーこだまさん】

私小説『夫のちんぽが入らない』で鮮烈なデビューを飾った主婦ブロガーのこだまさんが、新作『ここは、おしまいの地』を上梓。自身が“おしまいの地”と呼ぶ集落に生まれ育ったこだまさんに、田舎やコンプレックスをテーマにお話を伺いました。


スイーツ真壁の手土産はこれなッ!#6「BAKED ディープダーク・ブラウニー」

スイーツ真壁の手土産はこれなッ!#6「BAKED ディープダーク・ブラウニー」

真壁刀義さんは新日本プロレス所属のプロレスラーで、「スイーツ真壁」としても活動するスイーツの識者。そんな真壁さんの連載【スイーツ真壁の手土産はこれなッ!】では、季節に合ったおすすめのスイーツ手土産を、毎月取り上げていただきます。#6はBAKEDのディープダーク・ブラウニーをご紹介。


「落語」という男社会で道を開く――日本初の女流落語家・露の都さんインタビュー

「落語」という男社会で道を開く――日本初の女流落語家・露の都さんインタビュー

華やかな着物で高座に上がり、噺ひとつで客席に笑顔が咲く――。日本初の女性落語家として活躍する露の都(つゆのみやこ)さん。男の世界であると言われていた落語界に入門し、今年3月で芸歴44年を迎える。女性としてどのように仕事に向き合ってきたか、話を聞いた。


岡田将生「人と人とのバランスを楽しみながら、自分を知っていく」――自分らしさのヒント

岡田将生「人と人とのバランスを楽しみながら、自分を知っていく」――自分らしさのヒント

岡田将生の美しい横顔は、もはや凶器だ。映画『伊藤くん A to E』で彼は、イケメンだけど超痛い男の役を演じている。最低なキャラクターなのに嫌いになれないのは、きっと、その言動がどこか人間らしいから。何にも縛られず自分らしく生きることに、私たちは憧れてしまう。岡田将生に、そんな“自分らしさ”について聞いてみた。


最新の投稿


鏡の前に立って、自分の肌と向き合う【わたしを助けてくれる肌ケア】

鏡の前に立って、自分の肌と向き合う【わたしを助けてくれる肌ケア】

『DRESS』2月特集は「ほしいのは“前向き“肌」。肌という“基盤”は心までも左右するパーツ。そんなお肌を美しく保つ秘訣をDRESSを舞台に活動していただいている女性たちに聞いてみました。ここでは、DRESS編集長の池田園子さんが、自身の肌ケアについてご紹介します。


感情をぶつけるのはアウト。子どもの上手な叱り方とは【大人の上手な怒り術#6】

感情をぶつけるのはアウト。子どもの上手な叱り方とは【大人の上手な怒り術#6】

怒りと上手く付き合うための心理トレーニング「アンガーマネジメント」。一般社団法人日本アンガーマネジメント協会理事・戸田久実さんがお届けする連載【大人の上手な怒り術】第6回では、子育て中のイライラを解消する方法について解説してもらいます。


化粧水と乳液があればいい。他はサブ。基礎化粧品の正しい選び方

化粧水と乳液があればいい。他はサブ。基礎化粧品の正しい選び方

『DRESS』2月特集は「ほしいのは“前向き“肌」。年齢を重ねるにつれて、肌の悩みが変わってくるなか、乾燥をなんとかしたい……と感じる方も少なくありません。今回は基礎化粧品の選び方を見直します。ライン使いはマスト、と考える方もいるかもしれませんが、実際は化粧水と乳液さえあればOK!?


「アップルタイザー」がさくらデザインボトルが当たるキャンペーンを実施中

「アップルタイザー」がさくらデザインボトルが当たるキャンペーンを実施中

抽選で50名様限定! 人気イラストレーター“マリー・アセナ”さんデザインのボトルが当たります。世界中で親しまれている果汁100%のスパークリングジュース「アップルタイザー」のさくらデザインボトル、プレゼントキャンペーンを3月8日まで実施中です。


彼がもっと素敵に見える。女性が押さえておきたい男性用バッグの常識

彼がもっと素敵に見える。女性が押さえておきたい男性用バッグの常識

革靴と鞄の色や素材を合わせれば、見た目に統一感が生まれ、洗練された印象を作ることができます。重厚感や堅実なイメージも出せるんです。ナイロン素材の鞄を使う日があったとしても、ひとつは革素材の鞄を持っておくことをおすすめします。ビジネスシーンにふさわしい鞄選びをパートナーとふたりでしてみてはいかがですか。