最悪の場合は慰謝料も……弁護士に聞く「嫁姑バトル」回避法
永遠のテーマとも言われている「嫁姑問題」。裁判沙汰になる場合も……。実は、解決のヒントは姑の心理を知ることと、夫にあるのです。数々の嫁姑バトルを見てきた弁護士による、嫁姑バトルを回避する方法を紹介します。
結婚すると家族が増え、悩みも増えます。なかには、新しい家族とうまくいかず、揉めてしまうことも……。特に嫁姑問題は、昔からたくさんの家族が遭遇したバトル。
何度も繰り返されてきたこのバトルを、終わりにすることはできるのでしょうか? 今回は、アディーレ法律事務所の篠田恵里香弁護士に、解決方法を伺いました。
■嫁VS姑で裁判沙汰に。慰謝料が発生するケースも!
嫁姑問題は、当事者だけで解決できないことも。家族問題が裁判まで発展したケースはありますか?
「実際に裁判にまで至ったことは、少なくありません。少し古い事案ですが、いくつか紹介します。
東京地裁では昭和37年に、「姑が嫁に和裁の内職を手伝わせ、“こののろま”と罵ったり、縫い物を叩き付けて激しく叱責したりした事案」について、30万円の慰謝料を認めた判決が下されています。
また昭和53年にも、名古屋の判決ですが、同居の姑が嫁に対し、「茶碗は割るし、地味な女。何をやらせても遅い」などと再三罵倒した事案について、夫もこれに同調したことを理由に、夫と姑に対し、連帯して慰謝料200万円を支払うよう命じた判決があります。
さらに平成10年には、神戸地裁が、息子の結婚に反対し、何度も新居に訪れて妻に離婚を迫り、何度引っ越してもその度に新居を突き止めて泊まり続け、妻の衣服を勝手に実家へ送るなどして結婚生活を妨害した夫の両親に、240万円の損害賠償を支払うよう判決を出しています」
どれもお嫁さんから、お姑さんや夫に慰謝料を請求しています。姑さんによる嫌がらせやいじめに悩んでいるなら、泣き寝入りせずに解決への道を進みましょう。
■嫁姑問題の責任も解決も「夫」がカギに
では、一番スムーズな解決方法はどんなものでしょうか?
「一番大事なことは、夫が間に入ることです。姑の考え方も、嫁の考え方も両方理解できるのは夫しかいません。両方の話を聞いて、歩み寄らせるのは、夫の責任といっても過言ではありません。実際、嫁姑問題が起きたときに、夫がこれに協力しないとなると、法的にも『夫婦関係を良好に保つための努力をしていない』として慰謝料請求の対象となり得ます」
夫も慰謝料の対象になるということは、法律的に嫁姑問題には、夫の協力が必須ということが認められているようです。
また、お嫁さんがお姑さんがどうして、意地悪なことをするのか心理を知ることも大切だそう。
「姑が干渉してくる大きな理由は『息子を嫁にとられた』という嫉妬心と『子離れできない』おせっかい心によるものです。お嫁さんが、あえて『お義母さんを褒める』ことで嫉妬心を和らげたり、『美味しいお料理ですね。また作ってください』などと甘えたりすることで、そのおせっかい心を満たしてあげることも効果的かもしれません。お姑さんが大人になるために協力する必要があるのです」
お嫁さんが少し大人になって、お姑さんに新しい家庭ができたことを認めさせるために行動することも重要。夫婦で協力することで、嫁姑バトルの終焉に近づけるでしょう。
■泥沼化させないために、夫は必ず妻の味方になって!
では、嫁姑問題が悪化してしまう原因は、キーパーソンである夫にあると言える?
「嫁姑問題が泥沼化するケースは、大概の場合、夫が『どちらの味方にもならない』または『姑の味方につく』態度に終始しています」
確かにそれは、お嫁さんが傷つく上に、いつまでもお姑さんが子離れできません。本来、どういった行動を取ったらいいのでしょうか?
「『結婚』というのはこれまでの家族から抜けて、改めて新しく自分の家庭を作ることです。したがって、嫁姑問題が起きたときも、『新しい家族』を第一に考えなければならないはず。嫁姑問題が起きた場合には、姑側につくなんてもってのほか、夫は必ず“嫁”側につくべきといえるでしょう。これは、姑に冷たく当たることを推奨しているわけではなく、『新しい家庭を築いたんだ』ということを、夫が姑にしっかり理解してもらうべきということです」
■起きるべくして起きる嫁姑問題。でも、解決の道はある
姑にとっては、「息子が自分の元を離れ、嫁のところに行った」という思いから、寂しさもあり、どうしても新しい家庭に干渉したい気持ちがおこるものです。
一方、嫁としては、「夫や姑とは自分は違った環境で育ってきたし、新しい家族となった以上干渉されたくない」という思いがあるはず。このように嫁姑問題は、構造的に、「起こるべくして起こる」問題といえそう。
一番の解決方法は、関係している人間がしっかりと前向きに意見を交わすこと、そして問題から逃げないことです。特に、夫は、嫁姑問題のキーパーソンですから、むしろ自分から率先的に解決に導く努力が必要といえるでしょう。
協力:アディーレ法律事務所
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