一緒にご飯を作ると育つ夫婦の段取り力

一緒にご飯を作ると育つ夫婦の段取り力

買い物から調理、片づけまで……兎村彩野さんには夫婦で一緒にご飯を作る習慣があります。共同作業をすることで、どんないいことがあるのでしょうか。詳しく綴っていただきました。


我が家は家事の中で変わったルールをひとつ取り入れています。それは「晩ご飯は一緒に作って、一緒に食べる」です。以前は仕事が忙しくない方が作っていましたが、料理はお互いに好きで、家にいる時間が長い私たちにはちょうど良い息抜きになると気づき、それならば毎日一緒にご飯つくろうかとなりました。

毎日何時に晩ご飯を食べるかは決まっていないのですが、お互いの仕事の進み具体をみて「今日はだいたい○時にご飯にしましょう」と決めています。飲み会の予定や締切前は無理に合わせる必要はなく、お互いのタイミングが合えばくらいのゆるいルールの1つです。

ご飯休憩になったら、ふたりで冷蔵庫の中身とストックの野菜や食材・調味料を確認します。「あれがあるね、これがあるね、あれがないね」と確認してから、エコバッグとふたりの共用財布を持ってスーパーへ(我が家は各自の財布と共用財布があります)。

■夫婦でスーパーへ行こう

スーパーは世界の縮図のようです。悪天候が続けば野菜は高くなる。逆に豊作の年は安くて美味しい野菜がたくさん並ぶ。季節の行事に合わせた特設コーナーが必ずあり、お値打ち品やパッケージの切り替わり、今、どんなキャラが流行っているか、メディアでどんな料理のブームが仕掛けられたかなど、毎日スーパーへ通っているとなんとなくわかるようになります。

夫婦でクリエイティブ系の仕事をしていると、パッケージや商品の売り方は毎日気になるので、買い物中も「あのメーカーのお菓子が新パッケージだね」とか「ビールのラベル変わったね」とか話をしながら、なんちゃってマーケティングごっこのように、暮らしの中から企業の戦略を逆算で考えていきます。

消費者や生活者に自社商品を買ってもらいたいと思って努力するのが企業です。だから毎日スーパーにいるというのは、毎日企業のさまざまな戦略に触れられるということ。それを見ながらふたりで、ああでもないこうでもないと考えたり、アイディアを探したりしながら、生活者として買い物をするのは、勉強会のようなものでもあります。

またスーパーで買い物する人たちを観察することで、どういう人たちが街で暮らし、どういう人たちがどういう行動をして生活しているかもよくわかります。人々の暮らしや世の中の流れが鮮明に見えるなぁと、日々スーパーを歩きながら感じるのです。

私たちが作ったりデザインしたりしたものがスーパーに並ぶこともあります。そんなときもふたりで商品を眺めて「この見え方よかったね」「次、こういう表現してみたいね」と話したりもします。

毎日スーパーで買い物していると金銭感覚も狂いません。心地よく生きるのに、どれくらいのコストが適当なのか、スーパーでの買い物がわかりやすい目安になっています。

スーパーには本当にたくさんの素晴らしいヒントやアイディアが詰まっていて、その時間を毎日ふたりで楽しんでいます。この作業(スーパーへの買い出し)時間がなくならないくらいの仕事量がちょうどいいねというのが、ふたりで生きていく幸せの基準です。

よく話し合い、よく笑い、今何が食べたいといった思いをやりとりし、食べたいものでお互いの体調がわかる。食につながるコミュニケーションは、安心して生きていける関係がつくれます。

■料理こそ、他人と共同作業をする訓練に最適な家事

スーパーでひとしきりコミュニケーションや勉強会をした後は、家に帰って、夫婦で一緒に台所に入って料理を始めます。夫は野菜洗いとカットなどシンク側、私は焼きや煮込みの調理と味付けなどコンロ側、というふうに、おおまかに役割分担をしています。お互いに料理はできるのでどの担当もできるのですが、いろいろ試しているうちに、しっくりくるポジションに自然とおさまっていました。

料理は共同作業の段取り力を育てるのにとても適した家事だと思います。お互いの料理方法が違ったり、味付けが違ったり、違いを発見して楽しみつつ、だんだんとふたりの方法や味にととのっていきます。調理道具の受け渡しや調理補助、調味料の管理など、台所は小さな工場のような場所で、そこをいかに効率よく快適に作業できる空間へ作り込んでいくかが重要です。しかも、それをどちらか一方の基地にしてしまうのではなく、ふたりの基地に育てることで、どちらにも使いやすい台所になっていきます。

良いアイディアがあれば提案してみる。片方のルールが不便であれば間を取って改善してみる。料理は制作の仕事にとても似ていて、他人と共同で作業する訓練にぴったりな家事です。

■チームに必要な段取り力は、ふたりで料理すると鍛えられる

その共同作業を毎日毎日ふたりで繰り返しすることで、自分だけの段取り力ではなく、夫婦共同作業の段取り力が育ちます。この段取り力が、料理以外でも大活躍で、たとえば年末の大掃除の割り振りや、本の整理整頓、家のインテリア決めまで、何にでも応用が利く能力になります。

段取り力には2種類あるなと思っています。【自分ひとりで効率よく物事を進められるチカラ】と【他人と協力して効率よく物事を進められるチカラ】です。

前者はひとりで家事をしたり仕事をしていたりすれば自然と身についていくのですが、後者は誰かと共同作業することで初めて身につく能力。

我が家の場合、夫婦であり同僚でもありますが、職種が違うため、どうしてもひとりで作業する仕事が多くなります。そのため、後者を意識的に訓練しないとなかなかできるようにはなりません。そこで日々の暮らしに「夫婦で料理する」を取り入れました。

「一緒に料理する」は買い出しから食事、片付けから満腹休憩までで大体2時間ほどです。2時間で本日のメニューや食べたい気分や季節のことを考え、調理担当を分担し、美味しく食べながら話をし、片づけて少しお腹が落ち着くまでゴロゴロします。段取りが悪いと2時間をオーバーしてしまうので無理なく楽しめる2時間がベスト。2時間を段取りよくできるとゴロゴロタイムが増えるので、1冊でも多く漫画を読めたり、数ページでも多く本を読めたりするようになります。ふたりで協力することで「時間」を生み出すことができます。

■「提案語」を使えばフラットに会話できていい

料理は口に入る物が目に見えるので、お互いの身体をいたわることもでき、健康に生きていることの確認にも役立ちます。食べて生きていると一緒に感じることはなかなか幸せなことです。価値観を沿わせていくのに「食」はとてもよいリンク部分です。「食べる」は毎日することですから。

料理中は、相手の得意や苦手も発見できますし、仲良く作業しないと効率が下がるので、話しかける言葉の選び方も慎重になります。上から目線で命令すれば言う方も言われる方も気分がよくないので、フラットな目線で「こういうやり方どうかな?」「ここ使いにくいからこういうのどうだろう?」「今回は甘口だけど今度辛口にしてみる?」と提案語を使うようになります。

【提案語】というのは私が考えた言葉です。フラットに会話したいとき、相手に提案するように話しかけると上手くいくことが多い。そう発見したときに作った言葉。仕事でもプライベートでも、相手に対して何か意見を言いたいときは「こうだ!」と断定系ではなく「こういうやり方もあるかもね」と提案するように話しています。

最後に、台所の話に戻ります。

台所には正解も正義も必要ないと思っているので、ふたりが心地よく効率よく料理できて、腹八分目に美味しいご飯が食べられればいい。だから、どちらの味も調理方法も、お互いが育った家庭の素敵な証で、お互いの価値観を否定せず、ふたりで身体、の中にあるものをミックスして新しい料理に育てていくのが夫婦としての成長かなと思っています。

毎日あたりまえにある家事も、ふたりの成長ポイントとして捉えられれば、一緒に生きていくことや、価値観が溶け合ってひとつの新しい価値観を創り出すことを楽しめるようになります。家事の効率もコミュニケーション能力がアップするので生きていくのが楽になっていきます。

毎日一緒にというのは少し難しいかも知れませんが、できるときだけでもふたりで家事を協力してみると発見がたくさんあり、ともに生きていく意味を考えるのに良いきっかけになるように思います。

兎村彩野さんの記事一覧

この記事のライター

Illustrator / Art Director

1980年東京生まれ、北海道育ち。高校在学中にプロのイラストレーターとして活動を開始する。17歳でフリーランスになる。子ども向けの絵(NHKおかあさんといっしょの「黒ネコダンス」や「ながぐっちゃん」など)や女性向けの絵、アウ...

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